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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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33.兄妹はリフォームの準備をする

 あれからさらにひと月ほどが経ち、俺たちはいつも通りの時間に起床しネットで今日のニュースを見ている。そこで面白そうな、いや、実際面白いなどとは口が裂けても言ってはいけないのだろうけど。ダンジョンで事件が発生していた。


『東京ダンジョン9層にユニークモンスター出現』


 見出しはこんな感じで、要は9層に変わった強いモンスターが出たよってことだ。問題なのはこれによって出た被害で、死亡者3名。最後の1人が命からがら逃げてきたそうだ。

 これが日本でのダンジョンの一般公開では初めての死者となった。


 そういえばあまり話を聞かない他県のダンジョンには、経費で日本最強の5パーティーが転々としており、常に最前線をおさえているらしい。加えて言うのならば探索者が東京ダンジョンと比べるとかなり少ないため、問題が起きにくいのだ。


 俺たちの調査によるとレアモンスター。世間ではユニークモンスターと呼んでいるらしいのでそちらに合わせるが、ユニークモンスターは一定の場所でモンスターを狩りつくすような行為を続けると出てくるようなものだと分かっている。

 勿論森林以外の階層でも実験済みであり、1層から4層とボス部屋でもユニークモンスターは出現しないことが判明している。

 つまりは今回のユニークモンスターの出現は人が集中している東京ダンジョンならではの現象であり。そして運悪く。あまりにも運が悪く圧倒的な強者が出現してしまったというわけだろう。

 今は対策として最強の5パーティーの中で最も平均レベルの高い勇者御一行が、急遽北海道ダンジョンから招集され討伐に乗り出すということだそうだ。それに加え今まで公開されていなかった政府直属の特殊部隊、計10パーティーも周囲の安全確保として参加するらしい。

 そんなことをするのならば最前線にいるであろう自衛隊を出せばいいと思うのだが、勇者御一行たちや、特殊部隊のアピールも狙っているのだろうか。または最前線の自衛隊はどうしても秘密にしておきたいのだろうか。


 モンスターの戦力や容姿は自分の実力が分かっていない阿呆な挑戦者をなくすためかそもそも判明していないのか、情報はどこにもなかった。

 ただ、9層を探索していたパーティーを壊滅状態に追い込むのだから、レベル20は余裕で超えているレベルの強さを持っているのだろう。


 俺たちの最近の成果と言えば、久しぶりに魔道具なるものを手に入れたことだろうか。ハルが調べてみるとこうなった。


『スキルボックス…スキルを一定数収納できる』


 形は普通の金属の箱で、最初は超小型ダンジョンかと期待したのだが全く別のものだった。

 使い方は分からなかったのだが色々と試しているうちに、上にスキルのついた物を置き、側面にある魔法陣に魔力を流すと、上に乗ったものは消失し、スキルだけが箱の中に保存されるのだと分かった。

 調子に乗ってスキルを付与したプレートを全てスキルボックスに使ってしまったがスキルボックスの一定数は思いのほか多いようでスキルが入れられなくなることは無かった。ちなみに入れたごみスキルは100を超える。

 ついでに言うのならば俺たちが苦労して作ったスキル保存用のプレートを全て使ってしまい、消え去ってしまったことには嘆いた。錬金で他のごみドロップにスキルを移してからスキルボックスに使えばよかった。

 スキルボックスに入れたスキルの取り出し方は上にスキルの付いていない物を置き横の魔法陣に何のスキルを取り出すかを念じながら大量の魔力を入れるだけ。大体1個のスキルに魔力を10ぐらい使えばできる。

 また、錬金を使うとほとんど魔力消費無しで簡単にできた。


 さて、そろそろ季節は6月に入りじめじめとした気候が続いているわけで、我が家には雨漏りというものがやってきた。普段の雨は平気だったのだが毎日続く豪雨には勝てなかったらしい。というわけで。


「よし、改築しよう」


 ハルが元気に言い出したことなのだが、何馬鹿を言ってんだと。しかしよく考えてみれば俺たちは錬金も工作も使うことができる。これをどうにかして使えば家を丈夫にできるのではないかと。

 まずは既に容量を超えてしまったため物を入れることができなくなった壺から、色々と材料を出していく。

 石材や木材だけでもそれなりの種類があり、使い道がない低階層の物でもサンプルとして5個ずつは保存してあるので、色は自由に選べた。

 そこからより、家の壁の色に近い材料を探し、取り出しておく。材料が用意できても晴れている日に作業しようものならバレかねないので大雨の日に作業することにする。幸い明日は大雨でそのあとは数日晴れが続くらしい。

 つまりは足りない材料集めは今日中にやっておかなくてはならないと。家の外側に使う材料は全て決めたので、次は家の内側に使う材料を決める。これは家の外から見れば分からないので自重せずに済む。こちらは自由に森林の素材を使うことにしよう。

 森林の素材はたんまりと壺にあるので足りないのは家の外側に使う材料か。

 低階層で手に入るものはサンプルしか残してないので狩りに行く必要があるのだが、量はどうせ表面だけなので少なくて済むだろう。数十キロもあれば十分なはず。


「よし、ハル。狩り行くぞ」


「了解」


 俺たちはぱぱっと装備の着用や組手を終わらせダンジョンの中に入っていった。

 今回は何個かの階層を回らなければいけないうえに往復しなければいけない可能性もあるので転移は使わない。行き帰りで1回ずつしか使えないのだから緊急用に取っておいても損はないだろう。

 ただ時間ももったいないので1層から6層まではモンスターも倒さずに全速力で走り抜けた。

 周りの目を気にする必要もなかったので30分ほどで着いてしまった。さすがレベル50超えのステータス。

 で、ホブゴブリンとは戦わずに階層を降りていき、最初は7層でゴーレムをポコポコやる。実際はそんなかわいらしい音ではなくて、ドン、ドカンの一方的な虐殺なのだが。何しろハルが魔弾でそこら中に攻撃を飛ばすのでモンスターが寄ってくる寄ってくる。

 何しろモンスターは人の索敵に入ってない場所からの出現の方が早いらしく、際限なく出てくるのだ。そしてその敵の1割ぐらいはゴーレム。

 刀を振っているだけで間合いに入ってきて死んでいくのでとても簡単だ。その作業をどれくらい続けただろうか。

 正確な時間は時計を見ていなかったので分からなかったが俺たちの目が死んでくるまでと言っておこう。俺たちも飽きっぽい性格ではないと思うのだが。

 で、そのまま下の階層に降りてストレス発散に黒狼を一撃で倒してから10層出口で休憩をとる。

 次に狩るのは13層そこに出てくるトレント。いわゆる木のモンスターなのだが洞窟にいるから全く擬態できていないうえに相手も擬態する気が無いのか、地面がダンジョンなせいで埋めることのできない根っこを器用に動かしてこちらに迫ってくる。最初に見たときは驚いたのだが。


「きもっ」


 今ではハルのさげすむ言葉と共にいつの間にか死ぬ運命を遂げている。

 そして俺たちはここでもひたすら狩りを続けるのであった。


「「もう嫌だ」」


 2人がそんな言葉を口にするぐらいには。



 しばらくして全ての素材が集まり、俺たちは家に戻る。さすがに疲れ切っていたので転移で帰った。時間は22時。昼ご飯しか持ってっていなかったので夜は食べていなかった。しかし、体はというより精神が疲れ切っていて。


「ごはんいい。寝る」


「俺も」


 2人そろって夕飯を食べずに寝てしまった。ちなみに木の採取中に1体のユニークモンスターを倒した。弱かったので問題はない。ドロップは木でできた杖だった。持つ部分は1メートルほどで老木のようにぼこぼこしており、先端には昆虫の代わりに魔法陣が入った琥珀が付いていた。

 スキルも付いていて『聖域…モンスターだけが入れなくなる空間を作り出す…

 なんと強スキルと思ったのだがこの文章には続きがある。

 …回復技能の者のみが使用できる』


 まあ、簡単に言うのならば俺たちからすれば装飾が綺麗で魔法陣が彫られているただの杖ということだ。

 強スキルが付いたアイテムは初めてだから期待したのにその期待はぽっきりと折られてしまった。そのスキルもなんとなくごみスキルと纏めておくのもどうかと思ったのと杖の装飾自体がとても美しかったので、何も手は加えずそのまま保存しておいた。




 さて、政府直属の探索者10パーティーは勇者御一行が帰ってくるまでにと調査を進めていた。そもそも政府直属部隊の40人はどうやって選ばれたのか。それは思いのほか拍子抜けするような部分が判断基準となっていた。素質と経験。ただそれだけ。

 それは警察や消防の隊員は武道の経験が豊富な人が多く、その中から素質の高い人を選び抜き、本人が了承したうえで政府直属の探索者へと引き抜くのだ。

 それは通称、高等探索隊と呼ばれ、ダンジョン関係の上層の指示に従い仕事をこなすのだ。


 ではなぜ最初にダンジョンの探索を行っていた自衛隊がいないのか。

 自衛隊の仕事は国防である。民間の安全を守るが、自らダンジョンへ踏み込む民間人を守るのはいささか、自衛隊の領分を超えていたのだ。だから自衛隊の中には探索者は存在せず、元探索者しか残っていない。

 加えて言うのならば、15層へと挑んだ隊員が1人を残し全滅したのも原因となり自衛隊はダンジョン内には関与しないことになっている。


 高等探索隊のメンバーはA級B級の素質を持つものだけで組まれている。素質とはすなわち素質スキルのことで、スキルの有用性によって人が定めたランク分けによりD級からS級まで存在する。

 D級が全体の40パーセント。C級が50パーセント。B級が9パーセントでA級が1パーセント弱。最後の0.1パーセントにも満たない人たちがS級だとされた。

 D級ならば敵を脅す『大声』や、物の温度を1度まで下げられる『冷却』など。

 C級ならば動きや持った物が軽くなる『軽量化』や、近くの生物を察する『把握』など。

 B級ならば相手のステータスを見る『看破』や見ている相手の一瞬後の行動をいくつかの可能性として見ることができる『予測』など。

 A級以上となれば上層部しか知らないような規格外のスキルになっている。


 では、勇者御一行はこんな規格外のメンバーの前でどんな働きをするのだろうか。上層部の連中はひそかに笑みをこぼしたそうだ。

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