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氷魔法師、氷浦真の日常  作者:
桜子と真の部活動見学
15/46

乗馬体験

 

 「真さん、少しここでお待ちください。見学させてもらえるようにお願いしに

 行きますので」

 「あぁ、はいはい。行ってらっしゃい」


 桜子が見学の許可を取ると言って僕一人置いて走り去ってしまった。

 別にそんなことしなくても見てるだけでも十分だと言ったのに聞こうともしな

 いんだから。まったく困った奴だ…。


 桜子を待っている間、僕は馬小屋にいる馬の方をじっと見ていた。

 いったい何頭の馬を飼育してるんだろうかと気になっていたからだ。

 

 「1…2…3…4…。少ないな?いや、もっと奥にも」

 「全部で6頭よ」

 

 僕が数えている際、横から声が聞こえて思わずびくっと反応する。

 そこにいたのは、桜子と一人の乗馬部の部員だった。

 

 「真さん。こちら同じクラスの鈴木明日香すずきあすかさんです」

 「どうぞよろしく、氷浦君」

 「あぁ…うん。よろしくお願いします」


 まだ転入してきたばかりのため、全く気が付かなかった。

 鈴木に握手を求められ、僕は右手を差し出し彼女と握手を交わした。


 「そんなに気を遣わなくて大丈夫だよ。リラックスリラックス」と

 よく分からないけど、フォローしてくれているみたいだ。


 お嬢様学校って言っても全員がお金持ちということではないらしく

 中には親戚に学費を出してもらう代わりに星羅に通うという人も多いようで

 鈴木もその一人だという。


 乗馬部の部員は現在で一年が5人、二年が4人、三年が2名の計11名。

 馬が6頭ということで世話をする際は、最初一年生と上級生がペアとなって

 世話をし、こうすることで一人でも出来るように対策するのだという。

 

 鈴木に説明してもらっている際、乗馬部員の女子達が僕の事をじろじろと

 見ていて「こら、貴方達。持ち場にお戻りなさい!」とそれに気づいた鈴木が部員達に怒鳴り声をあげた。それを聞いた彼女たちは、「申し訳ございません!」と逃げるように差って行ってしまった。


 「ごめんなさいね」

 「いや。うん…」

 「真さんが見学している所を見に来たんですね」

 「まぁ。気持ちも分からなくないけど、困ったもんだわ」

 

 それから鈴木は、僕達を馬場へと連れてきた。

 「ここで待ってて。馬連れてくるから」と鈴木は馬小屋へと向かって入って

 行った。


 そして数分後、一頭の白馬を引き連れてやってきた鈴木に

 桜子は目をきらきらと輝かせた。


 「うわぁ~白いお馬さんですね!」

 「可愛いでしょ?」

 「はい。すごく可愛いです!」と女子二人が喋っているのを聞いて

 どこが可愛いのかが全く僕には理解できなかった。


 でも、口にしたらめんどくさいことになりそうなのであえてそれは口には

 しなかったけれど。


 「じゃあ、この子に乗ってみよっか。せっかく見学に来てくれたんだし」

 「えっ。いいんですか!?」

 「もちろん。この子も喜ぶよ」と白い馬を優しく撫でる鈴木。


 「僕は見てるだけで十分だから、桜子乗せてもらいなよ」

 「えぇ!?ダメですよ。真さんも乗りましょう!」

 「そうだよ。遠慮することなんてないよ、氷浦君」


 桜子には言われると思っていたけど、まさか鈴木も参戦するなんて予想外だ

 った。でも、彼女だけじゃなかったらしく…。


 「それに、あの子達も君が乗っている姿見たがってるみたいだから」と

 苦笑いを浮かべて鈴木は僕に説得してきたのだ。


 いつのまにか先程、僕を見ていた女子達が僕達の方を物陰で見つめている

 姿があり、どうやら断れない状況になってしまった。


 「分かったよ。桜子の次に乗るよ」

 「分かりました。では、お先に乗らせていただきますね」

 安全のためにヘルメットを装着し、桜子は白馬へと乗り、鈴木が手綱を持ち

 ゆっくりと馬場をぐるりと一周して数分後に戻って来た。

 

 「ありがとうございました。さぁ、次は真さんの番ですよ!」

 「あんたなんでそんなにはしゃいでるのさ」

 

 自分の時よりも一番はしゃいでいるような気がする。

 

 「氷浦君、後ろに乗ってみる?」

 「えっ、なんで?桜子と同じでいいよ」

 

 鈴木が言っているのは、自分が馬を操りその後ろに僕を乗せるという意味だ

 ということが分かった。別に桜子と同じようにすればいいのに、どうして

 そんなことを言うのだろう?


 「男子が乗るなら、例え女子の後ろに乗っていたとしてもその方が、絵には

 なるんじゃない…なんて思ってね」

 「安全第一でお願いします」

 「真さん、鈴木さんがこう言ってくれてるんです。お言葉に甘えましょう」

 「でも、それだと桜子が気に食わないんじゃない?」

 「私は乗るだけでも十分満足です。なので、私に構わずお乗りください。

 そして華麗に走る白馬の王子様を皆さんに見せてあげてください!」


 「ちょっと待って。白馬の王子様って何言ってるの?!」

 もう桜子の頭の中で僕は白馬の王子様とやらになってしまっているらしい。

 僕達の会話を近くで聞いていた鈴木は、笑いをこらえようとするも抑えられず

 笑い声が微量だが漏らしていたのを僕は密かに聞いていた。


 

 「じゃあ、気を取り直して。行きますか」と最初に鈴木が乗った後

 僕が彼女の後ろへと乗り込んだ。桜子と同様に頭にヘルメットを被り、

 彼女の腹部へとしっかり捕まった。


 「じゃあ、行くよ。しっかり掴まっててね」

 「うん」


 合図と共に鈴木が白馬に指示を出し、ゆっくりと前進して行く。

 そしてぐるりと一周して終わりかと思いきやまだ周り、二周目、三周目と段々

 スピードが早くなっていった。


 そして四周に入ると今度はスピードを落としていき、五周に入ってやっと

 地面に降りることができた。


 「お二人共、お疲れ様でした。どうでしたか、真さん?」

 「いや…なんか、すごかった」と素直な感想を伝えたのに、それを聞いた

 桜子は驚いてすぐ僕にこう言ったのだ。


 「真さん、どうしたんですか!?どこか具合でも悪いんですか?あっ、もしか

 して乗り物酔いですか!?」

 「お前…。人に感想聞いといて失礼だな。思ったことをそのまま言っただけな

 んだけど」

 

 素直に言っただけなのに、どうして心配されないといけないんだよ。

 本当に失礼な奴だな。と僕は彼女のせいで機嫌が悪くなってしまった。


 

 


 

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