フェンシングでの再会
乗馬部を後にし、次はバトミントン部の見学へと向かった。
「こちらバトミントン部部長の宇都宮嘉代さんです」
「宇都宮嘉代と申します。お会いできて光栄ですわ」
「どっ、どうも…雪っ、いや。氷浦真です。よろしくお願いします」
思わず苗字を間違えそうになったが、すぐに思い出して氷浦と改めて
名乗った。
「真さん、宇都宮さんは二年生ですよ?」
「えっ?でも部長って…」
「はい。現在のバトミントン部には三年生がおりませんので二年の私が
部長を務めさせていただいております」
「あぁ、なるほど。そういうことか」
桜子と同じ身長差と大きな瞳に、黒髪のセミロング。
これぞまさしくお嬢様だ。
「お二人共、苗字がご一緒ですので下の名前でお呼びしてもよろしいです
か?」
「えぇ、構いませんよ。むしろ大歓迎です」
桜子は自分の苗字が嫌いなので下の名前で呼ばれる方が嬉しいのだ。
「ややこしいだろうしね。まぁ、いいよ」
「ありがとうございます」と宇都宮は笑顔で微笑んだ。
なんとなく察しはついていたけど、こんなに喜ばれるとは思っても見なか
った。
「真先輩、バトミントンの経験はございますか?」
「あぁ…実はやったことないんだよね。部活とかなかったし、授業とかでも
なかったから」
「では、私が教えて差し上げます!桜子先輩もご一緒に」
「えっ、でも…「やりましょう、真さん!そして私と勝負しましょう!」
「えぇ~なんでそうなるの?」
「大丈夫です。そんな難しいスポーツではありませんし、先輩方ならすぐに
覚えられます。一緒に頑張りましょう、真先輩!」
僕は二人同時に見比べてみた。
学年は違うものの性格はよく似ているなと…。
お嬢様というのは好奇心旺盛な人が多いのだろうか?
もし、それが本当なら…この一年間、僕は彼女達に振り回されてしまうのか。
それはそれで、ものすごく疲れるな。
「分かったよ。少しだけね」
「はい!よろしくお願いします!」
「やりましたね、宇都宮さん」
「はい!」
それから僕と桜子は宇都宮に初心者でも分かるバトミントン講座を数分で
終わらせて、次の部活の見学へと向かった。
次へ向かったのは、フィギュアスケート部。
「寒い…」
「真さん、こちらがフィギュアスケート部部長三年の松田美郷さんです」
「どうぞよろしく」
今度はお嬢様オーラが感じられないボーイッシュ女子。
髪が短くて、顔立ちも男子っぽい。
「真さん、大丈夫ですか?」
「いや…寒くて…。桜子、寒くないの?」
「そうですね、少し肌寒いです」
「まぁ、スケートリンクだしね。こればかりは仕方ないよ」
まぁ、そうなんだけど…寒い。
「とりあえず、試しに滑ってみる?」
「いや…僕滑ったことないし」
「大丈夫大丈夫。すぐ慣れるって」
すぐ慣れるものだろうか?簡単そうに見えるけど、転倒とかして怪我でも
したらすごくかっこ悪いんだけど…。
でも、僕の気持ちを知らない桜子は滑る気満々ですというように目をきらきら
とさせ「真さん、やりましょう!」と僕の腕を引っ張る。
スケート靴に履き替えて、中に入ったはいいものの立つのが精一杯で
全く進むことが出来なかった。ちなみに桜子は僕と違ってぎこちなく前進
していたが、足がぐぎっとなってしまいそのまま転倒してしりもちをついて
しまい、松田と他の部員に助けられていた。
次の見学先はフェンシング部で、スケート部横にある場所で練習を行ってい
た。そこへとお邪魔すると、見覚えのある人物が僕達の顔を見てすぐさま
走って向かってくる。
よく見ると、それは三好だった。
「貴方達、いったい何の用なの?!」
「こんにちは、三好さん。私達、今部活動見学してるんですよ」
「はぁ、見学ですって!?」
相変わらず声が大きい。何とかしてほしいけど、また言ったら余計うるさい
ので黙っていたら一人の生徒が三好の近くへとやってきた。
「アリス、やめなさい。皆が見てるでしょ?」
「胡桃、でも…「部長の言うことが聞けないの?」
「っ!?…ごめんなさい」
どうやら三好の隣にいるのが部長らしく、三好に強い口調で言い放つと
僕達には先程とは違う優しい顔で答える。
「ごめんなさいね。部長の浅倉胡桃です。
どうぞ、自由に見学していって」
「ありがとうございます」
「どうも…」
「アリス、二人に教えてあげてね」
「えっ!?どうして私が…「教えてあげて、ねっ?」
「あっ…はい」
あの三好が浅倉に押されている。
体育会系の上下関係というものなのだろうか?それとも部長と部員との
差なのかは分からないけど。浅倉に言われて渋々承諾した三好は僕達に
「ついてきなさい」と嫌々ながらに指示を出した。
「ところで、アリスって下の名前なの?」
「私はイギリス人の母と日本人の父との間に生まれたハーフなの。
日本名は「三好玲央奈」で、外国名は「アリス・フィリア」。部長からはアリスって呼んでくれてるのよ」
「へぇ~そうなんだ。なんかカッコいい」
「はぁ!?べっ、別にそんなことないし。へっ、変なこと言わないでくれる
かしら!?」
僕は正直な感想を述べただけなのに、どうして変人扱いされないといけない
のだろう。無駄にでかい大声のせいで部員の人達がこっちを見てくるし、
なんか恥ずかしかった。
「三好さん、落ち着いてください」と桜子が三好を落ち着かせようとする。
まるで僕が悪い人みたいだ。またしても…




