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リ・ボール  作者: よもや
1.5章 燃えろ!炎の運動会!
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番外編 2 少年サッカーチーム県三強

というような回想もあり、現在の状況に至る。地獄の待ち時間。まだ8番目なのが不幸中の幸いである。


「仁界はそこまで早くなかったなよな。19秒後半くらいだったか?」


神谷が何気なく聞いてきた。よく覚えてたな。


「あぁ。走るのはあんまり…な。」


まぁ、正直神谷には本気で走っても勝てるかわからん。だから本気を出すと言っても無難に2位狙いだな。


「本気でやってなかったでしょ。俺見てたよ?」


なんでバレてんだよ。でも、だからこそ疑問を持てよな。なんで自分がそんな遅いタイムのやつと同じ列にいるのかってさ。しかも同じ団って…6人なら被っても2人までだろ。この点に関しては団ごとの人数差の調整…みたいなことを倉敷先生が言っていた気がするが。


「まぁね。怪我するのが怖いんだよ。」


本音だ。正直サッカー以外で怪我をするのは気が引ける。なんならサッカーでも怪我をしないのが1番大事だ。無茶なプレーをして活躍しても、次の試合に出れないと意味がないのだ。


「それは、サッカーのため?」


「え、あぁまぁ…。知ってたんだな。」


神谷ともあろう人間がなぜ俺のことを…?


「僕もサッカーやってるんだ。クラブチームでね。それで君のことはトレセンで見たことがある。」


トレセン…神谷のような目立つ顔の選手がいたら覚えていると思うけど、どうにも記憶にないな。


「神谷はトレセンに…」


「次だね。お互い、全力を尽くそう。同じ団だしね。」


軽快な音楽が流れる中、7列目の選手たちが走り去って行く。俺たちは立ち上がってスタートのフォームを構えた。


「位置について…よーい…」


13秒台…トレセンでも荻原、獅子塚の2人がかろうじて届くか怪しい速さ。なんでそんな武器を持っていながらトレセンで見られなかった?


「どん…っ!」


余計なことを考えていて出遅れた俺。その隣で神谷が圧倒的なスタートダッシュを切っていた。


「はや…っ。」


あまりの足の回転速度に感嘆。絶対に追いつけないと思った。


「でもまぁ、2位は狙えそうだな。」


俺は地面を蹴り、まず右側の女子2人を簡単に抜き去った。


猪山が意外と早いんだよな。


春風もそれなりの運動神経をしているが、それをわずかにリードする猪山。そしてそんな2人を俺は抜き去った。この時点で50メートル地点くらい。


「こりゃ、本気でもかなわないな…。」


その時点で神谷はすでに45メートル地点。5メートルも差がついていた。この速度で走る5メートルの差は大きい。追い越すには単純に神谷より足が速くないといけない。


結局最後まで神谷を抜き切ることはできずに、2位でゴールテープを切る。


「やっぱり本気じゃなかったんじゃん。」


肩で息しながらこっちに歩いてくる神谷。俺も一応疲れを見せておくことにする。


「でも、神谷には勝てなかった。」


俺の言葉に笑って、神谷は一位の選手が集められるレーンへと歩みを進める。腕には一位の証である赤い輪ゴムがつけられていた。


「やった!3位…!」


そんな神谷の姿を見守っていると、後方からドーンと体をぶつけられた。振り返ると笑顔の春風が腕にした青色の輪ゴムを自慢してきていた。


「勝ったんだな猪山に。」


「ギリギリだった…!」


俺は腕につけた白色の輪ゴムを見せた後、2位が並ぶレーンへと歩みを進める。その隣を春風がついてきた。


「1位、2位、3位…赤団独占…!これすごいね!」


3位レーンでぴょんぴょんと跳ねる春風。そんな春風の姿を見て笑う神谷。


「あんまり動きすぎたら怪我するぞ春風。でも、いい走りだったね!」


俺を挟んで話すんじゃない…。っていうか神谷は独走状態だったからいい走りかどうかわかんないだろ。


「ありがとう!でも、神谷くんもやっぱり早かったよ!」


「あぁ。驚いた。トレセンにもあんなに早い選手はそういない。」


先ほどまでの笑顔が、俺が話しかけたことによってどこか苦笑いに変わってしまう神谷。


「うん…ありがとう仁界。」


先ほども避けようとしていたが、何かトレセンに因縁でもあるのだろうか。全くわからんが…


「それじゃあ、3人で戻ろっか!」


「そうだな!」


俺はその理由をなんとなく想像しながら、春風と神谷の少し後ろをついて行くのだった。


ーー


運動会も中盤に差し掛かってきたが、何年経ってもこの忙しさにはなれない。出る競技は多くて4つだが、テントに戻ってから対機場に向かうまでの間隔が絶妙に休めない。


「応援しなくて良いの?」


俺は隣に座り水分補給をする春風に尋ねた。


「休憩も大事なんだよ。それに…」


「応援しちゃいけない競技もある。」


春風の言葉に重ねるように、春風の隣の神谷が答えた。


「そう。グラウンドを広く使う競技なんかは危なかったり、砂が舞う…とかいう理由でテント待機させられるんだって。」


神谷の答えに呼応するように春風が説明を付け加えてくれた。


「そうなんだな。」


先ほどから妙にテント内が静かになっていたため、話題を振ってみたのだがどうやらぼっちの俺の助けなどいらなかったようだ。俺が口を開いた瞬間、周囲の皆が話し始めた。


「仁界はどこのクラブチームでサッカーしてるんだ?」


俺が静かに会話から身を引こうとした時、春風の後ろから神谷が俺に話しかけてきた。


「…学校の少年クラブだよ。」


いきなり話しかけられてびっくりしてしまった。


「うちの少年クラブ…。そんなに強くないよな?」


恐る恐る質問をしてくる神谷。何かに配慮しているようだが…


「あぁ、まぁな。」


「てっきり、『リボワーレ』とか、『山橋』とかだと思ってた。うちの県の三強。」


うちの県の三強…となると、神谷が言った2つと『べセリア』というチームだな。リボワーレは夏波がいるチーム。山橋は荻原と田畑がいるチームだ。去年は山橋とべセリアが決勝だったな。


「そういう神谷はどこのチームに?トレセンでも見たことないけど。」


「べセリアだよ。」


あぁそういうことか。だから2チーム分しか尋ねてこなかったわけだな。


「じゃあ去年の大会は決勝か。宮浦に、葛西さんもべセリアだったか?」


べセリアでレギュラーならトレセンに顔を出していてもおかしくない。もしかしたらベンチメンバーなのかもしれない。


「2人とも知ってるよ!そっかあの2人はトレセン行ってたもんなぁ。」


俺の口から出た名前に、神谷は嬉しそうに答えた。


「2人とも何の話してるの?」


何も知らない春風が、俺たちの会話に疑問符を浮かべる。


「うちの県のサッカークラブの話だよ。」


そういや春風、葛西さんのこと知ってたような気がしたけど…いや、気のせいか。


「もったいないな仁界。何で強いチームに入らないんだよ?」


そうだな。それに関しては、単純にクラブチームに所属するにはお金がかかってしまうというのが1番の理由だ。それに、小学生くらいであればそこまでチームによって練習の質に変化は生じてこないだろうと考えた。


「考えてるよ。ただ、どのチームが自分に合うか迷ってる。」


一応6年生にもなり、どこか別のクラブチームに通う許可も母親から出た。しかし、通うとなると主に送迎で負担をかけることになる。


「どこもいいチームなんだけど、俺の親忙しいから送迎ができなくてな。」


俺のその言葉に神谷が反応した。


「…それなら…うちはどうだろう?」


うち…つまりはべセリアか。確か練習場所は県総合運動公園辺りだった気がしたんだが。


「うちは週5で練習があるんだけど、参加自体は週3でいいんだ。そしてその週3は、結構近くの浜中小学校のグラウンドを使ってる!」


浜中か。確かに、徒歩でも30分程度で迎える場所だな。自転車であれば10分足らずで通うことができる。


「仁界が来てくれたら即戦力だよ。宮浦も喜ぶんじゃないか?」


「あぁ。考えとくよ。」


べセリアか。そんな練習形態をとっていたとは知らなかった。


「私の知らない話しないでよ…。」


そんな俺と神谷の間で口を膨らませる春風。


「ごめんな春風…!」


神谷が春風に謝罪する。俺としては特に謝る理由もないし、テントの外で繰り広げられている3年生のタイヤ拾いに視線を向けた。

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