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ドール―迷子の音符たち―  作者: 粟吹一夢
第三章 大事な友達
24/73

02

 カズホは、マスターの作った夕食を五分で食べて、ナオと一緒にドールを出た。

「あの、佐々木君。私なんかと一緒に歩いているところを誰かに見られたら、ご迷惑じゃないですか?」

「また、心配しているのか。水嶋みたいな『変な女の子』と俺が付き合っているっていう噂が立つことを。大丈夫だって。女の子と一緒に歩いただけで、その子が俺の彼女になるんだったら、俺には何人も彼女がいることになるけどな」

「そ、そうなんですか。私は、男の子と一緒に歩いたことがないから、よく分かりません」

「そうなのか? それじゃあ、俺が最初に一緒に歩いた男ってこと?」

「は、はい」

 顔を真っ赤にしてうつむきながら、消え入りそうな小さい声でナオは答えた。

「あ、あの、男の人と一緒に歩いている時って、何をすれば良いんですか?」

「別に普通に話をすれば良いけど。それとも水嶋ってあれか、男と一緒に歩く時って、何かお笑い芸の一つでも披露しなきゃって思っているのか?」

「な、なんでお笑い芸をしなきゃいけないんですか~」

「大丈夫だよ。水嶋は、普通に話しているだけで十分お笑い芸になるから」

「そ、それってどういう意味ですか~。そんなに私の言っていることって、おかしいですか?」

「まあ、時々な」

「それじゃあ、おかしなことを言わないように黙っています」

 ナオは、ちょっと頬を膨らませて口を結んだ。

 ナオが歩き出すと、カズホが声を掛けてきた。

「あのさ、水嶋」

「……」

「ちょっと気になっているんだけどさ」

「……」

「どこに行くつもりか教えてくれないか?」

「えっ?」

「駅と反対側に行っているぞ」

「……もう~! 早く言ってくださいよ~」

 通学でいつも駅に歩いているのはナオの方だったのに、カズホと一緒に歩いていたことで舞い上がっていたようだ。

 二人はUターンして、今度こそ駅に向かって歩き出した。

「あのさ、水嶋」

「今度はなんですか? ちゃんと駅に向かってますよ」

「今、気付いたんだけどさ。水嶋って、本当にちっちゃいんだな」

「うっ、本人はけっこう気にしているんですから、あまり身長の話はしないでください」

「身長は、どれくらいなんだ?」

「秘密です」

「百五十くらいか?」

「秘密です」

「百四十九か?」

「秘密です」

「百四十八か?」

「ひ、秘密です」

「まさか百四十七?」

「ち、違います! ……あっ」

「あははは。本当に水嶋って分かりやすいよな」

「ふにゃ~。……でも、去年は〇・二センチ伸びたんですから、今年はもっと伸びてやるんですっ!」

「そうか。頑張れよ」

「言われなくても頑張ります!」

「ははは。やっぱり、水嶋は話だけで芸ができるぜ」

「も、もう、人で遊ばないでください~」

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