(6)
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「マリルちゃんとルーティアちゃんの特製サンドイッチ~♪」
マリルはテーブルいっぱいに広げたお手製サンドイッチを両手を広げてアピールした。
「もうすぐ30代が自分をちゃん付けしないの。見ていて恥ずかしいわよ」
「はいはーい、どれでも好きなの取ってねー♪」
「ぐええ」
マリルは呆れるリーシャのこめかみの拳を当ててグリグリと押し当てた。
その様子には気付かないフリをして、マグナは少し汗をかきながらサンドイッチを手に取る。
「色鮮やかですねー。このタマゴサンド、本当に色が綺麗です」
「黄身と白身を分けて潰したり切ったりしてるから見栄えがいいのよ。黄身はかたまりが少し残る程度に潰して、白身は包丁でおおきめに刻んでおく。
マヨネーズもいいヤツ使ってるんだよー。食べてみて食べてみて」
マリルが言い、ルーティアとリーシャとマグナはそれぞれタマゴサンドを口に入れる。
黄身の少しもっさりとした食感と、白身のプリプリした弾力が口の中で混ぜ合う。それと絡み合う、マヨネーズの酸味とコク。
食パンに溶け込むように挟まれたタマゴサラダは、優しく、そして噛みごたえのある豊かな味を引き出していた。
「……!うわっ、おいしいっ!」
「うんうん、マグナちゃん、素直な感想ありがとう」
「普通のタマゴサンドよりいっぱい具の量が入れてあるんですね。はみ出しそう……!すごく美味しいです!」
「食べ応えあるでしょー。騎士団の皆さんはそういうがっつりしたヤツの方が好きかと思ってさ」
「はい!これなら何個でも食べられそうです!」
思わず笑顔が溢れるような、タマゴサンド。四人はその美味しさに驚きつつ、どんどん口に入れていく。
「なにこれ?」
リーシャが手に取ったのは、例の豚の生姜焼きサンドだ。
すかさずマリルが覗き込んで解説する。
「そいつは変わり種、豚の生姜焼きサンドだよ」
「え。普通はご飯のおかずでしょ?美味しいの?コレ」
「まーまー。食べてみなよリッちゃん」
半信半疑のまま、リーシャは生姜焼きサンドを少し齧る程度に口に入れる。
次の瞬間、目を見開く。
「……!! うわ、コレ……めちゃくちゃ美味しい……!!」
「でしょー。白米に合うおかずはサンドイッチにしても美味しい、っていうのがアタシの持論なのよ。いいでしょ?」
「ハンバーガー食べてるみたいね……。しかもサンドイッチだからタレが絶妙にパンに染み込んで、甘辛くてすごく美味しい。食べやすいし……」
「はっはっは。見直したか、リッちゃんよ。アタシの実力を」
豚肩ロースに生姜のスパイシーな味と甘辛いタレが絡み合い、肉汁とタレが染み込んだパンもまた美味しくなる。
そのままでは少々濃い味になってしまうのを、少々のレタスで中和し丁度良い濃さになるようにも調整されていた。
肉の噛みごたえと玉ねぎのシャキシャキ感も相まった、絶品のサンドイッチだ。
「マリル、向いてない魔術団なんか辞めてランチの営業でも城で始めれば?わたしコレ毎日買うわよ」
「褒められてるんだけど嬉しくはないなー、向いてない魔術団ってのは」
マリルは腕を腰に回し自信ありげにしながらも、悲しそうだった。
「マグナの言った通り、外で食べる昼食というのは気持ちのいいものだな」
ルーティアはリーシャ達が持ってきたお手製アイスティーを飲みながら、サンドイッチを口に入れ、空を見上げる。
緑の葉を青々と茂らせる桜の木から、隙間を縫うように日光が差し込んでいる。
鳥のさえずりや、遠くで聞こえる少年や少女の遊ぶ声。家族が笑いあう声や、どこかで聞こえるギターを演奏する音。
春から夏に向かう季節の爽やかな風が髪を撫で、少し熱くなる身体を冷ましていってくれる。
ルーティアのその言葉に、マグナは嬉しくなった。
「そう言ってもらえて嬉しいです。一人でもいいんですけれど、やっぱりみんなと食べる方がボクはとっても美味しくて楽しいです」
「マグナは、どうしてピクニックや登山が好きなんだ?私は野営のキャンプくらいしか経験がないし、わざわざ外で食べるという感情がイマイチぴんときていなかったんだが」
しかし、今のルーティアにはその気持ちが理解できているような気もした。
それを確認するように、マグナに問いかけたのだった。
「非日常感、っていうんでしょうか……?ボクもいつも外でご飯食べているわけではないし、お家では弟と二人暮らしで、ボクがお料理をして家の中で食べてます」
「ほう。立派だな」
「いえ、そんな……。でも、弟は魔術団に入っているんですけど、結構仕事熱心で。お家でもご飯を食べたらすぐにまた勉強や研究に戻ってしまうんです」
「弟……。マリル、マグナの弟を知っているのか?」
リーシャとじゃれ合っていたマリルは、ルーティアの言葉に反応してこちらを見る。
「うん。クルシュ・マシュハートでしょ?12歳にして魔術団の魔法研究部門じゃかなりの貢献をしているらしいよ。神童魔法使いってヤツね」
「……リーシャといい、マグナといい、マグナの弟といい……王国の未来は安泰だな」
ルーティアはうーんと唸って腕を組み、感心した。
「すまん、話が脱線したな。それで、マグナは外で食べる非日常感がいいのだったな」
「あ、はい。お休みの日がほとんどクルくん……弟と被らないから、一人でお昼や夕食を食べることが多かったんです。
……でも、静かな家の中で一人で食べるご飯って、ボクにはたまらなく心細くて、寂しくて。
そんな時、たまには外で食べようって思って、おにぎりを持ってこの公園に来てみたんです。そうしたら……!」
マグナの表情が明るくなる。
視線を遠くに移し、この公園を見渡しながら言葉を続けた。
「たくさんの人がいて。お日様と風が、とっても気持ちよくて。全然寂しくなかったんです。適当に作ったおにぎりも、いつもの何倍も美味しかったんです!
……寂しさを紛らわすため、くらいに思っていたんですけれど、いつもと違う場所でご飯を食べるのってこんなにワクワクして美味しいものなんだ、って気付いたんです。
それからは、お休みの日はほとんど外で……。登山やハイキングも始めちゃって、最近じゃ連休は一人キャンプしたりしています」
マグナは照れ笑いをしながら頭を掻いた。
その後ろから、リーシャがひょこっと顔を出し、マグナの肩に両腕を回す。
「なんだ、それならわたしを誘えばよかったのに。付き合ってあげるわよいくらでも」
「で、でもリーシャ様は騎士団になくてはならない存在だし、お休みの日にボクなんかが連れ出すなんて、そんな……!」
「ばーか。アンタだってわたしになくてはならない存在なのよ。部下のメンタルケアも上司の仕事でしょ。次からはしっかりと誘いなさい」
「……!! は、はいっ!!あのっ、ホントに、誘いますからねっ!!嘘とかやめてくださいねっ!?」
「あはは、ウソなんかつかないわよ」
リーシャとマグナは、仲良く笑いあった。
「あらー、いいですわねー」
マリルは頬に手を当てて、ニヤニヤと笑っている。
「前々から思っていたが、リーシャは最年少のクセにえらく面倒見がいいな。剣の腕も立つし……見直したぞ」
ルーティアの言葉に、リーシャは笑顔のまま舌を出した。
「アンタになんか見直されなくていいわよ。ルーティアはわたしに負かされる日まで精々腕を磨いていればいいの」
「腕を磨く、って……お前に負けたことはないぞ。私は」
「だーかーら。勝負の機会を作りなさいっていうの!私情込みの試合はナシとか言い訳してないで、さっさともう一回試合しなさいよ!!」
「えー、でもめんどくさい」
「結局それかいアンタは!!ふざけんじゃないわよ!!」
リーシャはマグナから離れ、怒りの形相でルーティアに近寄っていく。
先ほどまでの和やかな雰囲気は嘘のように消え、一触即発の空気がリーシャにのみ流れている。
それを察した部下のマグナは、慌てて持ってきた大きなバッグを引き寄せた。
「あ、あのっ。リーシャ様、ルーティアさん!良かったら……勝負しませんか?今ここで」
「え」
「?何言ってるのよマグナ。竹刀や木刀なんて持ってきてないわよ」
二人は驚いた表情でマグナを見る。
マグナは視線が集まったのを察知すると、にこやかにバッグから、ある道具を出した。
「できますよ、勝負。『バドミントン』で」
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