目覚めた後
「うん……ここは」
知らないベットから起き上がり、窓から夕暮れの光が差し込んでいる。
「灰城様、目が覚めましたか?」
「おかあちゃん、もうだいじょうぶ?」
森崎さんとルトが心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。
「心配させてごめんね。もう、大丈夫だから。森崎さんも心配かけてすいません」
僕はルトを抱きしめて頭を撫でる。
「灰城様、この度は、私の傷を治してくださり、ありがとうございました。灰城様のお陰で長年のこの傷の苦痛から解放してくださり、感謝の念が堪えません」
森崎さんは僕に深く頭を下げる。
「僕はただ当たり前の事をしたに過ぎません。森崎さんの治療が成功したのも偶然の産物ですから。ですから顔を上げてください」
「いいえ、例え偶然だとしても、私を救ってくれたのはあなたです。ですから……」
「森崎さん、なにゔぉ!!」
彼女は僕の顔に手を添えて、唇を合わせる。
「わぁ~~、きしゅだ~~」
ルトが手で口を隠しながら興奮を抑えられない様子で、目の前で繰り広げられる様子をガン見している。
森崎さんは唇を離し、僕を抱きしめ、耳元で囁く
「これは私の感謝の気持ちと同時に、宣言でもあります」
「……宣言??」
「私は灰城様……いいえ碧君、貴方の事を愛しています、何番目でもいいので、私を貰ってください」
「まっ待ってください、突然すぎて、それに僕、付き合ってる人はいないし……」
森崎さんはキョトンとした顔で尋ねる。
「そうなのですか、藤原梢様から最上空様と付き合うまで秒読みだから、あたしも貰ってもらうんだって言ってましたから、もう付き合っているものだと」
「空ちゃんとはまだ付き合ってないよ……ちょっと待ってください、藤原さんと知り合いなんですか?」
「そうですよ、ゴブリンが街の襲撃した日に、藤原様と知り合いました。藤原様が報告に来た際に、私が受付を担当して、報告を聞いた時は驚きましたよ」
「う……心配させてすいません」
「そうですよ、心配させないでください。話を戻しますが、藤原様の報告を聞いた際に、灰城君の話が持ち上がり、話をする内に意気投合しまして、お友達になりました」
「そうなんですか、それで空ちゃんの事を知っていたんですね」
「碧君、この時代いつ何が起こるか分かりません。だから、向けられた好意にはちゃんと向き合ってくださいね、私、いつまでも待っていますから」
森崎さんは、僕に微笑みかけ、ルトと家に帰るまでの間、その表情が忘れられないでいた。