宇宙工場サブファイロット 06章 コモンプログラム5
スペアは再びパネルを操作し、パドは新たに表示された細かい文字に顔を近づけ、目を細めて読んでみた。
「これか? 『プログラム名:stage-1 状態:実行終了 プログラム削除済み』 削除済みって?」
「言葉通り。消えちゃってるんだ。」
ナットが不審そうにスペアを振り返る。
「ロボットの一番重要なコモンプログラムが、一部とはいえ消えちゃってるの? 誰が消したの?」
「削除者の名前がどうしても出てこないんだ。プログラムが消えちゃってるから、何のためのプログラムで、どういう風に使われたのか検討もつかない。ただ、削除時間だけは突き止めた。この日時だろうって思う。」
スペアは、数字が羅列されている別の画面を呼び出した。
「ここさ。日時はちょうど、ステーションのロボットたちが全部誤作動を起こして、暴れている真っ最中だな。」
首をゆらゆらと振っていたボルトが動きを止め、ゆっくりと尋ねた。
「真っ最中っていっても、どのあたりだ? ロボットは長い間暴れていたぞ。私たち、ずいぶん長い間ロボットの中に隠れていた。」
スペアはしばらく考え込んでいたが、
「そうだな。ここに通信記録が残っている。俺が、お前たちにロボット間通信で通信した時のだ。」
と、文字列のひとつを指さした。
「製造室で誰の声も聞こえなくなって、みんなは無事かなって不安に思っていた時、スペアの通信があったんだよね。」
ナットが仲間を見回すと、ボルトも続けて低く言う。
「それで、ロボットはまだ工場の破壊に取りかかっていなかった。突然すごい破壊の音が始まって、お前の声がよく聞き取れなくなって、内部スピーカに耳をくっつけたのを覚えている。」
二人の話を聞いたスペアは目を瞬いて、
「プログラムの削除時間は、最初の通信記録の少し後になるから、ちょうどロボットが仲間たちを宇宙船に詰め終わって宇宙に放り出して、工場やデータセンターの破壊を始めた頃になるじゃないかな。」
「データセンターの破壊。」
パドが突然低く言った。みんなが彼を振り返ると、パドは無意識に短いあごひげを撫でながら、鋭く続けた。
「つまり、データを壊し始めたんだな。ナット、お前の持っていたデータチップのように。」
彼は厳しい顔で続けた。
「ロボットは、ステージ2とかいうプログラムを動かす。すると、データだの工場の施設だのを破壊するんじゃないのか? ステージ1がその前段階だとしたら、それは多分ステーションの人間の追放を意味するんだろう。俺にはそう、思えるが。」
ロボットについて何も知らないはずのパドの指摘に、三人は息をのんだ。
「そして、人間の追放が完了すれば、プログラムは削除される・・・。」
茫然自失で、スペアも低くつぶやく。
「ステージ1の内容は残っていないが、もし、おっさんの言うとおりだとしたら――、これはバグじゃない。人為的なものってことに・・・」
不意に、副会議室の空気が冷たくなったように感じ、ナットは身を震わせた。
「それは、違うと思うよ。そんな事、ある訳がないじゃない。」
次回更新は8月中旬の予定です。




