第三章「ヤブサメサバイバル」1
<登場人物>
・弓使いマモル
魔王に異世界転移させられた男。
しかし、魔王の仲間として召喚されたわけではないので、自由の身だ。
弓使いと防御の素質を持っている。
・冒険者レイヴン
謎の紫髪の女性。
何を考えているかわからないが、マモルにいろいろ教えてくれる。
戦闘スタイル的に、おそらく弓使いと防御の素質を持っている。
・剣士セリア
魔鋭四将に殺された兄の復讐を誓う金髪の美女。
・刃の魔鋭セキサイ
魔鋭四将の1人、銀髪の魔物。
剣への探究心が高く、人間と魔物の剣術道場を開いている。
<ヤブサメサバイバルのルール>
・競技時間は夜明けから日暮れまで。
・場所は広さ縦横100メートルの馬上試合用闘技場で行う。
・競技者は馬に乗り、夜明けと同時にそれぞれの門から入場する。
・場内のふちには幅25メートル深さ2メートルの空堀が掘られており、その先にある複数の的を中央の島から射抜き得点を競う。
・他の競技者を射るなどの妨害も認められており、落馬した者は失格となる。
・順位は日暮れ時点、馬上にいる者の中で得点数によって決められる。
猶予は30日だ。
馬の調達と教育者はセリアがなんとか手配し、マモルは馬に乗ったことがなかったため、ほとんどの時間を馬術の練習に費やすことになった。
しかし、比較的に感がいいマモルは馬を操る上達が早く、弓使いの素質によって馬上弓の感覚もすぐに物にすることができた。
ちなみに残盾が一睡しなければ、回復しないということもこの期間で判明している。
大会前日の宿にて、セリアはマモルに忠告した。
「参加人数は13名。どんな者達が出場してくるか分からない。用心して」
「誰であろうと先に射抜けばいい話だろう?」
この競技大会は定期で行われている。
当然2回目3回目の出場者がおり、その点マモルには不利だろう。
しかし、マモルにも有利な点があった。
それは防御の素質、残盾で矢の衝撃を2回無効化できることだ。
マモルはそう考えながら、門の前で馬に乗り、日の出を待っていた。
そして、日の出と同時に門は開かれ、見物客の歓声が響き渡る。
怒涛の勢いで四方八方それぞれの門から飛び出してくる出場者、もちろんそれにマモルも含まれている。
まずは場の雰囲気を探ろうと警戒したマモルだったが、洗礼を浴びせかけるように目の前に立ちはだかったのは、水色の小さな悪鬼騎手だった。
「俺は自由の悪鬼ブモン。貴様が最初の獲物だ!」
威勢のいい様子で挑発するブモン。
(こんな雑魚にかまっている暇はない)
マモルはそう思い、ブモンに向かって矢を放た。
しかし、ブモンは馬上で飛び上がり、矢を軽々回避する。
「盗賊と速度の素質。両方を持つ俺には勝てねえぜ!」
ブモンはそう空中で言い終え、華麗に馬上に着地する。
そしてマモルの肩には、すでに一本の矢が当たっており、残盾で無効化され弾け飛んだ。
「チィッ、残盾か」
(まずいな。早くも残盾を1つ失った)
マモルは焦った。
ブモンは素早い馬上跳躍で矢を回避する。
そしてその反撃によって相手を仕留める戦法を得意としているようだ。
(攻めれば負ける。何か考えなければ、とりあえず今は時間を稼ぐしかないだろう)
マモルはそう思い、他の競技者も警戒しつつ、ブモンと一定の距離を保って走行する。
しかし、様子見というマモルの作戦を察すると、今度はブモンから矢を射た。
だが、マモルは見事にその矢に合わせて矢を射、それを撃ち落とす。
まさに弓使いの素質の恩恵だ。
「おかしいな。それは弓使いの素質ある者だけがなせる芸当。弓使いと防御。素質を2つ。お前は世界に恵まれすぎている・・・」
ブモンはそう言い首を傾げながらも、マモルに注意を払っている。
素質は希少品らしく。ブモンの口ぶりから、どうやら2つ持っている者は稀らしい。
「まさかお前もイレギュラーじゃないだろうな?」
ブモンの言葉にマモルの心臓は鳴った。
魔王がこの世界に送り込んだイレギュラーはマモル以外にも存在しているのだ。
「まさか、お前も・・・」
「そうだ。肌の色見りゃわかるだろ?」
確かにマモルがトウフ基地で戦った悪鬼は橙色の肌をしていた。
どうやらブモンの水色の肌は、この世界の者ではないことを示唆しているようだ。
「だがこの場合、俺の方が有利だ。速度の素質は<加速>。今はお前の射る矢に俺の矢は撃ち落とされるが、やがてそれも追いつかなくなる・・・」
ブモンはそう言いながら弓を引き絞る。
「残念だったな!」
ブモンはニヤリと笑い、マモルに狙いを定めた。
しかしふとマモルは、それとは別な何かの予感に気を引かれ、その方へ目を向ける。
その方向では、凛々しい表情で馬を駆る紫髪の女性の姿があった。
(あいつは・・・)
マモルの視線を感じてか、その女性も視線を合わせる。
(手加減はしないよ)
(望むところだ)
マモルは思いたった。
魔鋭四将よりも先に倒さなければならない相手がいると。
そして、そのためにはこんな所で手こずっているわけにもいかないことに。
マモルは矢を逆手に持ち、ブモンに向けて馬を駆り出した。
「何!?」
(残り1つの残盾もくれてやる)
マモルの捨て身の突進は、ブモンの意表を突き、慌てたブモンの放った矢はマモルの顔の横を通り抜けていった。
「くたばれ」
マモルは逆手に持った矢を振り上げ、馬を横につけ、ブモンの鎖骨目掛けて力一杯振り下ろした。
「ギャッ!」
ブモンは矢を突き立てられ、苦痛と衝撃によって馬から転げ落ちていく。
「ひい!痛えよ!」
落馬したブモンは、馬に踏まれる危険を避けるため、場内のふちの空堀に転がり込んで、逃げていった。
ブモンは失格となり、マモルは勝利した。
そして、マモルはこの競技大会のレベルの高さに身を引き締めながら、的に向かって2発の矢を射て、辺りを警戒する。
(パッと見て、まだ残り9人か)




