21話 クラスにあんなイケメンいたっけ!?
「まじで、体育の時に落とし物? こんな裏手に落ちてなくね、普通?」
「うん、ヘアピンなくしたみたい。一応、見てみないと分からないでしょ。ここまできたんだし、ちょっと付き合ってよ」
どうやら探し物をしているらしい二人組。声の主が、誰であるかは美夜の方がすぐに気付いた。
「この声、クラスの子たちだ……、私がいつも一緒にいる子たち」
彼女は声をひそめながら名前を挙げてくれるが、クラスメイトの名前と顔が一致するほど、関わっていない俺にはどれも記号にしか聞こえない。
そんな人もいたような……くらいのものだ。
分かるのは、クラスメイトであるというのが、プラスの情報ではないことぐらい。
むしろ、一番遭遇するには面倒な存在だ。
さて、ここをどう乗り越えるか……。
俺が第一にやるべきことは、明白だった。
「とりあえず離れてくれるか?」
「いやだ、って言ったら?」
「いいや、どいてもらう。楽しんでる場合じゃないからな、どう考えても」
こうして二人でいることが露見するだけで、面倒くさいことになるのは必至だ。
変な噂が立って、クラスで発生するは強烈な思い込み。
付き合っていると誤解されるなんてことになったら、俺の明日からの学校生活は、暗幕が下りること間違いなし。
色んな人からの嫉妬や怒りを、無条件で買わなくてはならない。
高校二年生にして、人権はく奪状態だ(もうされている、という説もあるが)。
「私は別にばれてもいいんだよ。どうせ、いつまでも隠してるなんて無理なんだし? むしろ噂ウェルカム、とか思ってたりするし?」
ダメだ、美夜はもう完全におふざけモードに入っている。
こうなったら、説得する道をさがすより、俺の方でなにか解決への糸口を持付ける方が早そうだ。
もうすぐそこまで、彼女たちの気配は近づいていた。
俺は、あたりをきょろきょろと見回す。
そして、自分たちのいるスペースのすぐ横手、校舎と体育館の間に、ちょうど人が一人通り抜けられるくらいの細道を見つけた。
ここならば、もしくは……!
「ごめん、美夜。ちょっと手、借りるぞ」
俺は、手早く弁当を一度片付けると、いまだ肩に寄りかかっていた彼女の手を取り、立ちあがる。
細道へと彼女を連れ込んだ。
「…………山名、今」
「いいからしゃがむぞ、それから静かに頼む」
とやかく言う彼女を奥へ押し込めて、俺はその前に背をぴんと立てて座った。
残された数秒で服装をただし、髪を整えなおし、きりりとした目を作る。
再度、弁当箱を開き、箸を握ってその時を待った。
「あーん、もう、私のヘアピンどこいったんだろ……って、え!? 人!?」
「うわ、びっくりした。っていうか、すいません、なんか勝手に驚いちゃって」
「いえ、気にしないでください。こんなところで食べてる僕が悪いんですよ」
そして、遭遇するが、やっぱりバレなかった。
……おいおい、いつもの俺、影薄すぎだろ。
ほんのちょっと変装したくらいで、化粧もしていないのに、クラスメイトにさえ気付かれもしないなんて。
伊賀の忍者かなにかなの、俺?
少し複雑な気分にならなくもないが、細川さんの姿を隠すことにも成功したし、俺だとばれることもなかった。
少しホッとするが、すぐに背中から袖を引っ張られる。なにかと思いつつ、素直に腕を後ろにやれば、手に小さなものが置かれる。
それを一目見てすぐ、すでに立ち去ろうとしていたクラスメイトの背に俺は声をかけた。
「もしかして、探してたものってこれじゃないですか」
できるだけ、にこやかに愛想よく、と心がけた。
動画仕込みの人あたりのいい笑顔を作って、彼女たちに差し出したのは、水色のヘアピンだ。
「え、ほんとだ! このヘアピンです。これ、どこに!?」
「たまたま落ちてたんですよ、ちょうど俺が座ってた辺りに。もしかして、そうじゃないかと」
実際に見つけたのは、細川さんだが、今は彼女の存在が明らかになっては困る。
「え、それはびっくり……。とにかく、ありがとうございます!」
どうにか笑顔で隠し通してヘアピンを引き渡した。
その際、俺の手に触れたクラスメイトの女子はなぜか肩をいからせ、緊張した面持ちのまま、ロボット歩きで去っていく。
角を曲がって姿が見えなくなったあと、ひそひそと交わされた会話を、俺の地獄耳は拾ってしまった。
「ねぇねぇ、あの人。あのネクタイの色、うちの学年だよね。あんな格好いい人いた? というか、ヘアピン拾ってもらっちゃった。これ、運命?」
「たしかに格好良かったね。でも、あんな人、うちの学年にいたかな」
「あー、名前聞いておけばよかった。緊張しすぎて頭から飛んでた。でもでも今から戻る勇気はないし! イケメンだし、優男だし、群れない感じもいいかも……!」
……などと、話しているではないか。
いやいや、クラスメイトの山名日向ですが? いつも、あなたがたが気まずそうに扱っている窓際の陰キャですが?
ネクタイの色で学年が分かることを失念していたのは凡ミスだったが、不幸中の幸いは名前を聞かれなかったことだ。
とっさに偽名を答えるほど、機転をきかせられた自信はない。
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