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流星の英雄~Aias of the Meteor~  作者: 真田らき
第2章:砂漠の王

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7:辺境の惑星


 エデンIVは、カルデニア王国の領宙の辺境に位置する惑星である。

 カルデニア王国の首都星ハイデルから、超光速航法フォールド・ドライブを使用しても、到着までに数日かかるほどの距離だ。

 ルーディ・クラウス大佐の艦、重巡航艦『ルミナス』を含む艦隊は、3回目の跳躍ワープを終え、ようやくエデンIVの軌道圏に近づいた頃には、ハイデルを出て12日が経過していた。


 艦橋のメインモニターに、惑星の姿が映し出される。茶色の球体で、表面の大部分が黄金色の砂漠に覆われていた。ルーディは窓からその様子を眺め、ため息をつきながら(美しくないな)と思った。ハイデルの緑豊かな風景とは正反対だ。

 艦隊はエデンIVの軌道上へ到着し、降下準備に入った。ルーディの隣でエジード・フォスター少佐がエデンⅣのデータを確認していた。黄金色の髪が艦橋の照明に輝き、アイスブルーの瞳が画面を追う。


 「大佐、エデンIVの表面温度は平均43度。頻繁に猛烈な砂嵐が起きているようですが、居住区はシールドで保護されているようですね。」


 ルーディは頷き、副長のカーラ・ベネット中佐に指示を出した。


 「ベネット、降下シャトルを準備して。ジェイク殿下とゾフィー殿下にも伝えてくれ。」


 ベネットは明るく応じた。


 「了解です、大佐! エデンIV、楽しみですね。あそこには宝石がいっぱいだって聞きましたよ」


 ルーディは少し気まづそうな顔で答えた。


 「楽しみのところ悪いけど、今回君は残ってもらうよ。あそこには何日間か滞在するはずだから、艦長と副長のどちらも行くのはまずいだろ?行くのは、俺と両殿下、それとフォスター少佐とモリス大尉だけだ。君達は衛星の基地で待機。ついでに補給を頼むよ。」


 艦の指揮命令系統を考えると当たり前の判断であったが、それを聞いたベネットは明らかに不機嫌になって、少し顔が赤くなっていた。


 「了解しました。ルーディ・クラウス大佐。お気をつけていってらっしゃいませ。」


 そう棘のある言い方をしたベネットは、足音を鳴らしながら艦橋から出ていった。

 ルーディは頭を掻きながら思った(勘弁してくれよ、子どもじゃないんだから)と。もちろん口には出さなかったが。


 


 エデンIVは、カルデニア王国の歴史の中で、比較的最近有人惑星となった星だ。

 エデン星系の探索が本格的に始まったのは、遡ること約120年前。星系には恒星エデンの周りを公転する4つの惑星が存在する。

 エデンⅠは岩石惑星で、資源に乏しく、今も無人のまま放置されている。 

 ガス巨星のエデンⅡは、人間の居住には向かないが、衛星に採掘基地があり、そこで燃料(ヘリウム3)が採取されている。 

 エデンⅢは氷の惑星であり、水資源は豊富だが、極寒であるため殖民が難しく、あるのは研究施設のみとなっている。

 そして90年前、探査艦『スパルタクス』が始めてエデンⅣに有人探査を行った。

 惑星の内部は強力な砂嵐が巻き起こっていた。探査艦スパルタクスは嵐を避け、惑星の極地点へ接近したところ、豊富な水資源を発見した。極地の氷冠は地下水脈と繋がり、惑星全体の水源となっていた。探査隊が着陸し、砂漠地帯を探検すると、砂の下から独特な光を放つ宝石が採掘された。それが『真砂蒼玉サンドサファイア』だった。青く輝く結晶で、他の惑星では見つかっていない珍しい鉱物だ。硬度が高く、光を屈折させて美しい輝きを放つため、現在では宝飾品として高値で取引されている。今ではエデンIVの主産業となり、惑星の経済を支えている。

 発見当時、辺境の惑星として軍事的な価値は低く、砂嵐が頻発する過酷な環境化であるとして放置されていたが、有人探査によって水資源と真砂蒼玉サンドサファイアの鉱床が発見され、殖民が決定した。

 最初の殖民者は、ハイデルからの志願者と、探査艦の乗組員とその家族だった。彼らは砂嵐の脅威に耐えながら、シールドドームを建設し、居住区を築いた。極地の水をパイプラインで運び、砂漠の一部を緑化する技術を開発した。今では、居住区には草木が生い茂り、小さな海のような湖も形成され、そこで魚も養殖されている。だが、惑星の80%は依然として砂漠で、砂嵐が吹き荒れる過酷な環境だ。


 エデンIVの自治権は、カルデニア王国の他の惑星よりその意味は広い。辺境にあるという地理的問題と、独自の産業が確率している事が理由だ。王国政府は税収の7割を自治に充てることを認め、惑星知事と議会が独自の法律を制定できる。知事は住民の直接選挙で選ばれ、任期は4年。ハイデルからの干渉は最小限。軍事面では、王国軍の駐留部隊があるが、自治軍(エデン自衛隊)も存在し、砂嵐時の防衛や採掘場の警備も担う。住民の生活は、採掘業を中心に回っている。砂漠の採掘現場では、シールドスーツを着た労働者たちが真砂蒼玉サンドサファイアを掘り出し、居住区の工場で加工する。家族単位で暮らす人々は、極地の水で灌漑した農地で作物を育て、湖で養殖された魚を食べる。砂嵐の日はドーム内で過ごし、宝石の輝きを楽しみながら、時々ハイデルのニュースを星間放送でチェックする。自治の仕組みは、議会が税の分配を決め、知事が軍事・外交を王国政府と調整する形だ。

 首都星ハイデルや、カルデニア王国に属する他の有人惑星とは距離がある為、いまや彼等にカルデニア国民であるという意識は希薄で、住民たちは「エデン人」として誇りを持っていた。



 ルーディたちは重巡航艦ルミナスを宇宙空間に残し、シャトルでエデンIVの居住区へ降下した。

 大気圏を抜けると、そこには永遠とも思えるほどの広大な砂漠が広がっていた。砂漠には嵐が吹き荒れ、恒星に照らされて輝く黄金色の砂が、容赦なくシャトルに降り注ぐ。砂嵐を抜けるとシールドドームに覆われた居住区が見えてきた。


 エデンⅣの中心都市にあたるメインドームの直径は、およそ50km、高さも25kmもある巨大な建造物で、そこに約500万人の人達が生活している。

 それ以外にも、真砂蒼玉サンドサファイア採掘場や加工場を保護する小型ドームが、20基ほど各地に点在している。

 外層は、厚さ5mもあるナノ強化ガラスで覆われ、砂嵐だけでなく、微小な隕石にも耐えうる強度である。

 内層には、プラズマベースのエネルギー場がドームの表面に沿って張られ、磁気フィールドでプラズマを抑制。粒子を帯電させて、小さな砂粒や放射線を弾いている。


 シャトルがドームに近づくと、管制塔にID認証を求められた。IDを提示し認証が通ると、ドーム上部にあるゲートエリアに誘導された。シャトルが着くとエアロックゲートが開かれた。 

 ゲートを抜けシールドドームの内部に侵入する。そこには外とは真逆のような景色が広がっていた。緑の木々が広がり、湖の水面が青く輝いている。まさにシールドを隔てて別れる、天国と地獄のような光景であった。

 

 シャトルを降りると、エデンIVの知事、マーヴィン・グレイが一行を出迎えた。

 彼は今年75歳になる男性だが、とてもそうは思えない若々しさがあった。背筋は伸び、白い物が混じっているとはいえ、十分に毛量のある髪、優しい瞳の奥には、何か強い意志を感じるものがある。

 彼は15年前まで、カルデニア王国の首相だった人物だ。当時、高い支持率を維持し、安定した政権運営を行っていた。退任後は故郷であるエデンⅣに移り住み、悠々自適な生活を送るつもりだったが、エデン住人の熱烈な後押しによって知事に就任することになった。


 「王子殿下。王女殿下。遠い辺境のエデンまでお越しくださり、感謝申し上げます。長旅でお疲れでしょう。部屋をご用意しています。まずはゆっくりと旅の疲れを癒して下さい。」


 2人は優しく微笑む彼の好意に甘えることにした。短期間に様々な事が起こり、正直、心身ともに疲弊していたのだった。自治政府職員の女性に連れられ、ジェイクとゾフィーは建物の中へ入っていった。


 「お久しぶりです。グレイさん。」


 そう声を掛けたのはアンナ・シュミット大臣だった。彼女は昔、マーヴィン・グレイの秘書官を長らく勤めた経歴があり、彼女にとって彼は政治家としての師匠でもあった。


 「ああ、久しぶりだねアンナ。元気にしてたかい?…いや、元気なわけはないな。色々大変だっただろう。まぁ一旦中に入りなさい。詳しい話は後だ。」

 

 そう言うと、知事は手招きしながら建物の中へ案内してくれた。

 ルーディは歩きながら内心で(居住区は意外と住みやすそうだな……だが、砂漠の外には絶対出たくないな)などと呟いていた。


 エデンIVの住民たちはルーディ達が何故ここに来たのか、星間放送を見て知っているはずだった。彼等を迎え入れるということは、エデンⅣの住人達も、この不毛な争いに巻き込まれる可能性は大いにある。いくら同じカルデニア王国の国民だとしても、厄介者として扱われても文句は言えなかった。だが、住人達は予想に反して、一行を温かく迎えてくれたのだ。ルーディは反省していた。惑星降下前、エデンⅣを見て『美しくない』と思ったことを。


 いずれにしても、ルーディ達は、ここで自分達の進むべき道を決めることになる。




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