もう一つの手帳
オリビアは外の空気が吸いたいと言って、二人は研究所の外へ出た。
深呼吸したオリビアは落ち着いたようにも見えたが、その目は泳いでいた。
ふらふらと歩くところは人間らしいが、その体は人工の物なのだった。
「これで博士は君を心の底から愛していたことが分かっただろう?君の探し物は終わったんだ」
ベンはなぜかそわそわして言った。
それに気づいたオリビアは尋ねた。
「ベン。まだ何か隠しているんじゃない?」
オーバーではなかったが、驚いた様子でベンは言った。
「え、えっと…うーんまぁ、そうだといえばそうだけど些細なことだし、知っても別に」
「はっきりして。ここまで分かったんだから全て明らかにしましょう」
ベンはきょどきょどしながら、背中から手帳を取り出した。
「これ、戦闘用アンドロイドとか、他色々のことがまとめられているんだけど。あの、手帳を探してるときに見つけて、興味があったから…つい…サボったっていう自覚はなくてね…」
「自覚があることは分かったわ。いいの。手帳は無事見つかったから怒らないわ。で?」
「うん。興味深いことだ。アンドロイドは壊れても死んだことにならないんだ。完全に終わる為には虹を見ること。あ、君は別だよ。虹を見たからといって死なない。そして、世界を焼いた光線、クレル光線はなんと君の博士が開発したんだ」
「え、そうなの?」
「え、と。感情プログラムが制限されているからといってそれはさすがにリアクションは薄すぎるんじゃない?」
「悪い?」
オリビアに睨まれて、ベンはうろたえた。
その時、ベンの頬にぽつりと水滴が流れた。
「なんで泣いてるの?ベン」
「えっ!泣いてないけど…」
またぽつりぽつりと水滴が落ちる。
「オリビア。もしかし…」
「あ、雨」
二人は再び研究所に入った。




