問題冒険者の捜索1
「洞窟型のダンジョンに入るのは初めて何ですが、結構明るいですね」
もっと先が見えないほど暗く、進みにくいイメージがあったが実際に来てみるとそうでもなかった。
「ふふっ、最初に思うことは、みんな同じなんですよ、でも気を付けてください、ここでは一瞬の油断が命取りなんです。初めての探索で洞窟型のような入り組んだ場所で亡くなった冒険者が数か月に数名いらっしゃいます。」
「気を付けます……って早速来ましたね」
アルマジロを大きくしたような外見のメタルアルマジロが姿を現す。
「おおきいまものだにぇ~、あのせにゃかにのってみたい!」
魔物に近づこうとするルト僕は慌てて静止させる、たしかにちょうど良く乗れそうな気がするが、危ないからやめよう説得する。
「あの魔物が、メタルアルマジロです。このダンジョンの代表と言ってもいいでしょう。そして、この魔物の素材や魔石を求め、問題の冒険者が入り浸っているようです」
のろのろと歩いているメタルアルマジロに危険なイメージが想像できない。
「見た目はそんなに危ないようには見えませんね」
「ちいちゃいおめめがかわいいの~」
「2人ともその油断が命取りなんです。あの背中の甲殻は名前の通り金属で出来ています、なので突進をまともに食らってしまったらひとたまりもありません。あの甲殻は車や飛行機、建築素材など様々な場所で使われるほど硬い甲殻なんです」
「すみません、気を付けます。では、僕が対処できるか、聖剣で攻撃してみます」
甲冑と聖剣を召喚して、メタルアルマジロに攻撃を仕掛ける。
メタルアルマジロの甲殻に向けて、聖剣を振り下ろし、切り裂けるどうか試してみると問題なく切り裂くことができ、対処できることがわかった。
僕が問題なくメタルアルマジロを倒す様子を見て、森崎さんは安心した表情で言う。
「これなら奥に進んでも問題ないですね。あとはルトちゃんの攻撃が通用するかどうかです。」
「わたちもがんばりゅの、このくわでてきをたがやちてやるの」
鍬を持ち上げ、やる気に満ちているルト。
「でも鍬でメタルアルマジロに通用するのでしょうか心配です」
「確かに……その鍬は家で使っているただの鍬ですし」
僕と森崎さんの不安をよそに、再びメタルアルマジロが現れた。
メタルアルマジロは仲間がやられている姿を見て、身を縮めて転がりながら突進してくる。
「では、いってきまちゅ!」
元気よく駆け出していくルトの持っている鍬が少し発光していることに気付く。
「森崎さん、僕の目がおかしいんですかね、ルトの持っている鍬が光っているような」
昔、ホームセンターで買った、ただの鍬が発光している。
「光ってますね」
「よいちょっと」
メタルアルマジロの突進を、ルトはかわしすれ違いざまに攻撃する。
ルトの振り下ろした鍬が、メタルアルマジロの甲殻に何の抵抗もなく刃が食い込んでいる。
ルトはメタルアルマジロの周囲を回りながら鍬で流れるような連撃で攻撃し、倒すことに成功した。
「どうでしゅか、るとのくわしゃばきは」
「すごいよルト!危なくなったら、助けに入ろうと思ったけど、心配なかったみたいだね」
「そうですよ、見ていて頼もしいですよ。」
「むふ~そうでちょ~」
鍬を片手に持ち、胸を張って誇らしげに自慢する姿に僕と森崎さんは和む。
「ルト聞きたいんだけど、さっきの戦いのときに鍬に何したの?そんなスキル無かったはずだけど」
「ルトちゃん、私も教えてほしいな」
ルトは僕達を見て、きょとんと小さく首を傾げながら答える。
「あれ、おかあちゃんのすきるでしゅよ、せいけんしょうかんってやつでしゅ」
そう言ってルトの持っていた鍬が発光しだす。
「おかあちゃんみたいに、しょうかんはできまちぇんが、もっちぇいるものを……ぎじてきな?せいけんにできるらちいでしゅ、むずかちいことはよくわかりまちぇん。つよいこうげきがしちぇいって、おもったらできまちた」
「そうか……たしかにルトの称号の灰城碧の眷属の説明にあったね、スキルの一部を使用できるって」
「ひょっとしたらルトちゃん、ほかのスキルも使えるかも知れませんね、流石に碧君のスキルより性能は劣るかもしれませんが」
「でもこれで、万が一複数の魔物が現れても対処できますね、いざとなったら結界で森崎さんを守りながら戦えますから、では行きましょう」
頼りになる家族に誇らしげに思いながら先を進んだ。