最上空サイド1
灰城碧が冒険者組合の森崎詠美とダンジョンに向かっていた頃。
部屋の所々に灰城碧の写真が飾ってある部屋でパソコンのキーボードをリズムよく叩きながらため息を吐く少女が1人、誰もいない部屋で愚痴を零す。
「はぁ~……、今日はルトちゃんと初対面の日になる予定だったのに、あのマッドおばさん、私の研究資料をパクリだのなんだのうるさいっての、パクリはあんたでしょうが」
ステータスカードが発表されて以来、ある一部の研究者たちから私に対する嫌がらせがひどい。
(私だって偶然、自分に開発者という職業が獲得していることを知って、スキルでステータスカードの開発に成功はしたけど、正直、まだすべての機能を把握しているわけじゃないのに)
初めてステータスカードを作った時、まるで何者かに導かれたように意識が誘導された様に体が動き、気づいた時は、そこには、10枚のステータスカードが出来上がっていた。
もう一度スキルで作ろうとするが、作成することが出来なかった。
それでも、自分に詳細鑑定のスキルで、ステータスカードをステータスの作成手順を把握することはできるが鑑定を霧がかかったように妨害され、すべてを機能を知ることが出来ず、現在の世に広まっているのは私が解析して、危険な機能の一部に制限をかけたものだ。
今日も私の研究結果のデータサーバーに不正にアクセスしようとしたハッカー連中を、片っ端から調べ上げ、然るべき場所に通報する
捕まったハッカー達は大半が大金に目がくらみ依頼されただけの雇われハッカーで、残りは私に嫌味を言ってきている研究者達だ。
でも私は、このハッカー連中や研究者の背後には1人の人物が関わっていると確信しているが、決定的な証拠がない。
「あのマッドおばさん、いい加減に下手売って尻尾出してくれないかな」
全身が丸々と太っていて、いつも気味の悪い笑顔を浮かべ、ネチネチとした口調で、いつも私にちょっかいをかけてくる堀崎根智子。
「あぁ~~~イライラする、こんな時は……」
後ろにあるクローゼットの中から、ジッパーで止めて密封されている、透明な袋に入っているタオルを取り出す。
タオルに顔を埋めて深く深呼吸をして落ち着かせる。
「ス~~~~ハ~~~……、やっぱり碧お兄ちゃんのにおいは最高~~」
ボブゴブリンを倒した帰りに、碧お兄ちゃんが汗を拭いたタオルが、洗濯を忘れたまま置いてあったものだ。
最初は興味本位でやったことだが、今ではすっかり匂フェチになってしまった。
無我夢中でその匂いを堪能していた時、突然扉が開く。
「空~大好きなお母さんが…帰って……来た…ぞ……」
「おい、どう……し…たん……だ」
突然入ってきた両親2人が私の痴態に動きを止める。
「あっ、ははっ、おかえり~……」
「……空、アンタも年頃になったし多少のことは目を瞑るけど、随分と周りに気が付かなくなるまで堪能してたね~」
お母さんがニヤニヤしながらちょっかいをかける。
「子供の成長は早いって言うけどほんとだな、こんな場面で思いたくは無かったけどね」
お父さんは困り顔で感想を述べる。
「いっ、いや、これは……」
私は必死に言い訳を考えていると。
「今更言い訳したって無駄無駄、情けないね~私ならさっさと相手を押し倒して堂々と嗅ぐのに、私の娘ならさっさと告白してこい」
「いやいや、空の年齢も考えたら、まだ少し早いんじゃないか」
「何言ってんだいあなた、ダンジョンが現れて、いつ何があるか分からないんだ、後悔のない人生にしたいじゃないか、だからむしろ遅いくらいだよ!」
お母さんはお父さんに力説する。
「そうなのか……そうなのかな~」
「だから空、後悔せずに生きるんだよ、もしも子供が出来る事態になったら、私が面倒みてやる」
お母さんのぶっ飛んだ発言に私は。
「わかった……わかったよ、でも取りあえず2人とも部屋からでて行って」
両親を部屋から追い出し、両親に恥ずかしい現場を見られたのを思い出し、ベットに飛び込み身悶えた。