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DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第2章 1年目の混沌
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0014 結びつくカオス

 惑星「ジーアス」にある全ての国にて、東イズク大陸の島国で始まった戦争に関する情報と分析を始めていた。そして、全ての国々が同じ結論に至っていた。

「10年戦争となり、前線は世界に拡大し、全世界の国力は最低10%が失われる」

 この結論に、全世界の指導者達は戦慄を覚える。今までだって似た様な状況は何度か直面していたが、今回は極めつけだ。地域紛争が、いつの間にか世界大戦になった例は、第1次「ジーアス」戦争は、メルートリア大陸での地域紛争が、いつの間にか全世界に波及した。

 何故、この80年間、「戦争の世紀は終わった」とされて、ひたすら商いと繁栄を重ねてきたと言うのに、あんな島国の分断国の戦争で、世界の富が10%失われる。悪夢そのものだ。

 しかし、どうやって止める? イラストリラ合衆国の現大統領は、「大衆迎合」と「反知性主義」が産み出した俗物である。その俗物に対して、この事実を伝えたとして、受け入れるだろうか。既に海の王者、大型原子力空母3隻を失っている。面子を潰された合衆国政府は、何としても「勝利」という成果を国民に示さなければ、次の選挙にて与党は敗北し、次の大統領は戦争を止めるだろう。全ての責任を1人の男に背負わせて。元々こう言う時に責任をとるのが大統領の仕事である。

 この大統領は、馬鹿の1つ覚えで「短期決戦」を唱えているが、そんなの希望的観測に過ぎないと言うのは、馬鹿でも分かる。国防省の一部では、州兵の動員も仄めかす主張を唱えている連中も居る。

 つまり、もう外交では解決出来る問題では無い。そうでなければ、力尽くしかない。


 「反イラストリラ合衆国連合」、通称「A・U・S・I・U」、そのまま呼んで「アウシウ」と名付けられた連合体が生まれたのは、第1次円津海峡航空戦が起きてから、3ヶ月後であった。「アウシウ」は、現在イラストリラ合衆国が行っている戦争を「犯罪行為」として批判し、国交断絶・公益の停止・経済制裁でもって、戦争の即時停止と平和的解決を求めていた。

 イラストリラ合衆国の政府は、まさか、ではなく、ようやく来たか、と言う心境にて、「アウシウ」の成立式の動画を眺めていた。ゲーテル・デバイ大統領は、仮面を被った様に表情を消している。内心、どう思っているのか。

 「アウシウ」は、惑星「ジーアス」にて存在している国家の内、3分の2が参画している。一部の反動勢力が騒いでいるだけ、と言う主張は通らない。今まで「自国第一主義」を掲げて、数々の国際条約、国際機関から脱退してきた大統領が、今になって自分達が孤立への途をひたすら駆けてきた事にようやく気が付いていた。


 南沙羅樹国の政府は、その「アウシウ」の盛り上がりの中で、底冷え状態になっていた。もう南沙羅樹国は、軍事的にも政治的にも、何なら経済的にもイラストリラ合衆国に依存してしまっている。今更裏切れる訳もないが、だからと言ってイラストリラ合衆国と共に世界から孤立するリスクを負うなんて有り得ない。

 高松之カツタロウ総理大臣は、まさか自国の「南北統一有事」が、世界大戦に発展するとは思ってもいなかった。そして、その火を点けて回っているのは、北の仕業であるのも分かっていた。「多勢に無勢」であれば、「戦わずして勝つ」のも可能だ。但し、その「数の脅し」を素直に受け入れて、「負け」を認める事が出来るだけの度量が、あのゲーテル・デバイ大統領には一切無い。自分の面子を保つ為に、「アウシウ」相手に戦争を仕掛けるに違いない。

 であれば、世界大戦だ。世界の3分の2を敵に回して、戦い抜けるのか。もう外交では如何にもならない。

 自衛省の役人、そして自衛隊の幹部クラスの自衛官をかき集めて、この日も会議を行っていた。駄目な会社の条件に、「無駄に会議が多い」があげられるが、必要な会議ではあった。「アウシウ」の存在は、この間までその予兆すら掴めていなかった。外交部門の、外交省のしくじりだ。

「もはや地域紛争と言うレベルの話ではない。全世界に戦線が広がる可能性も含めて、いや、そうなるものとして、それに対する対策を導き出すべく、積極的な議論を求める」

 確かに、円津海峡の制空権と制海権の奪い合いだけを考えていれば良い状況ではない。全世界に戦線が広がるのも充分有り得る事態である。そうなった時に、「想定していませんでした」と言って、何一つ手が打てない、なんて事態は避けなければならない。

 そこで、出された結論は、意外な内容であった。

「先ずは、民意でもって挙国一致内閣の組閣を問う国民投票を行うべし」

「憲法第13条の改正は間に合わない。特別有事法案と言う形で、自衛隊の国土防衛のみならず、他国への派兵も視野に入れて議論すべし」

 カツタロウ総理大臣は、出された結論を知って、唸る。国民投票、この有事に際して、そんな悠長な事をする暇はない。それでも、4年に1度の選挙で方針をコロコロと変える議会制民主主義は、現状では厳しい。

 仕方が無い。ここは一か八かで、野党に呼びかけるしかない。どんな条件を出されても、甘んじて受け入れるつもりであった。特別有事法案については、その挙国一致内閣の組閣が出来ていればの話だ。

 しかし、大丈夫か。ちゃんと話が通じる代表が、野党に居るのかどうか。そして、国民投票と言う形で民意を問うことなく、政治だけで判断するのは、下手をすれば「憲法違反」だ。後に禍根を残すかも知れない。いや、後にも南沙羅樹国が残っているかどうか、これはそう言う戦争である。


 しかし、状況は一変する。

 挙国一致内閣の組閣の準備をしている、と言う情報を聞きつけた野党が、全会一致でそれに賛成したのだ。条件についても、幹部クラスのポストに野党の議員を幾らか充てる、と言うだけで、あっさり了承していた。

「この国家存亡の危機に置いて、内輪揉めにて脚を引っ張り合っている場合ではない」

「議論の暇はない。国民投票する暇もない。実行あるのみ」

 普段からこのくらい話の分かる連中だと良いんだけどな。高松之カツタロウ総理大臣は、奇しくも戦後80年目にして、初めて組閣された挙国一致内閣の総理大臣として任じられつつ、議事堂にて拍手万雷を受けながら、頭を下げていた。


 「アウシウ」の結成は、北沙羅樹国の政府にとって、最大の援軍であった。書記長・沼田之ソウタロウが世界中にばら撒いた特使の交渉の成果である。イラストリラ合衆国を相手に、ラシア共和国や神華大陸の華党だけを頼みにするのは不足である。もし10年前であれば、こうはいかなかっただろう。

 だが、状況はまだまだ先を読めない。イラストリラ合衆国だけでなく、全世界にて広がっている「分断」の問題である。「アウシウ」の存在が、イラストリラ合衆国の「分断」をより深める結果になるかも知れない。このまま10年かかったとすれば、想定外の状況が発生する可能性も充分にある。

 何時の時代でも、一寸先は闇の向こう。自分の運命に殺されない為にも、全力出すしかない。


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