9.山道
暴風警報は宛にならない(確信)
スローネの家を後にした私はしばらく走りつづけ、ここが昨日(?)までいた森でないことを悟った。ここは森と言われれば森だとも言えるが、緩やかに下り坂(人から見れば上り坂)になっている。地面も未舗装のやや荒れたものとなっており、どちらかというと山であることがわかった。ここで出現するモンスターもわかったものじゃない。幸い名前と特徴、ランクは判るのでそれで判断するとしよう。ここでレベルを上げられるようならさっさとワルト=ガになるという考えもあるだろう。でも糞犬の時みたいな無茶だけはしない。あぁみえてCランクの耐久力は凄まじく、私など残機がいくつあっても足りない。ワルト=ガはCランクのモンスターのため、なっておいて損はないだろう。他の進化先よりは。
ちなみに今のステータスがこれ。
ドゥクサー(ランクE)(現在、進化可能です。)
LV15/50
vit34/34
atk24(0)
dif29(2)
spd24(1)
ma33(0)
mp30/30(0)
魔法 ダークⅠ
スキル ペイルドレイン
生涯スキル 急所Ⅰ
そして解放している進化先はポイズンゲノムだけ。他の候補はワルト=ガ、スキムドラゴン、亀とスパルトイだ。後者二つは死んでもなる気はないんで。はい。
〉〈
気を引き締めて森へと踏みいると、新しいモンスターに出会った。ソイツはこの森に隠れるのに適した深い緑の体色にギザギザと刃が何本もついているモン○ンのブレ○ズブ○イドを思わせる鎌。そして虫であることの象徴、6本足。間違いない。蟷螂だ。奴の解説をしてもらうことにする。
ブレードマンティス(ランクE)
非常に鋭く切り裂くことに重点を置いた腕の鎌で獲物を切り裂く。その鋭さはDランクにとっても脅威である。
ヤバそうな鎌を持ってんなこいつは。しかしこいつはその鎌だけが主力らしい。しかもその鎌はかなりの重量だとわかる。なんでわかるかって?この蟷螂、動きがおっせえの。獲物が見つかってないのが理由かもしれないけど、のっそのっそと足を運んでるだけ。流石に蛹時代の私よりは速いけど……ね。
蟷螂は途端に動くのを止めた。こちらに気づいたかと思ったが、どうやら違うようだ。奴の向く先にいたのは真っ白の毛皮に覆われた可愛らしいネズミだった。一応解説を挟む。
クヌギネズミ(ランクF)
木の実が主食のモンスター。その愛くるしさは自然界においては悲しくも無力である。
……戦闘に不向きなタイプのモンスターだな。蛹時代、進化先をゲドウとネズミで悩んでいたが、この様子だとゲドウにして正解だった可能性が高い。どうやらあのネズミ、蟷螂に気づいてないみたいだからな。あの蟷螂の色はやはり擬態用だったか。素早さが遅いぶん、あの鎌を活かす方法は敵に近づいてもらうしかない。
ザシャッ!!!
そんな鋭い音がしたかと思えば、蟷螂はネズミを仕留めていた。ネズミの方は即死だ。血がネズミの横腹の切れ目から吹き出している。これは腹と一緒に頸動脈やられたな。あの鎌はおそらく切り裂きかたによっては複数の血管を同時に殺ることも可能かもしれない。奴は鎌をステーキを掴むフォークのようにしてネズミの肉を掴み、顔をうずめて肉を貪り始めた。あれ、蟷螂ってこんな食い方してたっけ?あれー………
そんなことはどうでもよかった。私は奴の体に唯一の魔法、ダークを撃ち込んでやる。その黒い玉は奴の体にクリーンヒットし、奴はぐわんぐわんと鎌を振り回しながら食べるのをやめて暴れている。なんとシュールな。
「キシェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
蟷螂は私に気づいて威嚇の声をあげる。私は怯まない。こいつよりヤバイのと既に対峙してるんだからな(震え)
……でも怖い。あの鎌でもし斬られたらやっぱり一撃?一撃だよね。あの蟷螂の鎌だけで30㎝くらいある。そしてDランクすら脅威となる鎌の鋭さ……考えるのはやめよう。奴がこちらへ近づいてきた。私はやはりダークで攻撃しつつ、距離をとっていく。奴は時々だが魔法攻撃を鎌の人凪ぎで相殺しているように見える。早めに決着をつけるか。
……意外と早く決着はついたと思う。奴は既に虫の息だ。こちらがダークを撃ち続け、奴の鎌を吹き飛ばすに至った。そうなればほぼこちらの勝ちである。奴は片方だけとはいえ、主力の鎌がスポーンとなくなったことに関して戸惑い、あたふたし、時に逃げ出そうとまでしていた。まぁ流石に逃げず、残った鎌でこちらへと向かってきた。鎌が相当の重量であったのか動きは先程より早かった。とはいえ私に捌けない速さではなかったので再びダークを撃ち込み、戦意を潰してやった。そして今の状況だ。ここで私は思いっきりタックルをくり出して奴の腹にお見舞いしてやった。その一撃で奴は動かなくなった。
〈Expを65獲得しました。レベルが16になりました。〉闇属性能力が規定値を越えたため、進化先を追加しました。まだ解放されていません。
闇属性能力……初めて聞いた。予想するに、私の戦闘スタイルを読み取っているのか。今の戦法ゲス過ぎたもんな。悶絶した相手に向かってタックル………気にするのはやめよう。とりあえずステータスと進化先を見直そう。
ドゥクサー(ランクE)(現在、進化可能です。)
LV16/50
vit35/37
atk25(0)
dif32(2)
spd25(1)
ma36(0)
mp18/32(0)
ポイズンゲノム(ランクD)Ma↑Speed↓
体質が液状に近づいたモンスター。爆弾状の毒玉を吐き出して獲物を仕留める。沼地に生息する。
スキムドラゴン(ランクD)Defense↑Vit↓
飛ぶことに重点を置いた細身のドラゴン。多彩な魔法を使いこなすが生命力が貧弱。
妖兜亀(ランクD)Defense↑Speed↓
玄武門の呪いにより圧倒的な防御力を得た亀。しかしその重さゆえ、体はほとんど動かない。
スパルトイ(ランクD)Attack↑Vit↓
死者を食らい魂を無下にする動く人間の死体。噛みついたり殴ったりと物理攻撃が得意。
ワルト=ガ(ランクC)Attack↑Defense↓
鎌を持った小さき死神。鎌を振るう物理攻撃のみならず闇属性の魔法を多用する。
インサーニア(ランクC)Attack↑Ma↓
対象に禍をもたらす魔眼をもつ亜人魔族。包帯や癪気をもつ右腕で攻撃をする。
やっべー……インサーニアが追加されてやがる。亜人魔族ってことは人間にはもっとも近いという考えでいいのかな?説明欄だけで凄い狂気を感じるけど……進化条件も見ておくか。
インサーニア LV20以上 闇属性能力規定値以上.Attack実数値29以上
成程わからん。まぁ思考はワルト=ガでいいかもな。インサーニアの説明欄が禍々しすぎる。まぁ名前からしてろくでもないのはわかってたけどさ。
属性能力が進化に影響するという説明はしてませんでしたね。まだ暫くドゥクサーのままかもしれないです。