波乱と公爵令嬢
※あとがき追記
更新です
予定より遅れて申し訳ございません。
活動報告に今後の話数構成を掲載しておりますのでまだ見てない方はよろしければそちらもご覧ください。
「ならば私の国に来られてはどうだろうか。──クリスティーナ嬢?」
突然響き渡った男性の声。どこかで聞き覚えが…いいえ、この場所にいるはずは。
いるはずのない声に戸惑い、声のする方向を振り向く。
「なぜ…」
声の主は黙したままゆっくりとこちらへ歩き進み、私の方を向き笑みを浮かべてから振り返り、殿下を遮るように私の前へ立つ。
誰も予想していない、できるはずがない。だって…
耐えきれないかのように殿下が口を開いた。
「なぜこの場にいる!ライオネル第二王子!」
リュベリオン公国の第二王子、ライオネル・リュベリオンその人だったから。
私は交渉の席でお会いしたことがあるけれど、第一王子と違って第二王子はかなり露出の少ない人物であり、この広間にいるほとんどの人は顔も知らない王子ではあるためか、
──あり得ない人物の登場に会場がざわめいている。
当然よ。今の我が国と公国の関係はあまりよくないし、武力衝突だって起きることすらあるのに。ほとんど敵地と言ってもいいこの場所に、なぜ王子が?
「えぇ、少し情報をいただきましてね。本日は私の成すべきことをするために。彼女はもう国外追放を言い渡された身、王国に連なる貴族ではありませんね」
先ほどの殿下の発言を確認するようにライオネル王子は言葉を述べる。
とはいえ返答を求める気はないのか、ここで話を切り、私の方へと振り返り話を続けた。
「さて、クリスティーナ嬢。私はあなたを1人にしないと誓おう。だから私と共に来てくれないだろうか?」
「あぇ……はい?」
あまりに突拍子な言葉にただの少女のような呆けた声でしか反応ができなかった。なにを、どう考えたらそうなるのかしら…?思考が追いつかないわ。⋯え?あのこれは、もしかして
──求婚されている、の?
少し顔が赤くなりそうになるのを抑えながら考える。1人にしない⋯共に来てくれ⋯求婚されてる、わよね?
儀礼的な側面も含む場ではあるけれど、会ったことも話したこともあるから、彼の人柄が悪くないことはわかる。それに、この場で颯爽と現れて私を助ける行動はまるでヒーローみたいな…。
違うわ、そうではないの。何か考えないと…。あぁもう、どうすればいいのかしら。普段の私らしくないわ。幼い頃から殿下の婚約者として決められていたし、殿下も性格は変わってしまったけれど愛?を囁かれたことはないから初めての経験すぎて困るわ…。
そもそも、経験がなさすぎて本当にそうなのかも分からない⋯。
一旦求婚されていることは頭から追い出して、落ち着いて考えましょう。他国にも軍師の名が通っているのは殿下の方のはずなのだけど、このライオネル王子は何らかの理由で私のことを知っている…のかしら?彼と以前お会いしたときに、何か目に留まるようなことをしていたのかもしれないわ。
えぇと、あの時は何をしていたかしら⋯。
まだ、思考を纏めるのに時間がかかりそう。頭から追い出しそうとしても、すぐに戻ってきてしまう。
けれども、事態はそんな私を待ってくれない。
「肯定と受け取っていいんでしょうか?それでは行きましょう」
「え、それはま……。──…っ!!」
声が出ない。だって、私。そんなの、人生で初めて。
──お姫様抱っこされるなんて。
彼は黙して語らない。ただ私の方を見て意味深に微笑んでいる。
なぜ?顔が近い、整った顔がすぐそこにある。少し動かせばキ、キスだってできてしまいそうな⋯。あわ、こんなことに⋯⋯。
恥ずかしすぎる。しかも、こんな、こんな広間で堂々と…。心臓の鼓動が高まっていくのが実感できる。王子と目を合わせられないし、こんな顔誰にも見せられない。せめてもの抵抗として、ただ小さくなって顔を伏せることしかできなかった。
私を抱えたライオネル王子は、皆の視線を意に介さないかのように私を抱えて会場を出てしまった。なぜか王宮の警備をすり抜け、少し移動してから私を下ろした。
私の願望、夢そのままの状況だったというのに、恥ずかしすぎてそれどころじゃなかったわ…。あぁ、思い出してまた赤くなってしまいそう。本当になにを考えているのかしら。
「申し訳ないな、クリスティーナ嬢。あの場所から一番簡単に抜け出すにはこうするしかなかった。少し先に迎えの馬車を呼んでいるから、ついてきてもらえるだろうか」
そうして、ライオネル王子は私をエスコートするように手を差し出してくる。
私の考えていたプランとはまったく違うし、国外に行くことになるなんて思っていなかったけれど、あそこまで大きくパーティーに出席していた皆に示されてしまうと、もう彼についていくしかできないもの。意外としたたかな一面もあるのかしら。
素直にエスコートされ馬車へ乗り込む。目立たないためか、華美な装飾こそ抑えられているけれど、王族の乗る馬車ということでそれでも見た目はよく、内部もよく整えられているため隠匿性と乗り心地の良さを両立したいい馬車ね。
あぁ、そうだわ。絶対に1つ、聞いておかないといけないことがあるのに。慣れないことの連続で、少し、疲れすぎたのかしら⋯。
「ライ⋯オ⋯ネル⋯⋯さ⋯ま⋯」
私の意識は、微睡みの中へと溶けていった。
彼女の未来予想図も、あり得たかもしれない未来も、今ではもはや詮無きこと。
本当にそうだろうか?運命は彼女たちを離さない。その行く末は、まだ誰にも分からない。
To be continued⋯?
「んぅ⋯」
いつの間に寝てしまっていたのかしら。私らしくないわ、気が抜けてしまっていたのかし⋯ら⋯⋯。
顔を上に上げると、全面にライオネル王子の顔が。
「〜〜〜〜〜っ!!」
あの、どうして?え?
待って、上を見上げて顔が見えるってことは⋯。なんとか平静を少し取り戻して、回りを見渡してみる。
──ライオネル王子の膝の上にいる。
「はぅ⋯」
もう、理解が追いつかないわ。でも、今は少しでも早くこの場所から離れないと⋯。
このよくない状況をなんとかするために、もぞもぞと少し動いたあたりで、ライオネル王子が動いたような気配を感じた。
「ライオネル様、申し訳ございません。起こしてしまいまし⋯⋯!!????」
ライオネル王子は起きていなかった、それは良かったけれど。寝ぼけているの?
あ、あた、頭を撫でられてるわ、わわ。ちょ、ちょっと。
収まりかけていた心臓の音が、再び早鐘を打つ。
──あ、頭を撫でられたことなんてそもそも初めてでこんな⋯。
しばらくこの高まった鼓動は収まりそうにない。
こんな状態でライオネル王子と顔なんて合わせられないわ⋯お願いだからしばらく起きないでいて。
そう願わずにはいられなかった。
To be continued
True title
─波乱と"元"公爵令嬢─
恋愛要素が1話では全くと言っていいほどなかったのでここで成分補給していきましょう^^
公国なのに王子?と思われた方いるかもしれませんが、英語ではprince。日本語訳では公子とされることが多いですが王子と訳すこともできるため分かりやすさ重視として本作では王子として扱います。
お読みいただきありがとうございます!
追記 最近忙しくなっているので次回更新は未定とさせてください!すみません!




