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転生記  作者: 河童王子
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逃走!紅孩児と愛音!今度は二人一緒に・・・


孫悟空が一人、炎と氷の大地にある塔で謎の三人組に襲われていた頃、紅孩児と愛音の身にも危険が迫っていたのだ。



俺様、孫悟空だぜぇ!


突如現れた襲撃者により襲われた紅孩児と愛音、二人はその者達の正体を見たのだった。


それは三匹の妖怪!


その姿は『黒豹』



そいつ達は三匹の黒豹の頭をした妖怪だったのだ。



愛音「逃げるよ!」


紅孩児「あ…ああ!」



紅孩児は愛音に手を引っ張られるがままに逃げたのだ。




紅孩児「くそ!俺様に力が戻れば…あんな奴達!あんな薬なんか飲まなきゃ良かっ……」


そこまで言いかけて紅孩児は自分の言葉を飲み込んだのだ。



(そしたら…愛音とこんな時間は過ごせなかったのだろうか?)



紅孩児は愛音に握られた手から伝わる温もりを感じていた。



(俺様が妖怪だったら、この温もりを感じられなかったかもしれない…)




二人は走った!



しかし、後ろからは三匹の黒豹妖怪達が迫って来ていた。



隠れても、どんなに早く走っても、奴達は迷う事なく離される事なく追って来る。


まるで、逃げ場所を見透かされているかのように?



狙った獲物を追う獣!


獣の嗅覚からは、逃げる事も隠れる事も不可能なのだ。


奴達は『狩り』を楽しんでいた。



愛音「ハァハァ…」


疲れきっている愛音に紅孩児は言った。



紅孩児「愛音!ここで別れるぞ!」


愛音「何を言ってるのさ?」


紅孩児「奴達の標的は多分俺様だ!だから俺様が囮になるから、その間に愛音は逃げるんだ!」



愛音は一瞬言葉を失った…



紅孩児(そうだ…俺様が囮になれば…)



だが、その後の愛音の行動は怒りに満ちていたのだ。


《パチン!》



紅孩児(なっ!?)



愛音は紅孩児の頬をひっぱたいたのだ。



紅孩児「何すんだよ!」


愛音「もう片方の頬も殴られたい?」



そして、愛音は戸惑う紅孩児を抱きしめたのである。



紅孩児(えっ?)



愛音「子供が生言ってるんじゃないよ…」



紅孩児はその時、愛音の目に涙が溢れ流れている事に気が付いたのだ。



すると、愛音は紅孩児に話したのである。



愛音にはかつて、真生(マオ)と言う子供がいた事を…



真生は悪戯盛りの手のかかる少年だった。


まるで今の紅孩児のように…


それでも愛音は真生を愛し、優しい子供に育てたのである。



そんなある日…



この二人を引き裂く悪夢のような出来事が起きたのだった。



そいつは突然現れた。



『白い角の妖怪』



そいつは前触れなく村に現れ、一瞬にして愛音の住んでいた村を滅ぼしたのだ。愛音は出稼ぎに出ていた夫の留守を守るために、真生を連れて白い角の妖怪から逃げていた。



が…



その白い角の妖怪は、まるで標的を絞っていたかのように愛音と真生だけを追って来たのだ。



何故?



白い角の妖怪は、愛音と真生を追い詰めていく。



愛音「あんた!何よ!何で私達ばかり!」



白い角の妖怪は言った。



『特殊体の子供…ようやく見付けたぞ!』



そう言うと、白い角の妖怪は真生に腕を伸ばす。



愛音「させないよ!」



庇う愛音を、白い角の妖怪はまるで餌に付いたゴミを払うかのように払い飛ばし、二人を引き裂いたのだ。


その時の白い角の妖怪の爪が愛音の背中を切り裂き、一生残る跡を残して…



これは紅孩児にも見覚えがあった。


一緒に風呂に入った時、愛音の背中には爪のようなもので裂かれた傷痕があったのを…



だが、愛音に残した傷はそれだけではなかったのだ。



それは心の傷…



真生は、傷付いた愛音を見るなり、自ら白い角の妖怪に向かって歩いて行った。



愛音「真生!」



呼び止め、泣き叫ぶ愛音に真生は言った。



真生「母ちゃん…ごめんよ…オイラ、死ぬと思う。だけど、母ちゃんは死なないで…オイラの分まで生きてくれよ?」



そして、真生は白い角の妖怪に叫んだのだった。



真生「お前の目的はオイラだろ?だったら、オイラはお前にくれてやる!だから!村の皆を…母ちゃんを殺すなぁ!」




白い角の化け物は真生に言った。



『人の子よ!良かろう……我の目的は、お前だけだ…』



愛音はその後の惨劇を見る前に意識を失った。惨劇とは…



白い角の妖怪が…



真生を生きたまま飲み込むと言う悍ましい光景を!



いや…余りの惨劇に愛音の精神が記憶を消去したのかもしれない。



愛音の旦那が戻って来た時、村は崩壊寸前…


生き残った村人達の中に、重傷ながら生き残った愛音を見付け、心から安堵したと言う。生きてさえいてくれたら、それだけで良かったから。



だが、そこには真生の姿はなかった?



旦那は生き残り、一部始終を見ていた者から事の全てを聞き、回復して消沈する愛音を抱きしめたのだ。



それから五年…



この夫婦は生きて来た。失った大切な小さな命の分も、夫婦力を合わせて強く生きていかなきゃならないと誓い合い…。



愛音は紅孩児を強く抱きしめながら泣き叫びながら言った。





愛音「あんたまで!私の前から消えないでよ!あんたは…今度こそ、私が命に変えても死なせたりしないから…今度は守るから!」



紅孩児「愛音…」



紅孩児は愛音に母親を被らせていた。


しかし、それは愛音も同じだったのだ。


愛音もまた、紅孩児に今は亡き真生の姿を被らせていたのかもしれない。




愛音「私は…妖怪を許せない!私達から大事な…大事な者を奪った妖怪が!」




(妖怪が許せない…)



紅孩児は胸が苦しくなった。何故なら…



(俺様も妖怪なんだ…)



そして紅孩児は愛音に手を差し出して言った。



紅孩児「解った!逃げよう!俺様も愛音も死なない!生きて生きて生き抜いてやる!それで良いよな?」



差し出された手を握り返した愛音は、紅孩児の背中に自分を守るために白い妖怪に身を委ねる決意をした真生の姿が被って見えた。



愛音「生きるよ!」



(今度は二人一緒に…)






そして、紅孩児と愛音は再び走ったのだった。



紅孩児「………」




紅孩児は思った。



(これが母上というものなのか…)



(俺様の母上も愛音みたいな母親だったのだろうか?)




(きっと…)





どのくらい経っただろうか?



紅孩児と愛音は、なるべく村人のいない場所を選んで逃げていた。



(他の連中を巻き添えにしてはダメだ…しかし、どうする?)



二人が逃げた先には広場らしき場所があった。あの広場を抜けた先には、川がある。



川を越えれば…



(獣がいかに鼻が良かろうが、川を越えれば臭いは消えるはず)



(そうすれば、追っては来れない!)



二人は川に向かって広場を駆け出したのだ。



(後少し!)



(後少しだ!)




しかし、そこまでだった。紅孩児と愛音の前に三匹の豹頭の妖怪が待ち伏せをしていたのだった。



豹頭の妖怪「ふふふ…ご苦労様!貴様達の考えなど、とうに気が付いていたのだよ!」



紅孩児「くそっ!」


愛音「…そんな!」




絶体絶命!?



愛音は庇うように紅孩児を抱きしめたのだ。



(死なせない…自分の命に代えてでも…)



迫る豹頭妖怪の爪が二人を襲う!




「ありがとな…愛音…」





愛音「えっ?」



紅孩児「もう、良いよ…」



愛音「紅孩児?」



紅孩児「俺様…俺様さ?嬉しかった…変に幸せな気分だった…だから、今まで愛音に嘘をついてた…」



愛音「何を言ってるのさ?」




紅孩児「俺様…愛音に守られちゃいけない…俺様は…愛音にとって、こんなに大切にされちゃいけないんだ…」



愛音「紅孩児?」




紅孩児「だって…俺様は…」




その時…




迫り来る豹妖怪から、愛音と紅孩児を守るかのように炎の壁が出現したのだ。



愛音「これは何!?」



その時、愛音が見た紅孩児の姿は、身体から炎のオーラを纏い、髪が燃えるように逆立っていたのだ。



だが、それより…



その頭上には、二本の黒い角があったのだ!



紅孩児「俺様は、愛音が嫌う…奴達と同じ妖怪なんだ!今まで騙して悪かった…だから、俺様は愛音に守られちゃいけない…俺様は…俺様は!」




『妖怪なんだぁーー!』






紅孩児は愛音を守るための炎の壁を作り、一人豹頭の妖怪達に挑んで行ったのだった。


紅孩児「そうか・・・愛音には子供がいたのか」


紅孩児「話の展開から愛音と俺様の色恋話だと思ったのにな~」





愛音の旦那「あの~私の立場は?」

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