40《16》聖女はループを終わらせたい
「そう……なんだ……」
「まあ、確かに……それが可能だったら3年間も、こんなループに居続けないよな」
アレンの表情からは感情の変化を感じ取れなかったけれど、リヴェラはエレンの目から見ても、とても残念そうだった。
エレンは罪悪感に襲われ……でも、期待したまま門まで行ってショックを受けるよりはましなはず、と思い直す。やはり、伝えないという選択肢を選ぶことは、エレンにはできない。
「あの、でも、きっと他に……いい方法がありますよ。今は、ループを攻略しようとしてる人が4人もいるんだし!」
エレンが居たたまれない気持ちでそう言うと、リヴェラが「うん、そうだね」と応えてくれる。
するとアレンが苦笑しながら言った。
「エレンちゃんには悪いが、それでも試してくる。本当に国外に出られないかどうか。
……ちゃんとこの目で見て確かめないと、たぶんいつまでも頭に残るだろうから。無駄だと思うだろうが……必要な工程と諦めてくれ」
「はい、もちろんです。どぞどぞ!」
「うん、いってらっしゃい」
エレンとイアンがそう答えると、リヴェラが「アレン、私も連れてって」と言ったので、アレンはリヴェラを抱えて窓から出て行った。
屋根の上を駆けては飛んで、あっという間に見えなくなる。2人が消えた窓の外を見つめながら、イアンが呟く。
「兄さんが、これまでのループの中で……どんなに説得しても絶対に護衛を辞めなかった理由を……今、初めて知りました」
エレンはなんて答えようか考えあぐねる。『両思いでしたね』とか、軽々しく言うのはなんとなく気がとがめた。命がかかっていても、側にいるのを選択するなんて……もしイアンがそんなことしたら、嫌だな、とエレンは思う。
結局エレンは話を変えた。
「……ループ、終わらせたいですね、イアン様」
「ええ。……今回は少し、関わり過ぎました。これでリセットされたら……しばらく立ち直れないな……」
イアンのそんな言葉に、エレンも苦笑いだ。
「そうですね。私も無理です……」
なんせ、とても濃い2日間だったから。
喜怒哀楽を沢山詰め込んで、長い時間を共有した。
エレンはもう、2人のことを大好きになっていたから、もしも知らない人からのやり直しになったら……
……そんなの、考えるのも嫌だ。
アレンとリヴェラが国外に出られないことを確認して戻ってくると、リヴェラがおもむろに言った。
「今日は……レスター王子に会って話してみようと思う。
なぜでっち上げた理由で断罪されたのか……前回のループの時はわからなかったし。
そもそも婚約者なのに……私、あいつのことが、いまいちよくわからないのよね……」
そんなリヴェラにエレンが言う。
「リヴェラさん、私も一緒に行っていいですか?」
「エレンちゃんが? いいけど……どうして?」
「だって……アレンさんは連れて行けないですよね? 王子が殺したいほど憎んでるかもしれない人だし。それに、イアン様と行くのも……あらぬ誤解を招きそうじゃないですか?」
「あはは、確かに」
エレンの想像に、リヴェラが苦笑する。
エレンは続けた。
「かといってリヴェラさんが1人で行くのは心配だし……それに私も見ておきたいんです。3日目を終わらせる為に……王子の人となりを知りたいです……そして一緒に立ち向かいたい」
「……うん、一緒に来て、エレンちゃん」
リヴェラが微笑んだ。
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王宮に遣いを出して、訪問時間を決める。
その間にリヴェラとエレンは王宮に行く為に、フォーマルな装いになった。
「俺とイアンは近くで待ってる。なにかあれば大声で叫べ。風が音を拾ったら、いつでも駆けつける」
アレンがリヴェラにそう話す。
エレンは、イアンが時々遠くの危険を察知するのは、風で危険な音を拾ってるからだったんだなあと知って、ほほーとなった。
「うん、まあそれは大丈夫だと思う。ただ……いつもみたいにそうとう待ちぼうけくらうと思うから、暖かいところで待ってて」
「ああ。……でも、待つのもほどほどにしておけ」
そんな会話をしてリヴェラが「わかった」と言った。エレンも心配そうなイアンと話す。
「じゃあいってきますね、イアン様」
「ええ、くれぐれも気をつけて」
でもイアンは考え直して、口元に笑みを浮かべると、楽しい言葉に言い替えた。
「とても綺麗ですよ、エレンさん。
……今度、デートしませんか? オシャレして、ミュージカル観て、ご飯を食べて……みたいなやつ」
「はい、喜んで。とっても楽しみにしてますね」
イアンの素敵な提案に、エレンははにかんで笑った。もし今が2人きりだったら、嬉しくて抱きついてたかもしれないけれど、人前だからしなかった。




