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38--新しいのが見つかるかもしれないしね

新しいゾーンは岩場だらけの森だった。憂鬱な雰囲気たっぷりだったが、そんな中でも俺たちは新しい日を迎えた。

岩場は首の高さまである。そこを登るストレリチアを助けるため、俺は手を差し出した。 「こっちだ、ストレリチア」

「ブレア、ありがとう」

彼女は温かい微笑みを浮かべた。

ストレリチアのマントが引っかかってゴタついたが、それでもどうにかうまく岩の上へと引っ張ってやることができた。うっかりストレリチアの腰を触ってしまった時に気づいたが、剣はそこにはない。ストレリチアは自分の意志で剣を印縛処から出したりしまったりできるのだ──基礎中の基礎のようなことだったが、俺はまだその方法がわからないでいた。アンサイが推測するには、アンサイのせいか俺の「前例なき」性質のせいではないかという。アンサイはそのうちどうにかする方法を見つけ出すだろう、と話を終わらせた。

俺はストレリチアから手を離し、顔を見た。

「それ、まだ着続けるつもり? もうボロボロだけど」

ストレリチアの顔は赤くなり、首を横に振った。

「これを脱ぐくらいなら死んだ方がマシよ」

そう言うとマントをつかみ、体の上半身へと巻きつけた。

「……覚えとく」

俺は言った。

「新しいのが見つかるかもしれないしね」

「私たちが向かっているダンジョンにあるかもしれないわ……ねぇ、師匠、妥当な推測じゃない?」

「それはダンジョンにもよるじゃろう。ダンジョンのコアがそういった衣服を良しとしているなら、いろいろと見つかるかもしれんな」

「『良しとしている』? アンサイ、ちょっと待った。ダンジョンがそんな意見を持ってるって言うのか?」

アンサイの顔に一瞬不安の色がよぎった──口が滑って言わないでいたことを言ったのか?

「多分これを伝えても問題はないと思うが……ダンジョンは成長する。だがどうやって成長するのかはわからん。確か前に言ったとは思うが、この者の知識はまだまだ完璧とは言えんからのう。この者が知りうる限りでは、ダンジョンは何らかのテーマ性に従って成長する。その成長をコントロールしているものがダンジョンのコアじゃ」

「『テーマ性に従って』だって? なんか気味悪くない? テーマ性ってのにここは支配されてるのか? ゾーンだって死の領域っていうテーマに従ってる、それに、死の領域の有望者だってそういうもんだって言えそうだし。それで今度はダンジョンもテーマに沿って成長してるだって? なんか奇妙すぎるよ」

「どこが奇妙だと言うのじゃ?」

アンサイが答えた。

「類は友を呼ぶ、じゃ。シンプルなものほど異様に見えるのじゃ」

ストレリチアの方を見ると、わかったような顔をして俺を見ていた。

「似たような心を持っている者は引き寄せ合うって先生がいつも言っていたわ。つまりそういうことじゃない?」

「わーかった、もう十分っ」

降参したような口調で俺は答えた。

「フリンジワイルドに説明を求める俺が悪うございました」

「それじゃ、ダンジョンに向かいましょう。私たちは財宝を探しているんだものね?」

ストレリチアが尋ねた。

「そうそう」

俺は返事をした。

「そしてこの財宝は──上位の精霊を印縛処に迎え入れるための物、いわば貢物ね?」

「アンサイのアドバイスに従ってね」

「なるほどね。ようくわかったわ。あなたの印縛処の強化のためよ、がんばるわ」

「助かるよ。ストレリチアの精霊を捕まえる時間も設けなきゃだよな」

「意論はなしじゃ。ストレリチア、昨日は印縛処付きの精霊を倒してくれて感謝している。これでお前さんのレベルは5になったぞ。ここではお前さんの体力の持ちを高めてくれるような精霊を見つけることをお勧めする」

「消耗する代わりに増強してくれる精霊ってことか? そんなことありえるのか、アンサイ?」

「もちろんじゃ」

アンサイは答えた。

「はじめに言っておくが、精霊の持つ体力を人間に充てがうことはまったくもって可能なことじゃ。我々だってできるぞ、試しにやってみるか?」

「でも俺たちって特別なケースじゃないの?」

ストレリチアは俺の言葉を聞き、いぶかしげな顔をした。

「そうじゃが、そのメカニズムは説明可能じゃ。たやすく理解できるじゃろう。普通の精霊のケースに話を戻すと、我々が探すべきはバッテリータイプの精霊じゃ。バッテリータイプの精霊であれば、印縛権者の体力をヴィシュアへと使用する代わりに、やつらのヴィシュアを印縛権者のヴィシュアへと補充することができるスキルを持つ。簡単に言えばこういうことじゃ。わかったかな?」

「なるほどね。ヴィシュアの場を維持するには体力を使うけど、それを充当してくれるものになるってことだな」

「師匠、どこで見つけられるのかしら?」

「運が良ければ、ダンジョンの深層部で見つけられるじゃろう。バッテリータイプの精霊たちはダンジョンと共生的な関係をしている時があるからな」

「うおー、マジで? すっげえじゃん!」

俺はワクワクして我を忘れてはしゃいでしまった。

それを聞いたアンサイの心も躍った。

「そうじゃろう。前例なき者、フリンジワイルドの奥へと進んでいったり、高いレベルのゾーンへと足を踏み入れていったりすると、より複雑性を増した精霊やシステムに出くわす。そのような精霊やシステムは人間界に存在する摂理や理論とはずいぶんとかけ離れたものであることに気づくじゃろう」

「レベルが上がると常識の範囲を超えたものが待ち受けてるってことか?」

俺は昨日誤って入ってしまったゾーンのことを思い出していた──今でも何が起こったのかまったく理解できない。

「すげぇ……マジでゾクゾクする」

歩みを緩めることなく進む中、俺はストレリチアに言った。

「すべてをこの目で見てやろうぜ」

「この目ですべてを……」

ストレリチアの笑顔が弾けた。

「ええ、やってやろうじゃない!」

ストレリチアがそう言った瞬間、俺たちは新しいゾーンへと足を踏み入れていた。

「ここじゃ!」

アンサイの声が響く。

「雰囲気が変わったな! 我々はダンジョンのあるゾーンへと入ったのじゃ!」

アンサイの高揚としたその発言を合図に、俺たちの歩くスピードが速くなった。

「精霊たちよ、どうかこのダンジョンで我々が求めるものすべて手に入れることができるように力を貸してくれ!」

「うおー!」

感情が高まり俺は叫んだ。

「ストレリチア、ついに到着だ!」

ストレリチアは拳を突き上げた。

「ブレア、準備万端よ!」

俺たちは足を早め、ゾーンの奥へと突き進んでいった。俺たちの新しい旅の始まりだ。この先何が待ち受けているかはわからない……しかし、不安なんて感じる暇もないくらいに前向きな気持ちでいっぱいになっていた。ストレリチアが未来に可能性を感じているのと同じように──紛れもなく俺だってそうだが──今ならなんだって可能にできる、そんな気持ちでいっぱいだった。


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