第二十話
蒼太「紡、もう後半はゾンビのゾの字も出てきてないね。」
紡「ホームセンターへ到着してからは、栞の魔改造を邪魔しない背景になっていますね。」
蒼太「完全に玲奈のわがまま放題か、栞のやりたい放題のどちらかだね。」
紡「玲奈が無茶を言い、栞が必要以上の設備で実現する。いつの間にか役割分担が完成していました。」
蒼太「もうこれは『ビバ! 引きこもりライフ』だね。」
紡「ゾンビだらけの世界で、外へ出る必要のない暮らしを完成させてしまいましたね。」
玲奈が加入してから、数週間が経った。
店内には個室と共有リビングが作られ、風呂や洗濯設備も問題なく稼働している。
そして今日、家庭菜園で育てていた野菜が初めて収穫された。
「見て、しおりん! ちゃんと野菜になってる!」
玲奈が葉物野菜を掲げる。
「想定どおりです。自動給水設備は正常に稼働していましたので」
そう答える栞の顔は、どこか誇らしげだった。
そのとき、無線機から声が聞こえた。
『こちら、市立中学校避難所。周辺の安全を確保しました。生存者の受け入れが可能です』
食卓を囲んだ全員が顔を見合わせる。
避難所へ行けば、より多くの人と合流できる。
しかし、ここには十分な食料と水がある。頑丈な防壁があり、電気も風呂も個室もある。
「で、どうする?」
玲奈の問いに、誰も席を立たなかった。
女性スタッフが収穫した野菜を皿へ盛りつける。
「私は、ここに残りたいです」
「俺もだ。菜園もこれからだからな」
ほかの仲間たちも、次々とうなずいた。
栞は無線機を手に取る。
「こちらホームセンター拠点。ご連絡ありがとうございます。当拠点は生活基盤が安定しているため、現状維持を選択します」
『……つまり、避難所には来ないと?』
栞は、仲間たちと完成した我が家を見渡した。
「はい。外出の必要性がありませんので」
無線を切ると、玲奈が笑った。
「それ、ただの引きこもりじゃん」
栞は採れたての野菜を口へ運び、満足そうにうなずいた。
「ビバ! 引きこもりライフです」
蒼太「ついに避難所へ行かなかったね。」
紡「ここより生活環境の整った避難所とは限りませんから。」
蒼太「最初からホームセンターを目指していたけど。」
紡「当然です。そこは天国ですから。」
蒼太「ある意味、自分で天国にしちゃったんだけどね。」
紡「栞にホームセンターを与えた時点で、こうなる運命だったのでしょう。」
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