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(7)

――



「はッ!」


「よっ」


「うりゃッ!」


「ほっ」


「このッ!」


「おっと」

 

 騎士団ナンバーワンとナンバーツーの行う、バドミントン。

 運動神経抜群の二人のシャトルはいつまでも落ちず、ラリーが延々と続く。

 それを観戦しながら、のんきに昼食をとるマリルとマグナの二人。


「いやー、見応えあるねこの試合はー。騎士団でこういう興業開けばお客入るんじゃないかなー」


「は、はい……。二人とも、やっぱりスゴイです。こんなにラリーが続くバドミントン、初めて見ました……」


 ルーティアもリーシャも、バドミントンは素人。

 ラケットの握り方もスマッシュも構えも体勢も滅茶苦茶だが、運動神経のみでそれをカバー。

 相手の打ち返したシャトルに確実に追いつき、ラケットを当て、返す。それが既に5分は連続で続いていた。

 力を込めてスマッシュを打ちまくるリーシャと、それに適格に追いつき最小限の労力と力で返球するルーティア。

 リーシャの方がスタミナ切れを起こしそうなスタイルだが、しかし彼女は一向にバテない。お互いの戦闘スタイルがこういったスポーツでも反映されている。



 しかし……突然吹く、強い風。

 シャトルはふわっとその風にのり……近くの桜の木の上に、ポンと乗っかってしまう。


「あーっ!」


「むう、これでは試合にならんな」


「でもそのシャトル、ルーティアの近くの木の上に乗ったわね。つまりわたしの得点ってことになるわよ」


「そうはならんだろ。無効だ無効」


「お互いに一点も入ってないんだから決着つけないと!この勝負、わたしの勝ちね」


「いやいや、ファールだって。認めんぞ私は」


「いーや!わたしの勝ちね!はい、決定!」


 どんどん喧嘩の内容が子どもっぽくなっていく二人の様子を、マリルとマグナは少し呆れながら見守った。


「どーする?止める?マグナちゃん」


「……ははは、口喧嘩もまた、勝負のうちなのでしょうか、二人共」



――



 楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。

 サンドイッチを食べ終えた四人は、しばらくその場で談笑。

 マグナが作ったというスコーンやクッキーなどのお菓子をつまみに、リーシャが用意した暖かいお茶を飲み、和やかに話す。

 内容は、大した事ではない。

 最近の騎士団や魔術団の実情。聞こえはいいのだが、中身は単なる愚痴だ。

 それに、城の設備の劣化についての愚痴や、職務内容の愚痴。四人集まれば、大抵話されるのは何かについての文句の方が盛り上がるのであった。


 身体がなまったところで、再びバドミントンに興じたりもした。

 運動不足のマリルをしごくつもりで、マグナやルーティアがその相手をする。

 ものの数分でバテバテになるマリルを追い詰め、鍛えていく事で…… マリルはしばらく、シートの上に寝転がってダウンしていた。


 その間にも、騎士団三人は運動遊びに励む。

 マグナが持ってきたアイテムは多数あり、フリスビーを投げたりグローブとボールでキャッチボールをしたり……ついには水鉄砲の撃ち合いなどにも発展する。

 なにかにつけて勝負をしようというリーシャと、適当に受け流そうとするルーティア。

 結局なにをやっても決着はつかず、単なる遊びとなるのだが……それが楽しかった。



 童心にかえり、自然の中で遊ぶ。一人ではできないことも、皆でやればなんでも楽しい。それはここにいる全員が感じている気持ちだった。

 走る。遊ぶ。疲れる。でも、楽しい。

 そんな当たり前の感情は、年齢を重ねるごとにそれを感じる機会が減り、いつしか忘れてしまう。

 それを思い出せるのは、こうやって皆で集まって遊ぶ時だけ。

 子どもの時も、大人になっても……それはきっと、変わらないのだ。



 最後に三人は、ダウンしているマリルの顔に水鉄砲をかけ、怒ったマリルから笑って逃げる遊びに興じるのであった。



――



「あー、疲れたー。楽しかったー」


 リーシャは大きく夕日に向かって背伸びをして、満足そうにつぶやいた。

 着ていたシャツは汗や水鉄砲で濡れたが、すっかり乾いている。しかし身体は大分冷えたようで、まだまだ冷える春の夜を迎える前に、家に帰る事になった。


「帰ったらすぐお風呂入ろっと。ちょっと寒くなってきたよ」


 マリルはブルッと身震いした後、すぐに思いついたことを口に出した。


「今日はアレだけど、今度はこのメンバーで温泉でもいこうよ。ドラゴンの湯っていういいスーパー銭湯が近くにあるのよ」


 その提案に、マグナは嬉しそうに頷いた。


「いいですね!ボク、温泉大好きです!」


「おっ、マグナちゃん、いけるクチだね~? それじゃ今度誘うからね」


「はい、是非!」



「それじゃ、カラスが鳴くから帰るか」


 ルーティアは夕日を眺めると呟き、皆に向き直る。


 今日は、公園で解散。

 暗くなる前に皆で家路に帰るところまで、なんだか子どもっぽい。

 正体不明の寂しさが、胸に少しだけこみ上げる。

 休日が終わり、明日からはまた騎士団、魔術団の仕事だ。

 しかし今日は、なんだかその寂しさも、愛おしく思えるのだった。


「それじゃ、マグナ。主催者から一言」


「えっ、またボクですか!?……ううう、えーと……うーんと……」


 リーシャに振られて、またマグナはしばらく考え込む。


 少し時間が経ったあと、にっこり笑って三人に言った。


「リーシャ様、ルーティアさん、マリルさん。今日は一日、ありがとうございました。また一緒に、遊びましょうね!」


 その子どもっぽい言葉に、三人は思わず笑顔になる。


「うむ」


「また誘ってね、マグナちゃん」


「明日からまたしごくわよ、マグナ」


 マグナは嬉しそうに、にっこり笑う。


「はいっ! 皆さん……本当に、楽しかったです!ありがとうございました!!」




 翌日。


 マリル・クロスフィールドが全身筋肉痛で一時間の遅刻をして魔術団団長に説教を喰らった事に、三人は少しだけ罪悪感を覚えるのだった。



――


―― 次回 『遥かなる街』《商店街散歩》







五話完結です。


ここまでお読みいただいた方、本当にありがとうございます。

よろしければ次回からもお付き合いいただけると幸いです。


また、感想やご指摘などお待ちしております。是非お寄せください。


「このキャラの話がもっとみたい!」や「こんなところを掘り下げてほしい」などリクエストもお待ちしております。誤字脱字、表現がおかしい場所なども指摘していただけると有難いです……!






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それでは、次回をお楽しみに!明日夜から六話が始まります。

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