最終章「転移者(イレギュラー)」ラスト
「思えば、魔王としての知識のある私の方が有利な戦いだったな」
レイヴンはそう言って次の転矢に移る。
片方の矢に対応させておいて、手の届かない空に放つ転矢。
それにフェイントを加えれば、ほぼ対応不可能となり、レイヴンは確定で背後を取ることができるのだ。
そこから影矢という必中の矢の流れは、ほぼ必勝型と言える。
レイヴンはマモルに対し、数本のフェイントの矢をあえて打ち返させ、転矢を放った。
マモルの後方に放たれた転矢がレイヴンとなり、レイヴンが通常の矢と影矢を放とうとした瞬間、すでにマモルがレイヴンの方を向いて矢を放っていた。
矢の射線状のどこでレイヴンが出現するかは分からない。
つまり、マモルが瞬間移動位置を予測して、振り返り様にレイヴンを正確に射るのは不可能だった。
しかし、正確さを必要としない矢もある。
レイヴンは脳内をつんざくような耳障りな音に耐えきれず一瞬静止してしまった。
「うッ・・・!?」
マモルが放った矢は<声矢文>
それに渾身の大声を乗せて、スタングレネードのように使ったのである。
そして、2の矢でレイヴンの残盾を容易に破壊した。
「馬鹿な・・・!?」
「これでお互い後がないぜ」
残盾がなくなり、生身となった状態での戦い。
次の矢の被矢は確実に勝敗を分けることになる。
間髪入れずマモルが周囲に矢を乱れ射る。
魔星・金というノザワとカラクの合作。
それはキリングハートの金色の爪を素材にしている。
マモルはこの弓を手に取った瞬間に、ノザワとカラクの仕掛けを看破していたのだ。
乱れ射た方向に出現する、マモルを模した金色の残像。
それらはマモルの<分体>であり、五感を共有している。
そして、レイヴンの放琉もただの美しい弓ではない。
琉とは宝玉であり、その弓も完璧な機能美を追求していた。
相応しい者が使えば、紛れもない必中の弓となる。
人には理解できない自然界で生まれた機能、その原理を知っているのは神しかいないが、とにかく必中なのである。
この瞬間、レイヴンも相応しい者になろうとしていた。
弓の神へと・・・!
「さらばだ。マモル・・・!」
必中の弓を引くレイヴン。
そして、複数の分体と五感を共有するマモル。
レイヴンは1矢に全神経を集中し、全身全霊を浴びせかけるように放った。
次の矢はおそらく放てない。
残盾をなくした今、防御の素質を捨て去り、放琉の性能を全面に押し出した攻撃特化の行動だった。
輝く矢がマモル到達する・・・
しかし、マモルはどこまでも防御である。
残盾をなくしても、弓使いと防御の素質の融合、闘矢返しがあり、防御の素質を上手く使えるのはマモルであった。
魔星・金の隠し性能も防御に使うことができる。
マモルは矢が皮膚に到達しても、全分体の五感の集中を止めなかった。
やがて、筋肉、胸骨を粉砕され、やっと身体は動いてくれる。
激痛を堪え、歯を食いしばりながら、どうにか身体を捻り、絶命を免れた。
そして、必死に意識を保ったまま、倒れ込む前に金色の1矢を放つ・・・
数時間後、マモルは目覚めた。
生きていたのが不思議でならない。
何かの加護が働いたのだろうか?
そして、近くにレイヴンの姿はない。
(俺は負けたのか・・・?)
マモルは思った。
自分が勝ったのであれば、レイヴンの遺体が残るのが自然である。
しかしレイヴンは元魔王であり、消滅したりすることは考えられないだろうか?
(寂しくはあるが・・・)
しかし今のマモルにとって勝敗など、どうでもよいことだった。
(約束は果たせた・・・)
この世界に送り込んでくれたレイヴンの願いを叶えること、そのための戦いだったのだ。
(これからどうしようか・・・)
マモルは立ち上がる。
(この世界の平和のために尽くすのも悪くないか・・・)
人間と魔物、その統治者がいなくなり、戦闘狂いのイレギュラー達が世界を牛耳ることになる。
レイヴンがぐちゃぐちゃにした世界を元に戻してやるのも悪くないとマモルは思っていた。
そのために仲間を集めなければならない。
自由の悪鬼ブモン、深淵弓のアンソニー、忍者ヨモギザワ、剣聖ムネヒロ、騎士王クロス、武器職人ノザワ、武器研究の世界的権威カラク、そして新しく生まれ道徳を説かれた脚の魔鋭ランナーサード。
最強であり混沌としたこの9名で構成されるマモル傭兵団が、世界を救うのはまた別のお話だ・・・
長い時間、お付き合い頂きありがとうございました。
「異世界転移で防御型弓使いを選ぶぜ」はこれにて完結とさせていただきます。
僭越ながら、正直な評価ポイント、そして思うところがあれば感想を書いてくださると、私も嬉しいです。
読み返したくなるかもしれないのでブックマークもオススメです。
現在、新連載<サンダーストーム>を公開中ですので、そちらもぜひ読んでいただきたく思います。
また、過去作も是非読んでいただきたいです。




