森崎さんの治療
僕はヒールと浄化を使い、森崎さんに使い続けていると、少しずつではあるが傷が小さくなっていくのがわかる。
「これは、少しずつですけど傷が治りかけています。」
治り始めているのはわかるが、スキルを同時に使っているせいか視界がぼんやりし始め、身体がふらついてしまう。
「灰城様、無理はしないでください。治してくださるのはありがたいのですが、一度にやらなくても回数を分けてよいのではないですか」
全身に汗が止まらず、疲弊し嗄れ声になりながらも僕はスキルを止めず、使用し続ける。
「……いえ、見習い…聖女を獲得して…いる為か……この森崎さんの……傷は一度に…治さない…と駄目…だと告げて……いるんです」
「おかあちゃん、がんばって、るとがさしゃえるから」
ルトがふらついている僕の体を精一杯支えようと力の限り支えてくれる。
どれくらいの時間が経過しただろうか、全身の感覚が無くなりかけようとした時、その時は訪れた。
「……森崎さん……治りましたよ」
「灰城様!!」
「おかあちゃん!!」
森崎さんやルトの僕を呼び声が微かに聞こえてくるが、僕は遣り通した達成感に満足して、気を失ってしまった。
※
「……おかあちゃん」
ルトちゃんが心配して灰城様を見ている。
「大丈夫ですよ、スキルの使い過ぎで気を失ったようです、少しすれば気が付かれますよ」
「……ほんと」
「本当です、ここでは寝かせられませんから、ベッドに運びましょう」
彼を抱き上げて、彼女と共に救護室に連れていく、すると支部長の中沢と鉢合わせる。
「森崎君!? 顔の傷が無くなってる、あんなに回復魔法が聞かなかったのにどうして、いや~見違えたよ、おめでとう」
中沢さんは最初は驚きはしたものの、怪我が回復したことを労ってくれる。
「これはね、おかあちゃんが治してくれたの、すごいでしょう」
ルトちゃんは自分の事のように胸を張って自慢する。
「お母さん!? この歳でこんなに大きい子供がいるの、でもよく見ると似ているような」
驚愕の表情で灰城様とルトちゃんを交互に見る。
「支部長、そのことについては後でご報告があります、今は灰城様を救護室に運びますので」
支部長に断りを入れ、灰城様を救護室に運ぶ為に移動を再開する。
「すまなかったね、呼び止めてしまって、でも改めて森崎君、回復おめでとう」
救護室のベッドに灰城様を寝かせルトちゃんの為に、給湯室からお菓子と飲み物を持ってこようとした時、壁に備え付けてある鏡を見て、初めて自分の顔が鏡に映る、傷がない姿を見ながら、元の傷があった場所を手で触りながら見る。
「……良かった……良かったよぉ…」
自分の映る姿が涙でぼやけ、喜びの感情がこみ上げ、涙が溢れ出ていた。