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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第5部 その後編

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最終話 受け継がれるもの

 その年の、航さんの命日。


 僕と大和は、久しぶりに、二人で、彼の墓前を訪れることにした。


     *


「今年も、来たぞ」


 墓石の前に立ち、大和は、静かに、そう語りかけた。


「相変わらず、色々あったよ、俺たち」


 その声には、長年の友人に語りかけるような、穏やかな温かさがあった。


     *


 僕らは、花を供え、線香を焚き、しばらくの間、静かに、手を合わせていた。


 風が、そっと、木々を揺らしていた。


     *


「オッサン、覚えてるか」


 大和が、ふと、口を開いた。


「最期に言ってくれた、あの言葉」


「うん」


「何があっても、友達でいろって、あれ」


 僕は、静かに、頷いた。


     *


「あの約束、ちゃんと、守り続けてこられたと思う」


 大和は、少し、目を細めた。


「色んなことがあったけどな。それでも、俺たち、ずっと、繋がってこれた」


     *


「大和のおかげだよ」


 僕は、そう言った。


「僕は、何度も、大和に、助けられてきた。命も、会社も、そして、人生そのものも」


「それを言うなら」


 大和は、少し、苦笑した。


「俺の人生を、もう一度、輝かせてくれたのは、お前だろ」


     *


「お互い様、ってことだな」


 大和が、そう続けると、僕らは、どちらからともなく、笑い合った。


     *


「オッサン、聞こえてるか」


 大和は、改めて、墓石に向かって、語りかけた。


「俺、無敗のまま、引退したよ。世界の頂点にも、立てた。全部、あんたが、見出してくれた才能のおかげだ」


     *


「そして、こいつも」


 大和は、僕を、指差した。


「立派に、会社を育てて、家庭も持って、幸せに、やってる」


「僕らの息子には」


 僕も、続けて、墓石に語りかけた。


「大翔って、名前を、つけました。大和と、航さん、二人から、一文字ずつもらって」


     *


「その子に、いつか、あんたの話を、ちゃんと聞かせるつもりです」


 僕は、そう続けた。


「あなたが、僕らに、どれだけのものを、与えてくれたか。その全てを、次の世代にも、伝えていきたいと思ってます」


     *


 しばらくの沈黙の後、大和が、静かに、言葉を継いだ。


「なあ、晴信」


「うん?」


「俺たち、ちゃんと、あんたの期待に、応えられてるかな」


 その問いかけに、僕は、確信を込めて、答えた。


「応えられてると、思うよ」


     *


「僕の名前は、武田信玄からとった名前だった」


 僕は、ふと、そう切り出した。


「戦国最強と謳われた武将の名前を持ちながら、いじめられっ子で、何もできない、情けない子供だった」


「懐かしいな、その話」


 大和が、少し、笑った。


     *


「でも、今なら、思えるんだ」


 僕は、続けた。


「あの、名前負けし続けた日々があったからこそ、今の僕がいる。航さんに出会って、大和に出会って、多くの人に、支えられて。ようやく、自分の名前に、少しは、追いつけた気がしてる」


     *


「立派になったな、本当に」


 大和が、そう呟いた。


「昔の、おどおどしてたお前からは、想像もつかねえよ」


「大和のおかげだよ、それも」


 僕がそう言うと、大和は、少し、照れくさそうに笑った。


     *


 墓前を後にする道すがら、僕らは、これまでの日々を、振り返りながら、歩いていた。


「これから先も、色々あるだろうな」


 大和が、そう言った。


「大翔が大きくなったら、また、色々、教えてやりたいと思ってる」


「うん、頼むよ」


     *


「なあ、大和」


 僕は、改めて、そう切り出した。


「これからも、ずっと、友達でいてくれるよな」


 その問いに、大和は、当たり前だという顔で、頷いた。


「何、今更。当たり前だろ」


     *


 その言葉に、僕は、心の底から、安堵した。


 あの日、航さんが、僕らに託してくれた約束。


 それは、これから先、僕らの子供たちの世代にも、きっと、受け継がれていくのだろう。


     *


 振り返れば、長い、長い道のりだった。


 いじめから救われた、あの日から。多くの喪失を経て、多くの再生を経て、僕らは、今、ここに立っている。


 武田晴信という、名前負けだった少年は、多くの人々に支えられ、ようやく、自分自身の物語を、歩き切ることができた。


     *


 そして、この物語は、ここで終わるわけではない。


 大翔が、そして、これから生まれてくる、次の世代が、また、新しい物語を、紡いでいくことだろう。


 航さんから、大和へ。大和から、僕へ。そして、僕らから、次の世代へ。


 受け継がれていくものは、決して、絶えることはない。


 その確かな希望を胸に、僕らは、また、それぞれの日常へと、歩みを進めていった。


     *


 ――何があっても、ずっと友達でいてくれ。


 その約束は、これからも、僕らの中で、静かに、そして確かに、生き続けていく。


〈了〉

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

男同士の友情をテーマに、AIさんに頼りつつ描いてみました。

実はこの作品が私の初作品になります。少しでも楽しんで頂けていましたら嬉しいです。


下記の作品を連載中です。こちらもお楽しみいただけたら幸いです。


外道転生 〜元裏社会の帝王、千のカルマを賭けた贖罪の成り上がり〜

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美醜の基準が"男らしさ"で決まる世界に転生したら、女性に生理的に嫌悪される顔になった件 ~契約婚約の令嬢だけは、俺を化け物と呼ばなかった~

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