黒猫のミーちゃん
霜月透子さんの『ひだまり童話館』の『またねの話』に参加しています。
僕が黒猫のミーちゃんに会ったのは、小学生の頃。
「黒猫をもらうことになったのよ」
ママがそう言った時、僕は「黒猫を見たら不幸になる!」という言葉を思い出した。
「黒猫なの?」
「そうなの」とママは黒猫でも気にならないみたい。
「お友だちの家のシャム猫が何故か黒猫を産んだのよ」
おませだった僕は、少しエッチな想像をしちゃった。浮気したのかな? とかね。
でも、黒猫のミーちゃんを一目見た時から、馬鹿馬鹿しい風評は消えちゃった。
「可愛い! 毛玉みたいだね!」
両手を広げた中に黒い毛玉。それに、ブルーの目が付いている。
「ミーちゃんを可愛がってね」
うちの猫は、お母さんが子どもの頃からずっとミーちゃんだ。
「黒猫だから、違う名前が良いよ!」と僕が抗議しても、ミーちゃんになっちゃった。
「お前は、こんなに可愛いのに、ミーちゃんだなんて可哀想だね!」
毛玉のミーちゃんは、毛糸玉が大好きだ。投げてやると、走って咥えて、僕のところに持ってくる。
「賢いねぇ! ミーちゃんは、犬なの?」
「ミー!」と怒るので、犬呼びはやめておこう。
ミーちゃんは、毛玉だったのに、パクパク餌を食べて大きくなった。
「猫は、一歳で、人間の七歳ぐらいなのよ」
ママが教えてくれた。
「ははは、まだお前より年下だな! 良かったな、子分ができて!」
パパってデリカシーがちょっと無いんだよ! それに、ミーちゃんは子分じゃない! 弟? いや、友だちだよ。
毛玉だったミーちゃんは、シャム猫だったお母さんに似て、艶やかな毛並みになった。
それに、子猫の頃はブルーだった目は、紺色になって格好良いんだ。
「ミーちゃん、いつまでも一緒だよ!」
でも、小学校を卒業して、中学生になり、高校生になると、ミーちゃんと遊ぶ時間はなくなった。
それに、ミーちゃんはもう毛糸玉を投げても、素知らぬ顔だ。
いつも、陽当たりの良い出窓で寝ている。
あっ、夏は一番涼しい場所、でもエアコンの寒さは嫌いなので、風通しが良い所で寝ている。
それでも、家に帰ったら、ミーちゃんを見つけて、クビの下をこちょこちょするのが僕の日課だ。
「ミーちゃん! ただいま!」
「フミィ」と目を開けないまま、返事をしてくれる。
大学生になって、実家を出て下宿することになった。
「ミーちゃん、夏休みには帰ってくるよ」
「ミー」とミーちゃんは出窓で寝たまま見送ってくれた。
そう、僕は馬鹿だった。ミーちゃんは、もう年寄り猫だったのに、いつまでも出窓で寝ていると思っていたのだ。
でも、僕はいつかミーちゃんに会えると信じている。
その時は、僕も小学生になって、毛糸玉を何回も投げて遊ぶんだ。
お終い




