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氷魔法師、氷浦真の日常  作者:
三好玲央奈(イギリス名:アリス・フィリア)
20/46

三好の出生

勝負に決着が着いたところで、僕は三好の魔法について詳しく説明してほしいと頼んだ。

あのまま「花火」という言葉だけで終わらせても良かったが、あんなしょぼいものしか出せないというわけではないだろうと思い、桜子にも助っ人をお願いしたところで三好は「しっ、仕方ないわね。いいわ、教えてあげるわっ」と承諾してくれた。


彼女にとって、僕と桜子にどういう違いがあるのか全く理解できないけれど…。


「私の魔法は簡単に言えば、本当に花火って言った方が分かりやすいのよ?それにこれ…緊急時以外での

 使用が禁止されているから、あまり使うと怒られて…」

「つまりその魔法を緊急時以外に使って、派手にやらかしちゃったと?」

「ちっ、違うわよ!夜中遅くに買い物してたら、変な奴らにちょっかいかけられてつい使っちゃったって

 だけで…わっ、私は悪くないわよ!」


 冗談で言ったつもりが、三好はその冗談を本気に思ってしまったらしい。

 動揺して聞いてもいないことをぺらぺら喋り、最後には彼女らしく開き直った。

 

 「なるほど。ご丁寧に教えてくれてありがとう」

 「何よその、どうでもいいっていうような顔はっ!?」

 「別にそんなこと思ってないよ。被害妄想が激しすぎでしょ?」

 「くっ…やっぱりむかつくわね。真、今度は本気で勝負…「アリスっ」


 「それはダメだって…言ったわよね?」

 「くっ、胡桃。ごっ…ごめんなさい」

 

 何度この光景を見ても、部長というものは怖い存在なのだな。

 やっぱりどの学校でも、同じなのだと僕はつくづく思うのだった。

 

 ん、待てよ?

 「ねぇ、三好さん」

 「…なによ?」

  

 僕はある疑問が浮かんだ。それを彼女に確かめるために尋ねてみる。

 この気を逃したら聞けないかもしれないから…。


 「緊急時以外で使えない魔法を持ってるってことは…あんた、魔法師一族なんじゃないの?」

 「っ!?」

 

 イギリス人の母親と日本人の父親との間に生まれたハーフ。

 一般では普通に国際結婚で済まされるかもしれないが、魔法師の世界では…特に魔法師一族の世界

 では、政略結婚が存在する。木野原崇司が力輝を天龍寺家の子孫だということで、親の命令で結婚

 させようとした時みたいに―――。

 

 だが、これを思い出すのはあまりにも辛い。僕はあの時、何もできなかったから…。


 「魔法師でのハーフってあまり見ないから勘違いだったら申し訳ないけど、今の話を聞いている限り

 僕にはそうとしか考えられないんだ。正直に答えてよ?あんたはいったい何者なの?」

 「まっ、真さん…これ以上は」

 

 「いいのよ、桜子」

 「アリスさん?」

 桜子はどうやら知っているようで、彼女に問い詰める僕を止めようとした。

 だが三好は先程の元気がまるで嘘のような小さな声で、桜子に言う。心配そうに三好を見る桜子。


 そして、三好は僕の目を真っ直ぐに見て口を開く。

 「そうよ。私は…魔法師一族の血を半分受け継いでいるわ。でも…欠陥品よ」

 

 三好玲央奈。またの名をアリス・フィリアは、イギリス人の母親が日本名で「爆轟ばくごう」を

 持つ魔法師一族で、父親はレベルは低いながらも火の魔法を扱えたという。


 「母はあまりその魔法を扱えることが出来ず、祖父母達に出来損ないだと言われながらも必死で生きて

 いた。20歳の頃、父がイギリスに旅行で来ていて偶然にもそこで母と知り合ったことがきっかけで

 二人は意気投合して連絡を取り合うようになった。当時の連絡手段は手紙だったけど、何も言われなかったらしくて堂々とやりとりをしていたらしいわ」


 「それで、どうなったの?」

 「駆け落ちしたわ。さすがに日本人とイギリス人ということで猛反対を受けたと。出来損ないのくせに

 私達の名に泥を塗るつもりか!ってね」

 

 「ひどい…。実の娘さんだというのに」

 桜子は目に涙を浮かべた。止めたわりには、あまりそこまで深い事情を知らなかったのだろう。

 事情は違えども、僕もその気持ちが分からないわけではない。魔法師一族に生まれたのに魔法師の素

 質がないと言われ、捨てられた人間を知っているから。そして恨まれて僕自身も…。


 「母は、幼少期の頃に身体を壊してしまって5歳の頃に天国へと旅立ってしまい、私は父と祖母に

 育てられた。中学三年に入ったある日、突然家に知らない黒服の男達がやってきたの」

 「黒服?それって…」

 「イギリスにある母親の家につかえている秘書だとか言ってたわね。難しいこと話しててあまり

 よく覚えていないけど…」


 

 『貴方のお母様の兄にあたるレオ様が交通事故に遭われ、お亡くなりになられました』

 『それで…私になにか?』

 『フィリア家ご当主様…つまり貴方のお祖父様は、次期当主候補に貴方も加えると申し上げたので

 ございます』

 『えっ?そんな…どうして?嫌われてたんじゃなかったの?出来損ないだって言われてたって散々

 言われてたのに』

 『フィリア家はそこまで落ちぶれたということでございます』

 『っ!?』


 

 「母の兄があまりにも出来すぎた人だった。魔法師の才能も人柄も…何もかも完璧で、母に対しても

 表向きは嫌っているように見せていたけど、本当は誰よりも母の事を大切に想っていたと言っていた

 わ」

 「そうだったんですね」

 「でも、結局は親の言うことに従って自分の身を守ってるんじゃ…良い兄とは言えないね」

 

 「そうね、私もそう思うわ」

 ここで僕と三好の意見が一致した。

 

 「フィリア家当主は最初の頃、私を候補に入れることに断固反対していた。でも、周りの説得でなんと

 か承諾を得て秘書を私のところへと送ったというわけ」

 「一般学校に通っていた口ぶりだったけど、あんたは魔法を使えてたの?」

 「魔法師の素質は検査で知っていたわ。でも、父の指導がかなり厳しかったから他の人間には絶対に

 見せるなって言われてた。だから、本気で魔法を使ったことなんて一度もなかったのよ」

 

 「ふーん~。それで星羅に来たってわけ?」

 「そうよ。これ以上、祖母達に迷惑かけたくなかったから…私は星羅に行くと決めた。そしていつか

 イギリスに行くつもりよ」


 「アリスさん…なんて家族想いなんでしょう」

 とうとう桜子が号泣してしまった。僕はそこまでじゃなかったけど。


 「事情は分かったよ。つまり使用する機会がなかったから、暴走しがちなんだね?」

 「まぁ、そういうことね。一応練習してはいるんだけど、上手くいかなくて…それであんなのしか

 まともに扱えないの。笑っちゃうわよね」


 「…それ、なんとかできるかもしれないよ」

 「えっ?」

 「ちょっと、真さん。何を…」

 「緊急時以外って危険だから使用禁止だとばっかり思っていたけど、話聞けば制御すれば普通に使っ

 ても問題ないってことでしょ?だったら、普通に使えるようにもっと練習すればいいんじゃない?」

 「貴方、さっきの話を聞いてたの?!一応練習はしてるけど…」


 「一応、でしょ?それにあんたのことだからどうせ一人で練習してるだろうし」

 「なっ!?貴方、喧嘩売ってるの!?」

 「だから。僕が練習相手になってあげる」


 「…えっ?」

 「真さん!?」

 「僕がここに来たのは、修行のためでもあるからね。それに…僕も同じようなことしてたから気持ちは分からなくもないし…」

 「まっ、真…」


 「真さん、いったいどうしたんですか!?やっぱりどこか体調がぁ」

 「あぁ~もう大丈夫だってばっ!っていうか失礼だろ!?」

 桜子は僕のおでこに手をやって熱を測ろうとする。

 本当に失礼な奴だなと、僕は必死で彼女から逃げ回った。


 「…しっ、仕方ないわねっ!貴方のその願い、受けてあげてもいいわよ」

 「うわぁ~なにそれ?すごい嫌な感じ」

 「っ!?なっ、なんですって!???」


 「まぁまぁ。二人共、落ち着いてください!」

 

 その後、僕達は連絡先を交換して氷浦家へと帰ったのだった。

 

 

 

 





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