最上玲次サイド2
「ちっ、どうなってやがる」
最近、体が鉛をくくり付けられたように重く、思うように動けない。
「最上、どうしたんですか~? さっきの動きは何?、ちゃんとやってくださいよ~」
いつもダンジョンに潜る際に仲間になる連中の中から、明らかにギャルの格好をした古土雛が、俺様に不満を漏らしながら近づいて来る。
「うるさい。今日は調子が悪いだけだよ」
小麦色の健康的な肌に天然パーマの金髪、右側に赤いメッシュが目立つ長身の少女が、携帯をいじりながらだるそうな声で俺に抗議する。
「また調子が悪いの? これで3度目ですよ。しっかりしてくださいよ。最近まともに稼げないじゃないですか」
こいつは、俺様の強さに便乗して、おいしい思いをしている。Cランクダンジョンにはまだ入れないが、買い取り金額の高いDランクの魔石や魔物の素材を売り、メイク道具や服を買っているのだろう。
普通のバイトよりも短時間で稼げるため、俺がダンジョンに行くときは、必ずついてくる。
「しかし、おかしいな。まさか……」
俺様は慌ててステータスカードを出して確認する。
最上玲次 男
レベル 25
職業 魔法剣士
スキル スラッシュ、ファイヤーボール、ファイヤーウォール、ウォーターボール
火炎剣
称号 なし
「ステータスカードに変化はない……。焦ったぜ。灰城のやつが気づいたのかと思ったぜ」
俺様は冷静さを取り戻し、古土が尋ねる。
「灰城がどうかしたの?」
「なんでもね~。それより、今日はこの辺で切り上げるぞ」
「う~い。みんな、引き上げだって~」
他の取り巻きのメンバーに古土が声をかけ、撤収作業を開始する。
こいつらは所詮、おこぼれをもらっているだけの関係だ。しかし、古土だけは、何としても手に入れたい。
他の取り巻きと比べて古土はスタイルがいい。ギャルという欠点を除けば、その豊満な胸でおつりがくる。絶対、俺の女にしたい。
「古土、どうだ? これから二人きりで飯を食いに行かないか。俺様が奢ってやろう」
そう言って、古土の肩を掴もうとするが、避けられる。
「いや~、うちは他の連中と一緒ならいいけど、あんたと二人っきりは無理かな~。身の危険を感じるんだよね~」
「なんで俺様と2人きりは、身の危険を感じるんだよ。別に何もしやしないって」
俺様は古土に歩み寄りながら話す。
「うちは~、あんたの強さは信頼してるけど、他は一切信用してないよ~。あんたはバレてないつもりみたいだけど、うちの胸をジロジロ見るのやめてくれないかな~。気持ち悪いんだよね~」
古土は俺様に距離を取りながら話を続ける。
「でも、もう次のダンジョンでのあんたの調子を見て、結果次第では一緒に潜るのはやめようかな~。他の連中もうちと同じ意見だよ」
「いいだろう、調子が悪いのは今日までだ。次は俺の活躍を見せてやるよ」
俺様は自信をもって宣言する。
「本当に大丈夫かな~。まぁ、調子を取り戻してくれれば、うちも他の連中も助かるんだけど……」
不安げな表情で見てくる古土に、自分が彼女に媚びられる未来を想像しながら、高らかに笑った。