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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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31.兄妹は東京ダンジョンの成果を整理する

 更衣室で持ってきていた普段着に着替え外に出る。ついでにトイレに寄って、バッグに突っ込んであったドロップアイテムをアイテムポーチに移しておいた。

 そうして受付前にあるロビーに行くとハルが壁にもたれ掛かっているのが見える。受付の裏側で、真剣に受付を眺めながら。いや、受付にあるスキルを使う何かを眺めているのか。

 そのまま解析したのか、メモ帳とペンを取りだし書き残そうとしていたので手を掴みそれを止める。


「きゃっ。っておにいか。驚かさないで」


 ハルは若干不機嫌そうにこちらを見る。


「なんかあったのか?」


「今おにいに驚かされたことと、周りの視線」


 ハルはむすっとしながらも返答する。のだが。


「そりゃあ、16歳は親の許可が必要なうえにそれを許可する親はほとんどいないだろ。それに今日は平日だから普通は学校だ。ハルは身長も平均ぐらいしかないしな」


「そうだけど」


 ダンジョン探索免許を取るのもダンジョン探索も16歳を超えていれば親の許可が無くてもできる。ただし、探索をする条件となっている装備を整えるというのが達成できないのだ。

 そこら辺の金属バット程度じゃあ武器だと認定されないし、防具も一般人は持っていない。すべて揃えようとしたらそれこそ子供には用意できない額が必要になる。

 そのうえ、武器や防具が用意できたとしても18歳未満なら親の一存で、免許停止が可能になっている。だからこその16歳探索可のルールであり、金にならないうえに命の危険すらもあるダンジョン探索をさせるような保護者はいないのだ。

 というわけで周囲にいる人で俺らと同年代だと思えるような人はいなかった。


「そういえばなんで私の手、止めたの?」


「防犯カメラも人の目もそこら中にあるからな。書いたことを見られたら溜まったもんじゃない」


「あ、そうか。じゃあ、もう出る?」


 ハルのダンジョンダムを出るかという質問に少し迷う。さっきからこの受付にあるもの以外からも魔力を感じるものがあるのだ。


「ハル、他にも魔力があるのが分かるか?」


「うーん、あ、あれかな。見つけた」


「俺らのスキルでも自動でスキルを使う装置なんて作れなかったし、ドロップもしてない」


「私も解析で調べたんだけど。結論から言うと全部は調べきれなかった。あれ、たぶんスキルと科学の融合だよ」


「あぁ、そういうことか」


 スキルと科学の融合。そりゃあ、一般人にはできない。でも、それにしても。


「人化牛を倒して手に入る生産系統の技能を持っているということだよな。つまりは」


「ってことは最前線にいる自衛隊が作った装置。厄介」


 相手が思った以上に大きかった。通称最強の人たちがダンジョンで拾ってきたものかと思ったが思ったより大きな組織が作った物だったようだ。だとすれば。


「下手に調べるのは悪手だな。帰るか」


「うん、そうしよ。外食は、無理だしね」


「武器と防具で全財産使い切ったからな。家帰って夕飯食べよ」


「うん」


 幸い出口には見張りだけで装置は無かったので普通に出ていく。べつに犯罪をしているわけではないのだが悪いことをしている気分になるのにはもう慣れた。

 そのまま普通に電車に乗り問題なく家に帰った。




「さて、覚えてる範囲でいいからあの装置の解析結果を教えてくれ」


「うん。って言ってもそこまでの物じゃなかった。今から分かったこと書きだすね」


『下級狼鉄…下級狼の魔力が宿った鉄(素質把握)』

『下級狼鉄…下級狼の魔力が宿った鉄(表示)』

『下級狼鉄…下級狼の魔力が宿った鉄(発動)』

『下級狼鉄…下級狼の魔力が宿った鉄(接続)』


「これが使われてた部品で、これを電子機器で順に動かしてあの装置ができてるんだと思う」


「ちなみにそのスキルの効果はなんだ?」


「これだね」


『素質把握』

 種類:スキル

 発動時間:3m

 クールタイム:1m

 素質スキルを調べる


『表示』

 種類:スキル

 生物へ送り込まれる情報を可視化する


『発動』

 種類:スキル

 スキルを保有する物体に触れたとき物体が保有しているスキルを外に使用する

 基本的に常時発動


『接続』

 種類:スキル

 発動時間:次スキル使用まで

 スキルをつなげる


「発動のスキルが付いた物と表示のスキルが付いた物をくっつけておいて、4分ごとに発動を素質表示と接続に触れさせてたのかな。で表示された情報をカメラで撮って電子情報に変えて保存してた?」


「普通に考えたらそうなるだろうな。ん? そういえば外ではスキル使えないだろ。どうしてたんだ。素質把握以外は外で使えないスキルだろ」


「うん。でね、あの装置って横以外金属の箱に覆われてたでしょ」


「あぁそうだったな。保護するためじゃないのか?」


「あれも別のものでね。これは作った物じゃなくて純粋なドロップ品」


『超小型ダンジョン……箱の中にダンジョンを作り出す』


「で、あの箱の中ではスキルが使えるというわけか。厄介だな。で、俺たちが見た魔力は素質把握と。ちなみに素質スキルってなんだ?」


「生物が技能とは無関係に得ることのできる最初のスキルだって。たぶんおにいが把握で私が察知だと思う。でも個人情報保護って大丈夫なのかな」


「新しくできたダンジョンのスキルだからな。プライバシーだなんだって騒ぐことはできても明確に個人情報とは定義されないんだろうな。これから裁判が起きたら変わるかもしれないが、そもそも気づける人がいない。魔法で動く魔力に比べたらスキルで動く魔力なんて微々たるもんだからな」


「素質スキルが魔力感知系だったとしても自分が何のスキルを持ってるかは5層のボスを倒すまで分からないから違和感にしか感じないと。面倒だよね」


 バレなきゃいいとでも言うような国のやり方に2人そろってため息を吐きながらもどうにもならないので思考を切り替える。


「そういえば私たちが5層で手に入れたドロップ品も見てなかったね」


「あ、そういえば。前回はドロップしたことに気づかなくて自己鑑定逃したんだよな」


「ほらドロップ品出して。私たち悪役みたいになっちゃったんだから。せめて主人公ゴブリンが落としてったもの利用しなきゃ」


「はいはい。ドロップ品は、鉄のカード2枚。銀1枚。金1枚。黒1枚だな。金と黒は後回しにして鉄と銀だけ使うか」


 カードを順に手に取り試してみる。鉄のカードを手に取るが駄目だったので銀のカードを手に取ると反応した。


『材質:??? 性質:???』


「んあ?」


 いきなり頭の中に変なものが表示されて、カードはそのまま霧となって消える。それと一緒に表示も消えた。


「おにい、どうしたの?」


「いや、なんかスキルカード使った瞬間に何か出たんだが」


「あー、おにい解析系のスキル手に入れたんじゃないの。見てあげる。おぉ、手に入れてるよ。ん、これ自分で見れない? 物質認知だって」


 自分の手を見て物質認知と頭の中で考える。すると。


 材質:生物

 戦力:194

 性質:

 隠密・座標・物質認知・スピード・パワー・ガード・バインド・チェイン・スロー・ロス・把握・加速・錬金



「あ、ほんとだ。でもハルのに比べるとかなり見にくいぞ。魔力と強度が分かれてないし、魔法とスキルとパッシブの区別がつかない」


「へぇ、じゃあ解析の下位スキルかな。そういえば自己鑑定も解析みたいに詳しくは見られないんだよね。名前と技能と魔属性が見られないらしいよ」


「つまりは解析の下位スキルに鑑定があって、その下位スキルとして認知スキルがあるってことか」


「多分そう。ちなみにスキルの詳細は分かる?」


「ん、これか」


『物質認知』

 クールタイム:10s

 認知系第1スキル


「これだけだな」


「やっぱり情報は少ないね。解析を使ったらこんな感じ」


『物質認知』

 種類:スキル

 クールタイム:10s

 魔力的抵抗を持たない物の詳細を認知する


「認知系第1スキルっていうのは無いけど、こっちの方が詳しく書かれるね。ちなみに私に物質認知って使える? 今できるだけ抵抗しないでいるんだけど」


「あー、無理だな。抵抗しないでいても少量は魔力的抵抗があるんだろ」


「そうだよね」


 スキルを確かめながらもハルはまだ使っていなかったカードを使う。


「私の新しいスキルも分かったよ」


 名前 :ハルカ

 技能 :魔法・工作

 魔属性 :崩(爆)(電)

 レベル:56

 強度 :64

 魔量 :132

 スキル:解析・魔弾・暴走

 魔法 :(ボム)・(タイムボム)・(インパクト)・ナンバー・(プラズマ)・亀裂・剥離・障壁

 パッシブ:魔力回復・察知・工作・魔力操作


「なんかずいぶんと物騒なスキルを手に入れたな」


 魔弾と暴走という字に思わずそんな言葉を投げかけてしまう。


「うん。魔弾は普通に魔力をそのまま撃ち出すスキルで、暴走は常に魔力を使って能力を上昇させるってやつだね」


「まあ、それは次回使うまで置いておいて。じゃあ、金と黒見るか」


「うん。なんか私が金な気がするんだよね。そっちに目が行くというか。何も考えてなかったらいつの間にか使ってそうな感じ」


「俺もそんな感じだな。黒に引っ張られるような感覚だ」


 魔力的な何かは起こっていないのだが、なんとなく視界がそちらに寄るような感じがする。


「じゃあ、せーので触るよ。せーの‼」


 ハルの掛け声に合わせ黒いカードを使用する。


 一気に体の温度が上がるような感覚で、されど悪寒が襲ってきて。頭の中にゆがんだ文字が浮かぶ。


『支配』


 その文字が消えると共に体の熱がすっと引いていった。


「おにい、どうだった」


 横ではハルが笑みを浮かべ、こちらを見ていた。


「支配だって。詳細は分からん」


「そんな時は私に任せなさい。私のカードはスキル昇華ってやつでね。新しい魔法とかスキルは覚えられなかったけど、スキルを昇華させることができたの。だから解析を昇華させて看破にした。魔力抵抗関係無しって訳じゃないけど自分より魔力が低い人は強制的にできるみたい」


 ハルはよほど嬉しかったのか、まくしたてるようにしゃべる。


「それはいいな。俺のスキルはどうなってんだ?」


 聞きながら自分の魔力を放出し抵抗する。

 しかしハルの方からこちらに向かってくる魔力は細くなって進み、俺の魔力の間を縫って悠々と近づいてきて、いとも簡単に俺に触れた。


「抵抗しないでよ。できたけど。これね」


 名前 :トウカ

 技能 :付与・錬金

 魔属性 :無(呪)

 レベル:56

 強度 :79

 魔量 :115

 スキル:隠密・座標・物質認知・支配

 魔法 :スピード・パワー・ガード・バインド・チェイン・スロー・ロス

 パッシブ:把握・加速・錬金


「で、気になる支配の看破結果がこれ」


『支配…自らの実力に見合う物だけを支配する』


「うん、意味わからん」


「だよね。いつものことながら」



「さて、時間も時間だし夕食作りますか」


「待ってるね。明日はダンジョンに潜ろ。あと看破になってクールタイムが短くなったからごみスキル探しとく」



 俺たちはいつも通り重要な話をぱっと頭の隅に追いやり、平和な生活に戻っていくのだった。

 ダンジョンに不穏な空気が漂うことに気づくのはまだ先になりそうである。


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