108 「給食アンサンブル」
こんにちは。
今回はこちらの本のご紹介を。
こちらも、今年の「夏休みお勧め本」などとしてよくお勧めされている本ですね。光村図書の国語の教科書でも以前に紹介されていたものです。
〇「給食アンサンブル」
如月かずさ・著 / 光村図書(2018)
こちらは、主人公が同じクラスに通う中学生6人となっています。それぞれの視点から6つの短編として構成されていますが、それぞれに関わりあいもあるという流れ。それぞれのお話に、給食メニューのタイトルがついています。
第一話「七夕ゼリー」で最初に登場するのは美貴という少女。都内私立の一貫校に通っていたのですが、父親の事業の失敗が原因で急に田舎の祖母宅に引っ越しをすることに。そこで公立中学校に入学することになり、急に激変した環境に慣れず、あるいは慣れることを拒否しています。私立校の高級で美味な給食とはうってかわって、庶民的な公立校の給食メニューも食べる気がせず……。
そんな美貴を、祖母同士が知り合いだというクラスメイトの梢があれこれと構ってくれるのでしたが……。
第二話「マーボー豆腐」の主人公は桃。周りの子たちが大人っぽく見え、いつまでも子供っぽい自分にコンプレックスを抱く少女。幼いころから童話が好きで、図書館でも童話を選んでしまうのですが、一念発起して「大人っぽい」小説を選んで借りてみたところ……。
こんな感じで第三話「黒糖パン」では親友の姉にほのかな恋心を抱く満、第四話はその親友であるところのクラスの人気者(とはいえ悩みは深い)雅人……とお話は少しずつ人間関係を絡め、深めていきつつ進んでいきます。
どの中学生も、現実の中学生の気持ちに寄りそうようにあたたかな筆致で描かれており、嫌味がありません。それぞれに抱える問題はあるのですが、それがそれぞれに完全に解決するということではなくとも(当たり前ですよね)読後感はさわやかなものです。
そういえば、こちらは続編も出版されていますね。
夏休み、「短編集で読みやすい」ということもとっかかりになりそうなので、子どもたちにお勧めされてはいかがでしょうか。
かく言う私も、読んでようやくPOPを書いて展示しておいたところ、「夏休み特別貸出」としてすぐに借りていってくれた子がいましたよ!
ではでは、今回はこのあたりで。