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リ・ボール  作者: よもや
1.5章 燃えろ!炎の運動会!
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番外編 1 運動会開催

ストック溜まってきたので再開します。

今回から5話分は番外編ですので、主人公諸々は6年生、中学1年生になっております。

暑い…。


蝉が羽をはためかせ、鬱陶しい鳴き声をグラウンド中に響かせる中、俺は校庭のほぼ中心で体育座りをしていた。もちろん1人ではない。


季節は夏


夏波との最後のリーグ戦を優勝で飾り、快挙を果たした北信越トレセン。それ以外にも、海外への遠征があったり、そこでライバルとの出会いがあったり…様々なことがあった一年だった。そうして、あっという間に寒い冬が過ぎ去り、春が訪れた。6年生になった俺は相変わらず教室ではひとりぼっち。去年関わりのあったクラスメイト…猪山や委員長、春風なんかとはみんな違うクラスになってしまったことも、その現実を助長している。


「選手宣誓…!」


あっという間にそんな春も過ぎ去って、夏。こんなかんかん照りの中『運動会』だなんて…どうして先生方は生徒にそんな苦行を強いるのだろうか。観にきてくれている親御さんの気持ちも考えたらどうだ…?


「私は達は…正々堂々…!」


そういえば、今選手宣誓をしているのは春風と猪山だ。2人はそれぞれ女子と男子の代表として、この運動会をまとめる役割を果たしている。


「…誓います…!」


同じクラスになって仲は進展したのだろうか?

真っ直ぐに前を向く春風に対し、チラチラとその横顔を確認する猪山。どうやら5年生の時と変化はないようだ。


「陽射さん、猪山くん、ありがとうございました。続いてのプログラムは…」


先生の放送と同時に、運動会特有の音楽が高らかになり始めた。早速第一プログラムからスタートである。


「さてと…」


最初のプログラムは1年生〜6年生までの100メートル走だ。6年生は最後なのでしばらくは自分の団のテントで待機する。


「水分水分…」


立ち上がってそさくさとテントへ向かう。壇上から降りる際に春風と目があった気がしたが気のせいだろう。


ーー


我が校では、赤青白黄の四つの色の団が存在する。毎年団は変わり、今年は赤団だ。俺は赤色のテントの下で水を飲んでいた。


「自分の番以外は休んでおけばいいのに。」


俺は、同じ団の他の選手を応援する生徒たちを見てつぶやいた。特に団旗を振っている旗手が大変そうである。


「ねぇ…応援しないの?」


そんな俺に話しかけてきたのは、偶然にも同じ団になってしまった春風だ。


「春風こそ。応援副団長なら応援しなきゃ。」


テント前方での声出しの中心は、団の中でも『応援団』という括りに属する選ばれし10人だ。応援副団長と応援団長、そして団リーダーと呼ばれる幹部職的な奴らが8人。


「応援をサボる平団員のお尻を叩くのも副団長の仕事なの。巡君みたいな人のね。」


確かに、現在テントの中でゆっくり休んでいるのは俺を含めた下級生が何人かのみ。他のみんなはテント前で応援の声を出している。


「応援の形は人それぞれだろう?俺は声は出してないし、座ってるし、テントからも出てないけど…心の中では超応援してるんだよ。」


「他の団リーダーの人達も苦労してたよ…。山のように動かない人がいるって。加えて林のように静かだって…。」


両手を広げて呆れたジェスチャーをする春風。同時に次の競技の案内アナウンスがなる。


「そいつは多分…風のように素早くて、火山のように激しい一面も持ってるんだろうね。」


僕は立ち上がって水筒の蓋を閉めた。先ほどのアナウンスの内容は『6年生の100メートル走』の案内である。


「でも巡君、どうせサッカー以外じゃ本気出さないじゃん。」


前に出て応援していた団長や団リーダーが、応援を切り辞めてテントに入ってくる。大抵が6年生であるため、次の競技に向かうのだろう。そんな彼らの視線はどうも俺たち2人に向いてしまうようで、俺はバツが悪くなってすぐにテントから出た。


「大丈夫。最低限の本気は出すからさ。」


俺は春風にそれだけ告げて、ひと足先に競技前の待機場所へと歩みを進めた。


「春風、さっきのって…」


俺がいなくなったテントでは、団長が副団長の春風に話しかけていた。


「『神谷』君…。あぁ気にしないで。」


団長の『神谷純平』。男女ともに人気のある生徒で、どうやらサッカーをやっているらしい。どこのチームかは知らないが、まだトレセンで顔は見たことがない。


「仁界…1人だけやる気なくて困ってるんだよな。優勝するために、一致団結をスローガンに掲げてるんだけど。」


春風は苦笑いを浮かべて答える。


「本当に大事な時はいつも頼りになるから大丈夫!…多分。」


神谷はその笑顔を見ても動揺しない数少ない男子の1人だ。すでに団員の9割は春風のために…と言う共通理念のもとこの運動会に全力で取り組んでいる。


「…それじゃ、私先に行くね。」


そう言ってテントを出て行った春風の背中を見て神谷がつぶやいた。


「いつも…ねぇ。」


神谷が静かに自分のハチマキを握りしめる瞬間を見た団員は誰もいなかった。


ーー


あぁ…すっかり忘れてた。


俺は100メートル走の待機順が最悪だったことを思い出す。


「ひ、陽射はよぉ…100メートル、お、おせーよな…!」


タジタジで口を開く猪山は、ゴールに対してもっとも左のレーンに座っていた。また余計なこと言ってるぞお前…。


「そ、そうなんだ…。練習したんだけどな…。」


「な、いや、ごめ…!」


その右隣に春風が…相変わらず猪山を手駒にとって遊んでいるようだ。


「巡君は速いよね…走るの?」


無言の圧力を、右隣の俺に向けてくる春風。これはおそらく本気で走れと言うことだろう。


「何言ってんだ!仁界は雑魚だ雑魚!」


あーめんどい!

春風こいつ…わざと猪山の嫉妬心を弄んで…。


「最悪だ…。」


俺は体育座りをしながら頭だけを下に向けて絶望した。


「大丈夫か仁界…体調が悪いなら先生呼ぶぞ?」


そして俺の右隣には、赤団団長の神谷が座っていた。こいつは6年生にしてかなり大人びて感じる。


「あぁいや、精神的な方だから。」


「精神的な方…?」


疑問符を頭に浮かべる神谷。


「神谷君…!あのね!」


そして神谷の右隣に座る2人の女子生徒が神谷を呼んだ。相変わらずの人気者は大変そうである。


「なんつー6人…。」


俺は聞こえないようにつぶやいた。俺たちが走るのは8番目…前から数えた方が早い…つまりそれなりに足が遅い連中が集まっているはずなのだ。なのにどうしてこんな状況になったんだ…?


俺は数週間前の体育にて100メートル走を走った記憶を呼び起こす。


「…狙うは目立ちにくい8番目…。過去の傾向からいくと、100メートルを19秒後半で走れば狙える位置だ。」


俺は運動会本番で簡単に一位を取れるよう、わざと手を抜いて100メートルの記録を出した。100メートルの記録が低い順番に並べられるため、本番の相手が遅い可能性があるためだ。


「まさか…こんな順番になるとは。」


本番の出走順を見て俺は絶望した。左から、猪山、陽射、神谷、春日部、長野…。男女半々で組まれる点は守っている…でも、春風も猪山も100メートルは17秒を切っていたはずだろう…?


「それに…神谷って。」


俺は相変わらず女子に囲まれているサラサラヘアーの男子に視線を向けた。


「…100メートルを13秒台で走るバケモンだろ?」


全く訳がわからない。本来なら最後尾のはず。この学校で1番早いんだから。


「こんなのおかしい。」


なぜか喜ぶ春風と、その姿に勘違いをする猪山、そしてチラリとこちらに一瞬視線を向けた神谷を横目に、俺はこの並び順に対して異議を申し立てに行った。


「またお前か仁界。小学生のくせにお前は社会人みたいな抗議の仕方をしてくるから嫌いなんだよな。」


相変わらずやる気のない座り方をしている倉敷先生。俺はこの人が苦手だ。


「小学4年生あたりから、社会を見据えて敬語を学ばせてるのは学校側じゃないですか。」


「しかもそれ教えたの、国語担当の俺ってな?がははははっ!」


いやなんも面白くねーからな?


「決まったもんにケチをつけるな。お前はここでいいと判断したんだよ俺が。」


何余計なことしてんだよ。


「信じてるぜ?お前があのイケメンをぶっちぎるってさ。」


そう言って肩を叩いてくる倉敷先生。

小学生に嫉妬とか…。


「分かったら戻れぇ。お前の位置はあそこで決定だ。」


「…わかりました。」


大分不服だったが、俺は皆が騒ぐ場所へ戻った。その頃にはすでに仮の整列が始まっており、俺の隣の春風がこちらに向かって手を振っていた。


「…隣だね。」


「うん。」


並ぶなり、そう声をかけてくる春風。そういえばクラスが変わってから話すのは本当に久しぶりな気がする。委員会くらいか?


「私と巡君で1位と2位取ろうね…。」


ぼそりとつぶやいた声に気づかず、俺はその場で下を向いて絶望していた。

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