107 「さみしい夜にはペンを持て」
こんにちは。
今回はこちらの本のご紹介を。
とはいえ、とりわけ学校司書のみなさんにとっては「わざわざ紹介されるまでもない本」かもしれませんね。それほど、(特に中学の)学校図書館には普通にある本ではないでしょうか。
私の勤める学校図書館にも、二館ともこの本が置かれています。しばしば「おすすめの本」としてあちこちで紹介されている本でもあり、ずっと気になっていたのですが、ようやく自分でもちゃんと読んだので(苦笑)!
〇「さみしい夜にはペンを持て」
古賀史健・著 / ポプラ社(2023)
こちらは一応小説形式であり、子ども向けファンタジーのような雰囲気の物語となっております。ですが、内容としては「文章を楽しく書けるようになりたい人向けの指南書」という風に捉えた方がいいのかもしれません。
舞台は架空の海の町。
主な登場人物は、そこにある「うみのなか中学校」に通う海の生き物の中学生たちです。
主人公は、中学生のタコジロー。もちろんタコです。内気な性格で、緊張するとすぐに顔が真っ赤になってしまい、口から墨が漏れ出てしまうのですが、それにコンプレックスを持っている少年。
タコジローはクラスのいわゆる「カースト上位」のような生徒たちから、そういう様子をからかわれ、いじめられていました。
いじめっ子の子どもたちは、タコジローが嫌がること、失敗するであろうことをわかっていて、わざと体育祭での宣誓をする人として彼を無理やりに推薦してしまいます。
タコジローが必死に断ったのに、ほとんど勝手に宣誓することが決まってしまい、彼はひどいショックを受けました。あまりのストレスで体調もおかしくなり、どうしても学校へ行きたくなくて、バスに乗り続けます。そうしていつの間にか「うみのなか市民公園」にたどり着いたのでした。
そこで、不思議なヤドカリのおじさんに出会います。
冒頭のストーリーはこんな感じ。
非常に読みやすく、無理のない流れ。おじさんの正体については謎が多く、「何者なのか」という興味も引かれてしまいます。
さらに、この本には可愛いイラストがあちこちにふんだんにちりばめられていて、イラストによって内容を紹介する工夫もたくさん見られます。本当に読みやすい!
ともかくも。
そのヤドカリおじさんに出会ったことから、タコジローは次第に文章を書くことについて深く考えるようになってゆくのです。
章タイトルを少し紹介しますと、たとえば第一章は「「思う」と「考える」はなにが違う?」ですし、第五章は「ぼくたちが書く、ほんとうの理由」となっています。
タコジローは少し疑問に思いながらも、少しずつヤドカリおじさんの勧めに従って、まずは日記を書いてみることから始めてゆきます。
ご存じのとおり、小中学生、いや高校生でも、文章を読んだり書いたりすることに苦手意識を持っている子は少なくないですよね。
そんな子たちのために、この本は非常に有益ではないかと思うのです。
語り口はとても平易。タコジロー君の悩みは多くの子どもたちが抱えるようなものが多いですし(たとえば「感想文なんて、何を書いたらいいのかわからない」など)、それを少しずつヤドカリおじさんがときほぐしていく過程がとても自然でうなずけるものばかり。
夏休みが近づいてきたこの時期なら、特に子どもたちにお勧めしやすいかもしれません。
ではでは、今回はこのあたりで!