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116 「八月の銀の雪」

 

 こんにちは。

 今回はこちらの本のご紹介です。

 こちらは少し前にご紹介した「(そら)わたる教室」と同じ作者の小説。

 短編集で、今回はそれぞれのお話に直接のつながりはないので読みやすい内容かと思いました。


 〇「八月の銀の雪」

 伊予原 新・著 / 新潮社(2020)


 こちらの本には伊予原新氏の来歴が書かれていました。「1972年大阪生れ」「神戸大学理学部卒業」その後、東京大学大学院理学系研究科で博士課程を修了。

 こちらの小説にもしばしば出てくるのが関西弁なのですが、伊予原先生もまた関西の方であり、大学が私の母校でもあるのでなんだか親近感が湧きました。年齢も近いですしね! もしかしたらキャンパスのどこかですれ違っていた可能性も??(苦笑)

 そして「やっぱり理系のかたなんだなあ」と改めてしみじみとしてしまいました。


 今回の作品も、五作品の短編集なのですが、どれも理系の知識が生かされています。それが浮き上がることなく、ストーリーにしっかりとマッチしていて「世の中にはこんな世界もあるんだな」と目を開かされる感じがありました。

 中高生から読むのにもちょうどいい内容のように思います。


 私個人は否定的ではないものの、やっぱり中学生ぐらいの人に、あんまり大人の生々しい恋愛やら肉体関係やらを描写したような作品を手渡したくないなあというのがあり。もちろん司書は、自分の方から利用者の「読みたい気持ち」を否定する立場ではないのですが、こと場所が「学校」ということになると、ある程度の制限があるのは当然かなという方向性で考えております。

 そうした意味でも、こちらの小説は生徒たちに手渡し安い感じがありました。


 短編集なので、内容の紹介がちょっと難しいのですが……主人公たちも、年齢や性別、置かれた状況もさまざまですし。

 ただ共通して言えるのは、冒頭はなにかしら現状に問題を抱えていて、それがある人と出会うことによって目を開かされ、自分の人生を少し違う視点で眺められるようになり生きやすくなっていく……という流れがあることでしょうか。


 最初の短編がタイトル作品でもある「八月の銀の雪」。

 こちらでは、就職の面接にことごとく落ちまくり、現状に不満を抱えていらいらしている青年・堀川が主人公です。

 いつも寄るコンビニで働いているアジア系外国人の女性に対しても、「ろくに日本語もしゃべれないのにもたもたして」という感じでずっとイラついています。彼女がもたもたしていたせいで、大事な就職面接に遅刻してしまったことが大きいわけですが。

 そのコンビニのイートインスペースで、ほんの顔見知り程度だった男、清田から「ネズミ講」のようなビジネスの手伝いを頼まれる堀川。そのとき、メモ代わりに清田が裏を使った古ぼけた紙がストーリーを転がしてゆきます。

 コンビニのアルバイト女性は、そのイートインスペースに「忘れ物」それも「論文」がなかったかと堀川に訊ねてきて、堀川は内心驚きます。


 その後、このアルバイトの女性との係わりから、最初に主人公が勝手に決めつけていた第一印象がどんどん変わってゆき、最後まで一気に読まされてしまいます。

 こういう勝手な印象の決めつけって、普段自分自身もついついやってしまっていることで、自省を促される内容でした。


 つづく四編もそれぞれにそっと心にしみこんでくる良作でした。

 よろしかったらお手にとってみてはいかがでしょう?

 もちろん学校図書館にもお勧めです。

 ではでは、今回はこのあたりで。



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