入学試験が終わった後で1
もうすぐ日が沈み始める夕暮れ時、多くの人が帰宅ラッシュで自然な列を作る混雑した街で、僕も疲労困憊になりながらフラフラと左右に身体が揺れつつ、みんなが待っている冒険者組合を目指していた。
(はぁ~、今日は大変な一日だったな、それにしても……何だろういつもより見られている気がする)
最近はやっと僕の映っている動画の時から人の視線も減っていき落ち着きを取り戻して、いつもの僕の見た目にそっくりな『吸血騎士リリー』が大好きな低年齢の女の子達にだけしか見られてなかったが、今日はあらゆる方向からいろんな年代の人達から視線を向けられていることに疑問を思っていると。
「……あの、すみません。」
「はい、何でしょうか?」
突然、中学生一年生くらいの男女3人組に声をかけられる。
「ごめんなさい、突然話しかけられて迷惑でしたよね。でもどうしてもお礼が言いたくて」
「そうなんです!ぜひお礼を言わせてください。あの冒険者をぶっ飛ばしてくれてありがとうございます。俺、あなたのこと尊敬してます」
「自分もっす。マジで感謝しています。自分達もステータスを獲得できて3人で冒険者を目指してダンジョンで頑張って魔物を倒していたんですけど、あの冒険者にバカにされて、挫けそうになっていましたけど、あなたのおかげで勇気を貰いました」
(あの冒険者?僕が最近ぶっ飛ばした人物なんて玲次しかいないんだけど。もしかしてさっきの模擬戦のことかな。でもどうしてこの子たちが知っているんだ?)
頭に疑問の渦が渦巻いている僕に、3人の中学生たちは僕に向かって頭を下げて。
「「「ありがとうございました」」」
周囲の通行人からも拍手を始め、僕は訳が分からないまま手で頭を掻きながら空返事をした。
「……え~と、どういたしまして」
「それでは、俺たちはこれで失礼します。では!」
「ちょっと待って話を……行っちゃった」
すっきりとした表情で去っていく中学生達に、僕は慌てて呼び止めようとするが、既に遠くに行ってしまった。
(どうして玲次との模擬戦のことを知っているか聞こうと思ったのに、それじゃあ……)
僕は拍手をしてくれた人たちに視線を向けるが、その場にいた全員が僕の視線を避けて、何事もなかったかのようにそれぞれの帰宅を再開して解散していった。
僕は聞けないことを諦めて冒険者組合を目指すと、また視線が集まってくる。
(……もぅ、何なんだよこれ)
疑問が解決できないまま頭がモヤモヤして気分が晴れないまま、僕はルトたちが待っている冒険者組合に向かうのだった。