博士の名前
日が傾き、夕日が差し込んできた頃。ベンはとうとうそのページに出会った。
『六月二十一日 エヴァは天に召された』
驚いたベンは思わず手記を閉じてしまった。
カレン、いやエヴァが死んだ…!?そんな…虐待から立ち直りやっと幸せになったところだったのに!
小説のように読んでいたはずが、深くのめり込んでいたことに気づいた。どれくらいの時間読んでいたのか時計を見ると。
オリビアとの集合時間は迫り、もう読む時間はなくなっていた。残念ながら再び手記を開くことなく、オリビアと合流した。
「ベン、手帳は見つかった?」
「いいや、まだ。ところで、博士はどんな人だった?」
オリビアは黙って首をかしげた。
「うーん。あたしを孫みたいに扱ってたわね。よく空を見上げてた。特に雨上がりに。それから、時々青い手帳に何か書き込んでいたわ。何度も見せてもらったけどなぜか内容は綺麗さっぱり。覚えてない。でも国の偉い人だったから予定はぎっしり入っていたでしょうね」
「偉い人なのか。博士というくらいだもんな」
「ええ。武器開発の第一人者だった。鉄砲も光線も戦闘用アンドロイドもなんでも作ってた」
「ちなみに博士の名前は?」
「うーんと…ヤーコフ・カメネフだったわ」
「いつ亡くなった?」
「クレル光線が世界を焼いた時。博士は外国に出張していた」
「そう。ありがとう。これで手帳を見つけやすくなった」
「まあ、それは良かった。もう日も暮れるし、夕食にしましょう」
「あと一つ質問があるんだけど」
「何?お腹すいてるんだから簡単にね」
「博士が黒い手帳を持っているのを見たことはある?」
オリビアはまた首をかしげた。
「うーん…多分、ない」
ベンとオリビアは無人の店から好きな食べ物を選んで、食べた。
オリビアが眠った後、ベンはこっそり黒い手帳を取り出して、名前が書いてあるかどうか探してみた。いじくり回した結果、最初のページの隅っこに書かれていた。
ジェームズ・ストーン
似ても似つかない。
オリビアの言う博士はヤコブ…カメノフ…みたいな…。そんな名前だった。




