私たち、別れましょう!
15歳になった私。
ヒメル王国の辺境地に住むネプトゥーヌス男爵家の一人娘エリーサ・ネプトゥーヌスは満点の青空の下。
花々に囲まれ優雅にお茶を飲んでいた。
あぁなんていい日なのだろうか。新しい人生を始める日には最良の日に違いないわ。
私はきっと輝かしいであろう未来に胸を踊らせ目の前の青年をみつめた。
彼は同じ歳で幼馴染兼私の恋人ーーーイラーリオ・プルートーン
緑色の髪、くっきり二重の赤目の彼も私を見つめている。
はぁ。顔はいいのよね、顔は
「ねぇ、リオ、話があるの。」
私は感情を表に出さないよう気をつけながらにこりと彼に笑いかけた。
「なんだい?エリー、可愛いエリーの願いなら何でも聞くよ。」
対するリオもニコリとテンプレートの笑顔を貼り付けている。
はぁ。この笑顔にみんな騙されるのよね。
リオはいつから腹黒くなったのかしら。幼馴染のはずなのにわからないわ。
「本当は言おうかすごく悩んだのだけれど。」
一応悩んだそぶりを見せるが、本当は微塵も悩んでいない。
「そんなに改まってどうしたの?お互い3歳の頃からの仲じゃないか。気にしないで言ってごらん?」
彼は私の手を取りぎゅっと握った
あぁ。きっとこれがリオの温もりを感じる最後の機会ね。
少しほんの少しだけ元のエリーサの心が締め付けられる気がした。
「私たち。お別れしましょう!!!」
そう告げた私は握られた手をそっと外し満面の笑みで彼を見つめる。
きっと効果音がつくとしたら「ぱぁああああ」と輝くような笑みとかそんなところだ。
私の恋人リオは10歳の時、国の神託によって勇者に選ばれた。勇者に選ばれた者は16歳になると同時に魔王を倒しに行くことが決まっている。
そして私は、16歳の時に聖女の力が開花される予定のヒロインなのだがーー
なぜかこの体に憑依した10歳の時にはもう聖女の力が備わっていた。
そう、ここは勇者と聖女の恋物語「勇敢な勇者は聖女を愛する」という小説の中の世界
24歳独身、彼氏と別れたばかりで1人でやけ酒を飲みながらポテチビッグサイズ(コンソメパンチ)に手を伸ばしていた私はいつの間にか眠っていて、気付いたら大好きだった小説の中のヒロインに転生していた。
がやはり小説は小説だけで終わるべきで 憑依するものではないと悟った。
イラーリオが勇者に選ばれたあと、勇者を強くするためにと国が手配した裏組織から恋人だからと狙われ続ける日々ーー
まぁ勇者を強くするためなので本当に殺される危険もないが、奴らは所かまわず誘拐しにくる。私が気持ちよく寝ている時、外で食事をしている時、結末が気になる本を読んでいる時、ちなみに最近は堂々と玄関から誘拐しにくる始末。
「お嬢さん!今日も時間大丈夫?ちょっと誘拐するね!」と顔は強面だが陽気なおじちゃんがやってくるのだ。
勇者である本人にはばれてはいけないので口外してはいないが、本当にいい加減にしてほしい・・・
もちろん国からの伝達で事情を知っているお父様は何も言わない。というかお父様に関しては私が死のうが興味もないだろう。
私が攫われると毎回勇者であるリオが助けてくれるが、私は知っている。彼は勇者であるため女性にすこぶるモテる。そして裏で何人も侍らせている。
この小説のシナリオでは私たちが18歳になった時に私は人生で一番の命の危機にさらされ生死をさまよう、その際に私の本当の大切さに気付いたイラーリオが改心して死の淵から生還したエリーサを溺愛するようになるというストーリーだ。
まぁつまり彼はそれまで改心しない。顔はいいしとりあえずシナリオ通りに大人しくしておこうと私は考えていた昨日まではーーーーー
そう、事が起こったのは今日の朝、私はこの世界で聞くはずのない音で目を覚ました。
「ピッピッピッピッピッピッ」
私は、反射的に「仕事!!」と飛び起きたが、ぱっと見渡した景色はある意味見慣れた異世界、エリーサの部屋のままであった。
そうこの音はなんと!24歳だった私のiP◯oneのアラーム音だったのだ!
この世界にいきなりスマホが現れたことに激しく動揺したがしばらくして正気を取り戻した私は考えた。
当たり前ながら私が読んだ小説にスマホは出てこなかった。これは完全にシナリオを外れている。そもそも私が憑依した段階でこの小説はシナリオ通りに行かなくなったのでは?と
最初は10歳の頃までこの体にいた主のことも考えて大人しくしておこうと思ったがもう我慢する必要はないのではないかと。
そうなれば、なぜ好きでもない浮気男とずっと付き合う必要があるのか、18歳で瀕死の状態になるまで一緒にいるなど時間の無駄だ!という結論に至ったのだ。
もうシナリオなんて知ったことか!と思った私は意気揚々とスマホに手を伸ばした。慣れた手つきでロックを解除すると充電は満タン。検索機能もばっちり使える。ただSNSを投稿しようとすると文字化けし、電話はつながらなかった。どうやら外部との連携はとれないらしい。
元々スマホ人間であった私にとって検索機能が使えるだけでも飛び跳ねて野山を駆け回れるほど嬉しいことだった。
原作を気にせずに自由に生きる!と決めたなら、早速今日のリオとのお茶会で別れを告げよう!善は急げ!と行動した結果が今の状況である-----
目の前のリオは私の言葉が理解できなかったのか、脳が処理中なのかテンプレ笑顔を張り付けたまま静止している。ずっと静止しているので私は手元の紅茶を飲み干してしまいそうだ。
「あの。リオ?そろそろいい?もう紅茶なくなるしやりたいことがあるから帰るわね!さようなら!今ままでありがとう!!!あっ勇者頑張ってね!!応援してるわ!さようなら!」
あっ、別れるのが嬉しいすぎてさようならって2回言った気がするわ。
変わらず固まったままの顔を見つめつらつらと言葉を並べた私は、椅子から立ち上がり庭を後にした。私が家の中に入ろうと玄関に向かっていた時、背後から引き留めようとする声が聞こえた気がするがきっと気のせいだろう。
さぁせっかくなんだもの。当分はこの世界を思う存分楽しんでお金を貯めてスローライフを送りたいわ!!それこそストレスフリーな私だけの生活よ!!
そうして、私はこの世界を楽しむことを決めた。
がーー。このエリーサというヒロインがとんでもないフラグ製造機だということをまだ私は知らないのであった。
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