17/35
改名
パラパラと斜め読みをしていると、日付けの記されていないページに目が留まった。珍しい。この手記の書き手は几帳面で日付けを欠かさず書いていたのに。何事か、と期待したベンは読んでいった。
『カレンの名前を改めた。この地で育てていくと決めたから、溶けこめるような名前に。インターネットや書籍、部下や上司、同僚によって情報を得、リストを作り、カレンに選ばせた。
カレンが選んだ名前は「エヴァ」だった。
「ニカ」も捨てがたいと言っていたが、「エヴァ」が一番のお気に入りらしい。
無理を言って手続きしてから正式に変わるまでの期間を早めてもらった。この地位についていて良かったと初めて思った。』
なんだ、オリビアじゃないのか。
予想を裏切られがっかりするも、ベンは読み続けた。
そういえば読み始めたときから思っていた。文がやけに堅い。スラングも慣用句もほとんどない。スペルミスがないのも妙だ。母国語だとどうしても気が緩んでミスはするものだが。もしかすると書いたのは外国人かもしれない。




