表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/2

嗚呼、我らが滝姫様

 昔々、ある国に滝姫様と呼ばれるそれはそれは美しいお姫様がおられました。滝姫様はあまり人前で話されるようなお方ではありませんでしたが、誰に対してもやさしく接するので、民衆からは広く慕われておりました。


 滝姫様のお描きになる絵は素晴らしく、その心の清らかさを示しておりました。木を描けば小鳥がその枝に止まろうとし、池を描けば魚がその中に飛び込もうとするほどです。また、その御身分としては珍しく、料理の腕前も見事なもので、一時は元々料亭の娘であったのではないかと噂されるほどでした。


 さて、そんな滝姫様が、あるとき一人の男性に恋をしました。相手の名前は竹球(たきゅう)龍久(たつひさ)。城下町の剣術道場の後継ぎの青年で、弱冠十五歳で免許皆伝という素晴らしい剣才の持ち主でした。二人は次第に相思相愛の仲になり、お互いになくてはならない存在になってゆきました。


 しかし、いまだに身分の格差の激しかった時代のこと。一国のお姫様と一介の剣術家の間には、決して越えられない壁が存在していたのです。どうあがこうと、二人は結ばれぬ存在なのでした。


 それでもあきらめきれぬ二人は、ある伝説を思い出しました。互いに想い合う者同士が強く祈ることで、二人は決して離れることのない強いきずなで結ばれ、二人が幸せに安全に暮らせる時代が来るまで永遠の時の中を眠り続ける。そう言われている『契の洞穴』という名の秘境があることを。


 ある新月の晩、龍久は滝姫様をひっそりと城から導き出し、伝説の洞窟へと向かいました。わずかな希望に、すべての想いをこめて。


 すぐさま城から、滝姫様を連れ戻すために何千という兵士が派遣されました。捜索は何カ月の間も続けられましたが二人は発見されず、問題の洞窟にも人のいた形跡すら見つけられませんでした。結局、二人の行方は誰にもわからないままでした。


 しかしながら、その地方には、いまだにこういう話が伝えられています。


 契の洞穴の奥底。光も音も届くことのない漆黒の闇の中で、絵の上手なお姫様と剣術家の男の魂が、共にひっそりと眠っている。安心して暮らせる、平和な時代が来るまで、永遠に……。



 五月も中ごろの今日この頃。昼下がりの数学の授業は、さながら拷問のようだ。特に、日当りのいい窓際のこの席は。意味の分からない記号の並ぶ教科書を伏せ、俺はあくびをかみ殺した。


 俺の名前は熊谷(くまがい)克也(かつや)。みんなからは、カツって呼ばれてる。野球部所属で、自他共に認める野球バカだ。当然、学校の勉強はおろそかになっていて、成績もあまり芳しくない。調子のいい時でも、クラスの中位に食い込むのがやっとだ。二年後に迫った大学受験のことは……、あまり考えないようにしてる。何といっても現在の目標は、甲子園出場! なのだ。


 そんな野球一筋の俺だったが、最近どうもある一人の女の子に恋してしまったらしい。野球一色に染まった俺の頭の片隅に、その女の子の存在領域ができてしまったのだ。その領域は日増しにどんどん広がってゆき、とうとう野球の練習中にまでその子のことを考えるまでになっちまった。これが恋ってやつなんじゃないかと気づいたのは、つい最近になってからだ。こんなことは初めてだ。いったいどうすればいいのだろう?


 そうそう、相手の女の子の名前は、(たき)(りょう)さん。今年の四月から編入生として、この高校に転校してきた。ちなみに座席は俺の斜め前だ。噂によると、通常の入学試験よりもはるかに難しいとされる編入試験で、全教科満点という恐るべき成績で合格し、先生方の度肝を抜いたらしい。その割に普段の授業では先生に指名されても答えられないことが多い。本番に強いタイプなんだろうか?


 でもどういうわけか、俺が滝さんの名前を出すと、十人中九人は一斉に反対する。というより、滝さんはみんなの恋愛対象に入っていないらしい。確かに滝さんの容姿はきれいに整っているといえど、男性とも女性ともつかぬ中性的な顔立ちだ。あの長くて綺麗な髪の毛は例外だが、端的に示すなら、宝塚の男役という形容がぴったりだろうか? でも、人が人を好きになる理由なんて、理屈じゃない。ましてや容姿がいいとか悪いとか、まったく関係ないじゃないか。……、まぁ多少は関係あるかもしれないけど。


 それに、滝さんにはいっぱいいいところもあるんだ。絵を描かせたら学年一番だし、調理実習のときは大活躍だし……。うん、滝さんの魅力に気付かないやつらの方が、大した男じゃないんだよ! 競争相手がいないのは、俺にとってはものすごくありがたいんだけど。


「――がい、熊谷! 聞いてるか、熊谷!」


「おい、カツ。お前、当てられてるぞ」


「!?」


 数学教師とクラスメートの両方から声をかけられ、俺ははっと我に返った。そういえば、まだ授業中だったんだ。あわてて席から立ち上がる。


「熊谷、お前この問題解いてみろ」


 鬼――もとい、数学担当の新井先生は、びっしりと書き込まれた板書の一部を指差した。ふーむ、なになに?


『y=cosx+sin2xとするとき、yの値の最大値、最小値とその時のxの値を求めよ』


 ………………。はぁ?


「わかりません」


 速攻でギブアップ。分からんものは、いくら悩んだところで分からんのだ。こういうときは、正直に白状するのが一番いい。そうすれば先生だってきっと許してくれるはず……。


「ばかもんっ! 高校二年生にもなって、このくらい解けんでどうするっ!」


「うひっ!」


 思わず首をすくめてしまった。俺は自分の考えが甘すぎたことを思い知らされた。新井先生は顔を真っ赤にして怒鳴った。前から同じみのパターンだったが、とうとう逆鱗に触れてしまったらしい。仏の顔も三度まで、か。


「朝から晩まで野球ばっかりやってるからそうなるんだ。お前は今日から一週間部活禁止だ。そのかわり、俺がお前に特別授業をしてやるっ!」


「そ、そんな……」


「反論は許さん。これは決定事項だ。今日から一週間、俺がみっちりとしごく。いいな?」


「……はい」


 そういえば言ってなかったな。数学担当の新井先生は野球部の顧問でもあるのだ。野球部の部員の中で部活禁止食らったのは、確か俺で十六人目だったっけ? 俺はしぶしぶ席に着いた。


 ふと、滝さんがこちらを向いているのに気づいた。ばっちりと視線が合うと、滝さんはにっこりとほほ笑んだ。


 し、しまった! 滝さんにかっこ悪いとこを見られちまった! どうしよう、絶対バカだって思われてるよ。こんなことなら、今日の分だけでも予習しとくんだった。……はぁ。


 突然のダブルパンチに俺の気分は完全にへこみ、放課後までの長い時間、俺は悶々として過ごしたのであった。



 俺は数学の問題集を穴のあくほど見つめ続けていた。いくら記号だらけのページを見続けても、錆びついた俺の頭で解けるわけがないんだ。


 できることならこんな所から逃げ出したい。野球部の仲間は今頃みんな、泥だらけになって練習しているんだろう。はぁー、練習に、行きたいなー。


 シャーペンを机の上に置き、問題集から目を離して伸びをした。息を吐きながら、体を目いっぱい反らす。こわばっていた体がほぐれて、気持ちがいい。そのままの姿勢で、俺は教卓の横に目を走らせた。


 先ほどまで俺専用の講義をしてくれていた新井先生が、パイプいすに座って何かよく分からない題名の本を読んでいる。確か『平成・新教育論 数学好きはこうやって作られる!』だったか。ったく、いい趣味してるよな。そんな本読んでるんだったら、職員室いって仕事しろっての。


 ふと新井先生が顔をあげた。俺はあわてて視線をそらそうとしたが、ワンテンポ遅かった。バッチリと目が合ってしまった。先生は俺の不満を読み取ったのか、本を閉じると俺の方に近付いてきた。


「オイ、熊谷。お前、何やら言いたげだな」


「別に何もないです、ただ少し疲れただけですよ」


 とりあえず、心にもないことを言っておいた。天地が引っくり返っても、ホントのことなんか言えるかっての。あ、疲れたってのはホントだけどな。


「まぁいいだろう。まだ初日だし、今日のところはこの辺にしておいてやる。家に帰ったら、今日の授業範囲の復習と、明日に提出する課題をやっておくように。手を抜くんじゃないぞ!」


「はい、……ありがとうございました」


 新井先生が俺の席から離れ、教室から出ていく。それを見送ってから、俺は机に突っ伏した。


 ようやく、本当にようやく終わった。今、六時半だから、かれこれ二時間もぶっとおしで数学の勉強やってたわけか。それも鬼の新井の異名を持つ、あの数学教師の監視下において。これが一週間続くのか。じ、地獄だ……。


 しかし、いつまでもじっとしてはいられない。教室の戸じまりは学校の警備の人がやってくれるからいいとして、黒板はさすがに消しておかないといけない。俺は席を立って、黒板消しを手に取った。


 ふと、廊下に足音が聞こえた。そっと廊下を踏みしめるように歩く、柔らかい足音だ。こんな時間に誰だろうか。下校時刻まであと十分。校舎に生徒は残っていないはずだけど。


 とりとめもない考えを頭にめぐらせていると、足音は俺のいる教室の前で止まった。そしておもむろに引き戸が開いた。俺の心臓は、思わず跳ね上がった。


 そこに立っていたのは、あの憧れの滝さんだったのだ!



「へぇ、滝さんちもこっちなんだ」


「うん」


 何という幸運だろうか。俺は今、憧れの滝さんと一緒に歩いている! 教室で鉢合わせてそのままと言う、なし崩し的な感じだが、結果オーライだ。ふふふ、数学の補習も悪いとこばっかりじゃないな。


「そういえば、こんな時間にどうしたの? 忘れ物?」


「うん、……まぁそんなところ。私、どんくさいから……」


 やっぱりかわいいなぁ。みんなからは、あんな男女のどこが良いんだって言われるけど、それはみんなの目が悪いだけなんさ。恥ずかしそうにボソボソと話すけど、それは鈴の鳴るような声で……。


 俺は初めて一緒に歩く嬉しさに、完全に舞い上がっていた。頬は情けなくゆるんだままで、真顔に戻せない。足はじんじんとしびれ、体は宙に浮いているようだ。


 あまりの嬉しさに、滝さんの次の言葉を聞き流してしまうところだった。


「だから……、いつもりゅうくんに怒られちゃうの」


「っ!?」


 ……お、お嬢様、今なんとおっしゃいました? 『龍くん』とは、いったいドナタデスカ? まさか……彼氏とかっ!?


 ……俺の初恋、一緒に初下校で終わりですかっ!? しかも結末が、彼氏発覚ですかっ!?


 ひどいよひどいよ、ひどすぎるよっ! 神様、仏様、滝様っ! あなた方は、

このいたいけな俺に初恋をあきらめろとおっしゃるのですかっ!?


 俺の体から、一気に血の気が引いた。ゆるみっぱなしだった頬が力なく下がり、宙を浮いていた体は奈落の底へ突き落とされた。


「……、どうしたの?」


「っ! な、なんでもない、なんでもないよっ!」


 声が裏返りそうになるのを必死で抑えつけながら、慌てて返事をした。


「そう……」


 あぁ、止めてくれ、そんな目で俺を見つめないでくれ。汚れのない光をたたえた、美しい瞳で俺を見つめないでくれっ!


 相変わらず内面で悶えている俺の横で、滝さんは純粋な微笑みを浮かべて歩いている。あぁ、滝さん、『龍くん』っていったい誰なんだよっ!


 え、そんなに気になるなら聞けば良いじゃないかって? 聞けるかよ、そんなもん。チキンハートのこの俺に、そんな大それた事ができるかっ!


 気が動転して、ほとんど前を見ないでふらふらと歩いていた俺は、いきなり何かに肩からぶつかった。


「痛いな、ちくしょう!」


 ショックから立ち直ってなかった俺は、ぶつかった相手もろくに確認せず悪態をついた。


「おい、お前からぶつかっておいてそれはねぇだろう」


 後ろから肩をつかまれ、力ずくで振り向かされる。その力に、俺は思わずよろめいた。顔を上げると、髪を茶色に染め、耳にピアスの穴をあけた、お世辞にも優等生とは言えないような男子生徒が三人立っていた。さっと見回す限り、俺のぶつかった相手はリーダー格のヤツみたいだ。


「おい、黙ってないで何か言えよ!」


 ヤバい、この制服は隣町の男子校のヤツらだ。俺らの間では結構有名だ。いろんなヤツに因縁つけて、喧嘩ふっかけては相手をボコボコにしているとか。


「すまん、悪かった」


「悪かったで済むかよ。とりあえず、拳で片つけてもらおうか」


 コイツら、どうせ三人で俺を袋叩きにするだけだろ? 頭に血が上り、思わず拳を握りしめたが、ふと頭にある情景が思い浮かんで、すぐにほどいた。俺は野球部員。傷害事件を起こせば、甲子園への夢は塵と消える。


「悪かった、許してくれ」


 三人に向かって頭を下げた。滝さんの前でカッコ悪いが、気にしている場合じゃない。とりあえずこの場は謝り通さないと。


 しかしその考えは甘かった。腹部に痛烈な痛みを受け、うめき声を上げて倒れ伏した。どうやら鳩尾に蹴りが入ったらしい。後ろで滝さんが息を呑む音が聞こえる。


「謝れば済むってもんじゃねぇだろ。バカじゃねぇの。おい、やっちまおうぜ」


 逃げようにも、体が痺れて動けない。骨の一本二本は覚悟しないとな。そう考え、俺は体中の筋肉を緊張させた。


 …………、どうして何も起こらない? 痛みに逆らって顔を上げると、俺とヤツら三人の間に、人影が立ちはだかっていた。あの髪型、制服のスカート。まさか、滝さんかっ!?


「滝さん、逃げて……」


「ふん、そんなナリで何をするつもりだよ。俺が何とかするから、お前はそこで寝ていろ」


「え……?」


 おかしい、今の口調、滝さんじゃない。声は間違いなく滝さんだが、雰囲気は全く別人だ。今の今まで、そばにいたのは滝さんだった。でも、今ここにいる人間は滝さんではない。何故か分からないが直感で感じる。コイツ、何者……!?


「へ、女の子が一人で何言ってんだ。悪いが俺たち、女だからって手加減しないぜ?」


「あぁ、俺もその方が助かる。手早く終わるんでな」


 コイツなに言ってんだ? 滝さんの体で何をするつもりなんだ?


 かろうじて上半身を起こすと、滝さんの体のソイツは、右手で手刀を作り、右半身となって三人と対峙していた。あの構え、どこかで見たことがあるんだが……。


 周りの空気がぴんと張りつめた。先に動いたのは不良たちだった。ただただ無茶苦茶に突っ込んでくるだけのスタイル。バカみたいにこぶしを振り回して。俺だったらどうとでもなるヤツらだけど、滝さんの体なら一撃で吹き飛ばされちまう!


 しかし、そうはならなかった。まさに、圧巻だった。


 滝さんの姿をしたそいつは、膝を曲げ右手の手刀で突き出されたこぶしを軽く受け流すと、すれ違いざま首元に一撃を叩き込む!


 それだけで十分だった。飛びかかってきた不良は声を上げることもなく、あっという間にその場に倒れ伏した。出鼻をくじかれ、他の二人は後に続けない。


 ソイツは一瞬のスキを逃さなかった。風のように動き、瞬く間に二人の背後をとると、反応する間も与えずに首筋に手刀を打ち込んだ。


 まったく、息をつく暇すらなかった。気がつけば、俺に絡んできた不良たちは一人残らず地面にはいつくばっている。


 コイツ、喧嘩慣れしてるとか、そういう次元の強さじゃない。もっとこう、何度も死線を越えてきているとか、そういった者たちが持つ強さだ。なんなんだよ、コイツは。滝さんの体だが、絶対に滝さんじゃない。


「ほら、起きろよ。立てるだろ?」


 ソイツは俺に向かって手を差し伸べた。俺はありがたくその手に支えられて、腹をさすりながら立ち上がった。小さくてやわらかな、女の子の手だった。


「おい、お前いったい誰なんだよ。滝さんのカッコしてるけど、滝さんじゃないな?」


 俺のこの言葉に、ソイツは目を丸くした。よっぽど俺の質問が予想外だったのだろう。


「へぇ、俺が姫様じゃないってよく気づいたもんだな。ふむ、外見で人を判断しないようなやつも、まだいるもんだな」


 なんだ、コイツ。変な所に感心して。でもなんか変だ。コイツと話してると、女の子と話してるって気がしないな。むしろ男と話してるような感覚だ。


「いいから教えろよ」


「分かった分かった、そうせくな。うん、お前の考えた通り、俺は姫様じゃない。俺の名前は竹球(たきゅう)(りゅう)。姫様をお守りする、武士だ。姫様とは別の人間だよ」


 その言葉で、俺はピンときた。さっきの変な構え。あれは時代劇でよく見る『正眼の構え』だ。手刀と言い、先ほどのけた外れの強さと言い、本当にこいつは武士なのか?


「それと、今はこんななりをしているが、俺は男だ」


「っ!?」


 バカな。龍だっけか、コイツは何を言ってるんだ? お前が男なわけないだろう。胸があって、髪の毛長くて、肌の色が白くて、スカートが似合うようなやつが男だと?


「おっと、そろそろ姫様にバトンタッチだ。これからもよろしくな。あ、それから、姫様に手ぇ出したら、俺が許さないかんな」


 一方的に一言そういうと、龍の体はがくりと崩れ落ちた。俺はあわてて駆け寄り、その体を支えた。ったくよう、俺だってまだまだ聞きたいことがいっぱいあるのによう。俺の腕の中で、その体はゆっくりと目を開けた。


「熊谷くん……。よかった、無事で」


 口元に浮かぶ、柔らかな笑み。どうやら滝さんに戻ったらしい。ふーむ。滝さんて、二重人格なのか? どうもそうらしいな。


「龍くんが助けてくれたんだね?」


 俺がうなずき返すと、先ほどよりも大きく笑みをこぼした。それにつられて、俺も微笑んでいた。


「と、ところでさ……。龍くんっていったい誰なの?」


 い、言ってしまった! その場の勢いに任せて口に出してから、俺は猛烈に後悔した。二重人格者にそんなこと聞くなんて、なんて野暮なんだ!


 しかし、滝さんの口から出た言葉に、俺はまたしても奈落の底へ突き落されることになる。


「うん。恥ずかしいんだけど……私の、大切なヒト」



 こうして、俺の奇妙な三角関係が始まった。一応、この話はこれでおしまい。滝さんと龍。手ごわい二人を相手に奮闘する俺の苦労話はまたの機会にしておこう。


 え? 結局それからどうなったかって? そうだな……。今の俺の部屋には、滝さんと撮ったツーショットの写真が飾ってあるとだけ、言っておこうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ