第1話 ある悲劇の幕開け
彼女の物語の原初は、数年前の出来事から突如として幕開けることになる。
今日も退屈でつまらない授業を全て終え、放課後友人とのんびりと話しながら帰る準備をする。
「そういえば、昨日のテレビみた!?」
「そんなに声を出さなくても聞こえてるよ⋯魔法少女の、だよね?」
私が元気よく友人へ声をかけに行くと、隣でランドセルを背負いながら私をなだめかけ落ち着くように言ってくるこの子は、小学生にしてはやけにおっとりとした雰囲気を持っている私の一番の大大大親友。
「だってさ、すごくかっこよかったんだよ?」
「相変わらず魔法少女大好きだよね〜」
魔法少女は今となっては私たち人類の救世主と言える存在で、みんなの憧れの的。
お察しの通り私もものすごーく憧れていて、一度は会ってみたい人達。
「だってさ、ばばばーってすっごいかっこいいの打ってどどどーんと当たって最後にはどーんとたおしちゃうの!」
「う、うん、ちょっと何言ってるか分からない」
魔法少女達のプライバシーのため、その正体は明かされていないがその中身は私たちと同じただの人間らしく、ただ1つ違っているのはフリーに選ばれた人間であること、ただそれだけ。
「かっこいいよね〜私もなってみたいな!」
「でも、魔物達と戦う勇気あるの?」
「むっ⋯それはわかんないけど⋯⋯なってみたいじゃん!逆にそっちは?なりたくないの?」
「うーん⋯⋯」
昔『魔物』が現れ人類へと襲いかかった時から世界はまるっと変わったらしい。
今や魔物という存在は人類を破滅へと追い込む可能性のある世界共通の脅威に認定されており、事実魔法少女がいなかったら今の私たちはいないとみんな言う。
「私の元にもフリー、待ってるから!」
「じゃあ、誠実でなきゃね?」
「まかせて!」
フリーとは、自らを『妖精』と名乗る摩訶不思議な存在で、ある少女の元だけに現れ、魔法少女として戦える力を与えてくれる存在らしく、一説によると限りなく誠実な心を持った少女にしか現れないとされているが、フリーも魔法少女も、その質問にはなにも答えようとしない。
「それより、今日はお誕生日だよね?早く家に帰らなくていいの?」
「もうちょっと話してから帰ろうかなって」
「じゃあそろそろ一緒に帰ろっか」
何を隠そうなんと私は今日誕生日で、11歳を迎えた。
私は家族や友人と楽しい日々を暮らすただの女の子で、魔法少女ではないけど、それでも十分幸せな日々を送れている。
「誕生日は何をお願いしたの?また身長?」
「今年もそう言ったんだけど、やっぱりダメだったんだよね⋯⋯」
1年前、身長が他の子より一回り小さい私は親に『何か欲しいのある?』と聞かれ、『身長が欲しい!』と意気揚々と答えたが、即却下されてから1年。
あれはなかなかにショックを受けた日だったと記憶している。
「いいもん、お母さんがくれなくてもこれからきっと伸びるはず⋯⋯⋯」
「私は小さいのもいいと思うよ?」
「⋯⋯⋯⋯」
煽られているようにしか聞こえない。
⋯⋯そんなことはさておき、今日は学校についた時から親しい友人達が朝から『おめでとう』と祝ってくれて、授業の時以外は晴れ晴れした気持ちでいれた。
私は友達と話すのが好きで、もちろん祝われるのも大好きだから、素直に嬉しい。
授業が終わった少しの時間ではあるけど、みんなで色んな話題をのんびりしゃべりして笑ったり、遊んだりするこの大切な時間は勉強なんてものよりもうんと楽しくて、ずっと続けたいもの。
「うーん⋯」
「?」
けれど、逆に1人でいる方が楽しいと感じる人もいるみたいで、世界は広いんだなぁって思う。
私はさっきも言った通り友達とわいわい話したり遊んだりする方が好きだから、正直に言ってしまうとまだ幼い私にはよくわからない。
「あ、もうここ?じゃあ私こっちだから、また明日ね!」
「あっ⋯⋯うん、また明日ね、誕生日おめでとう」
「ありがと〜う!」
手を振りながら姿が見えなくなるのを見送り、私も早く家に帰ることにした。
友人と別れてから少し経つと家も近くなり、私のケーキ欲とプレゼント欲が待ちきれなくなってきた時だった。
「はぐっ───!?」
後ろからいきなり鈍器のような物で後頭部を打たれたような衝撃が走り、酷い苦痛が同時に走る。
「ぅぐ⋯⋯!」
そのまま地面に倒れ込み、立ち上がろうとするが、力が全く出ず立ち上がれない。
「うっ⋯⋯」
わからない、痛い───私がなんでこんなことに⋯なんで、私が、どうしてこうなって⋯
身体を動かそうとするけど、やはり痛みで思うように動かない。
このまま、死んじゃうのかな──?
「⋯⋯ぃ、いや⋯」
⋯⋯⋯
⋯⋯
⋯
──命を落とすこそなかったが、それは私を──私の言葉通りの全てを変える地獄への招待状だと知らずに、私は呆気なく意識を失った。




