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タンスから現れたのは前世で幼なじみだった魔法使いでした  作者: 碧衣 奈美
第二話 怠惰な魔法使い

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2-14.抜け出してでも

「うちは簡単に死なへん」

 三樹利の言葉に、飛鳥はそう言い返す。

「お前、前世はその無鉄砲さで、命落としたんとちゃうんか。リラックやったか誰かに、やるなって言われたことをやって魔物に殺されたんやろ」

 飛鳥から聞いたトゥレーヌの最期を、三樹利は強調した。

「今回はそうならへんって、誰が保証できんねん。まともな魔法使いやった時でも、そうして死んでしもたんやろ。あんなノーコンの魔法しか使えへん奴が、何するつもりや」

「そやから、あの極悪魔法使いを捕まえるんやんか。……て言うても、どこへ逃げたかわからへんのに、うちが簡単に見付けられるとも思えへんけど」

 リラックやサンジュリアン達は、どうやってバルベラを捜しているのだろうか。

 この国を出ていないだろう、とは言っていたが、このシェルヴァンナもそれなりに広い国だ。たった一人の魔法使いを捜し出すのは、簡単ではない。

「ごめんな。みーやんが止めても、うちは抜け出してでも行くつもりしてんねん」

「……やりそうやな」

 普段はそう無茶なことをする飛鳥ではないが、付き合うようになって結構頑固なところがある、と知った三樹利である。

「それに、どっちにしろ、ゆきちゃんを元に戻すまでは、家に帰る訳にもいかへんやろ? 術を解いてからでないと。それこそ、向こうの世界で余計におかしくならんとも限らへんし」

 バルベラが見付かろうと見付からなかろうと、友希乃にかけられた魔法が解けない限り、自分達の世界へ戻ることはできない。

「……たとえ友希乃が無事でも、お前はバルベラを見付け出すつもりでいるんやろな」

「そうかも知れんな。ゆきちゃんが何もされてなくても、犯人が見付からんうちに帰るのって、気持ち悪いもん。気になって、寝られへんやんか」

「俺も行く」

「へ?」

 三樹利の言葉の意味が、一瞬わからなかった飛鳥。目を丸くして、聞き返す。

「行くって、どこに?」

「お前と一緒に行くんやんけ。あんなボケナス捜しに行くて言うてんのに、飛鳥を一人にしとけるか」

「けど……」

「俺が魔法とか使えんから危ない、とか言うなよ。それやったら、お前もやめとけ。あんなん、使えんのと変わらへんから」

「ゆきちゃんに付いてんで、いいんか?」

「気にはなるけど、いてもしゃーないやろ。いつ解けるかわからんて言われてんのに。俺が横にいても……えっと、ユニ・ブランやったっけ、あの人の集中の邪魔するだけや」

 ユニ・ブランが懸命に、友希乃にかけられた魔法を注意を払いながら解いてくれているのに。何もできない三樹利が横にいれば、気が散ってしまいかねない。

 それは、邪魔しているのと同じだ。

「んー、それもそやな。けど、みーやん。うちが捜しても、空振りなだけかも知れんで」

 三樹利としては、むしろそちらの方を願う。あの男を見付ければ、さっきのような事態になりかねないから。

「かまへん。俺かて、待つだけより動いた方がええし。けど、飛鳥、絶対に無茶だけはするなよ」

 無駄とは思いながらも、三樹利は飛鳥に注意をうながした。

「大丈夫やって。ほな、行こか」

☆☆☆

 魔法使いの館を出て、三樹利は飛鳥に行動予定を聞いた。

「最初は、どこから行くつもりしてたんや」

「んー、ベルバラの家にでも行ってみよかな、と思ってたんやけど」

「家、か」

 飛鳥がバルベラの名前を言い間違えるのを、いちいち指摘するのにすっかり疲れた三樹利。軽く相槌を打つだけにしておいた。

「簡単に言うけど、飛鳥はあいつの家、知ってんのか?」

「……知らん」

「おいっ」

 初対面の魔法使いの家など、飛鳥は知らない。

 リラックやグルナッシュの家なら、記憶を頼りに何となくたどり着けるかも知れないが、バルベラとは面識がないのだ。

 彼は最近になってからシェルヴァンナへ来ているのだから、それより前に亡くなったトゥレーヌこと飛鳥が知るはずもない。

「威勢のいいこと言うといて、いきなりつまづいてるやんけ」

「うちは知らんけど……知ってる人に聞いたらええやんか」

 わからなければ、誰かに尋ねればいい。幸い、ここでは言葉が通じるのだから。

「そや、アロース・コルトンやったら、知ってるんとちゃうかな。聞いてみよ」

 二人して、また魔法使いの館へ戻る。

 もしこれがリラックやグルナッシュ、ましてサンジュリアンであったなら、飛鳥は館へ戻らず、街の人達に聞くことにしていただろう。

 理由は簡単。教えてもらえるどころか「なぜそんなことを聞く」と逆に質問されてしまうからだ。

 すぐに飛鳥のしようとしていることを見抜いて、リラック達なら教えてくれないだろうし、サンジュリアンなら代わりにお小言をくれる。

 しかし、アロース・コルトンなら、そういうことはない。彼はトゥレーヌよりも年下だし(今は飛鳥と同い年)他の魔法使い達のように叱ったりするようなことはないのだ。

 ちょうどどこかの部屋から出て来たアロース・コルトンを、飛鳥は掴まえた。

「なぁ、アロース・コルトン。ベルバラの家って、どこにあるか知ってる?」

「バルベラの? 知ってるけど……どうして?」

 質問者が飛鳥だと、アロース・コルトンもさすがにすぐには教えてくれず、不審そうな顔で聞き返した。

「ちょっと行ってみたいねん」

「行ってみたいって……何かたくらんでない?」

 見る目の厳しい先輩の影響か、飛鳥の行動が読みやすすぎるのか。たぶん、両方だろう。

 絶対に何かしようとしているよね、とでも言いたげな顔だ。

「たくらんでも、うちだけやと大したことってできひんやんか。ただ、犯人は現場に戻るって言われるから」

「バルベラの家は、今回の現場じゃないよ。魔法使いの館で起きたことだから」

 おとなしそうな顔をしながら、アロース・コルトンは結構突っ込んでくる。

「ああいう奴って、アジトに戻るもんなんやって。確認するくらい、かまへんやろ。知ってるんやったら教えて」

 アロース・コルトンは少し迷ったような表情をしていたが、うなずいた。

「じゃあ、ぼくも一緒に行くよ。口で説明するのは難しいから。それに、リラックに館へ連れて帰れって言われてるのに、ぼく一人でここにいるのがわかったら、叱られるからね」

 最初は一人で行くつもりをしていたのに、三樹利が来ることになり、さらにはアロース・コルトンまで来ることになってしまった。

「ちょっと待ってて。すぐに戻って来るから」

 出掛ける準備をするのか、アロースはある部屋へ姿を消した。場所さえわかればよかったのだが、案内人がいなければ動けない。

「アロース・コルトンは、俺らの見張り役みたいなもんらしいな」

「見張り?」

「俺ら、と言うより飛鳥のな。前に来た時のことを考えて、居場所をしっかり把握しとこってなもんとちゃうけ」

 やはり、聞きに戻ったのは間違いだったかも知れない。

 前の時は、ユニ・ブランとナーチェがそうだった。しかし、あの時の彼女達は急がしくて、四六時中は飛鳥にかまっていられなかった。

 おかげで、飛鳥はこっそり抜け出せたりしていたのだが。今回は、一人でこっそり、は難しそうだ。

「お待たせ」

 アロース・コルトンは、すぐに戻って来た。

「あ、そうだ、飛鳥。今、ナーチェが来てるよ。飛鳥がいるなら会いたいって、言ってたけど」

 ナーチェは、トゥレーヌにとって幼なじみの友達だ。来ていると言うのなら、飛鳥も会いたい。

「ん……後にするわ。こっちへ戻って来てからでも、会えるやろし」

 話はしたい。でも、今の飛鳥には(誰からも頼まれていないが)することがある。こちらの方が優先だ。

 それに、もしかすれば飛鳥の足を止めるために呼ばれて来たのかも知れない。

 飛鳥はアロース・コルトンをうながして、館を出た。

「行っても、家にはいないと思うけどなぁ」

 本当にそう思っているのか、飛鳥を館へ戻すためにそう言っているのか。

 アロース・コルトンは歩きながら、そんなことを口にした。

「飛鳥は何で、最初にあいつの家へ行こうと思たんや」

「あいつ、あの魔法道具を使ってその力を試したやん。あれで自信をつけたと思うねん。もう怖いもんはないんやし、自分の家でくつろいでんのとちゃうかなー、と」

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