愛しき道
バッツ編ここで一旦完結です。
お付き合いうただきありがとございました!!
「ネオンの代わりに魂になり、大輪の花の根元か自分の魔力を流す?」
「そうです。ネオン以外ならバッツ、貴方でなければなりません。一度根本を芽吹かせてやらねばなりませんから」
アスターシェは決行前、その方法をバッツ達に説明した。
「花が開き魂が導かれ花が閉じる前に、根本から脱出できれば無事生還できるでしょう。しかし少しでも遅れたり中から出られなくなってしまうと、二度と戻らなくなります。つまり貴方は死にます」
成る程。しかしそんなに難しく感じない。
「どうやって身体に戻るの?」
「出てすぐであれば、何もせず戻れますが、時間がたってしまうと自分の意思で戻れなくなります。そこでネオンの回帰の唄が必要になります」
アスターシェはバッツの小指に紐を巻きつけた。それを見てバッツは目で何かと問う。
「目印です。それで貴方の身体がどこにあるのか魂だけになっても分かります。一度身体から離れた魂は人間の身体の様に同じところに留まるのが難しいのです。気を抜くと
あっと言う間に別の所へ飛ばされてしまいます。強い意志と精神力が必要になります」
「だってよ。お前大丈夫か?ふにゃふにゃしてるが?」
「だ、大丈夫だもん!!もう!カイル!?」
ステラは怒ってカイルを睨みつけたがすぐ怒りを引っ込めた。カイルの表情を見て。
「大丈夫よカイル。私も行くわ。ベルグレドも付き合ってくれるんでしょ?」
「ああ。ここで断ったら兄さんに一生恨まれるからな」
当たり前のようにサラリと言われ、エルディは眉間を押さえて顔を伏せた。複雑そうだ。
「ネオンが問題なく歌ったとしてもそれが上手く行くとは限りません。本当に良いのですね?」
「大丈夫よ。それに火力は充分よ?だってベルグレドがいるもの」
話を振られベルグレドが眉を顰める。ロゼは満面の笑みでニッコリ笑いベルグレドにさらに無茶振りした。
「貴方には限界まで彼等を集めてもらうわ」
「ちょっと待て・・・まさか・・・」
「大丈夫よ?私達は決して覗かないから。目一杯妖精達を喜ばせてこの国一杯になるまで妖精を集めて頂戴?」
ベルグレドはダービィディラルだ。妖精達にこよなく愛され常に彼等が付きまとう。しかしベルグレドの性格上、彼等をご機嫌にするにはかなり骨が折れる筈だ。
ふとエリィに目を向けるとプクーとむくれている。
「ど、どうしたの?エリィ?」
初めて見たエリィの不機嫌な様子にホネットが思わず声をかけるとエリィはベルグレドから離れホネットの膝にちょこんと乗って抱きついた。
「え?な、何?」
「ホネット、申し訳ないけどエリィを頼んでいいかしら?ベルグレドが妖精にチヤホヤするのにヤキモチ妬いてるのよ」
こんな小さくてもやはり女の子である。とても可愛らしい。
「それは、心強いです。後はネオンが心から歌う事が出来れば良いのですが・・・」
「俺、ネオンに会いに行くよ」
「え?今から?」
しかしもうすぐ儀式が始まってしまう。
下手をするとネオンの目の前でバッツは死んでしまうかもしれない。
「俺、カイルの気持ちよく分かるよ」
ステラはカイルを置いて一人オルゴールを開こうとした事がある。その事だと分かりステラは身体を縮めた。
「何気に怒ってる?」
バッツは満面の笑みで明るく返事した。
「当たり前でしょ?」
その様子を見て、もう誰もバッツを止める事はしなかった。
****
「もう行くの?」
寂し気なネオンにホネットは苦笑いした。
その日ホネットは自分の国に帰るため、港に来ていた。
バッツとネオンは大地を芽吹かせるために、ここに留まる事になっている。
「そろそろ帰って目的の物を渡さないと。あとうちの国の事もノゼスタと一緒に調べてみる。もしかしたら新たに分かる事があるかもしれないからね!」
「また近いうちに今度は私達がそちらに行ってもいいかな?」
ネオンがおずおずと尋ねるとホネットは嬉しそうに頷いた。
「勿論!ネオンなら皆歓迎するよ!」
「・・・本当。二人共仲良いよね」
そんな二人を見てバッツは複雑そうである。嬉しいがちょっと気に入らない。
「嫉妬は程々にね?悪化するとエルディみたいになるよ?」
「あはは、まさかぁ?流石にそれはないよ。魔人には敵わない」
本人達がいないのをいいことに言いたい放題だ。バレたら多分タダじゃ済まない。
「あと、ちゃんとネオンを守ってあげてね?あの、宰相もいるし安心出来ない」
バッツはそうだろうか?と頭を捻った。
彼はどちらかと言うとバッツの言いなりである。
むしろあの尊敬の眼差しが気持ち悪い。
「うん!ずっと引っ付いてる!エルディ達みたいに!」
バッツ達の基準が何故かあの二人になっている。
彼等は決して手本になるカップルではないはずだ。
寧ろ珍しい組み合わせに分類される。
きっとベルグレドがいれば突っ込んだだろうが残念ながら間違いを正す者がこの場にいなかった。
「じゃあまた近いうちに!」
「うん!またね!ホネット!!」
三人は笑いあって別れを告げた。再び会う約束をして。
「じゃあネオン。とりあえず今日のお勤めに行こう!」
バッツはネオンの手を繋ぐと元気良く歩き出した。
「あー!バッツ様おはよー!」
エルフの子供達が笑いながらバッツに駆け寄って来る。
あれから数日、バッツのお陰でこの国の規律が少し改善された。他国の者とも気安く話せる様に。
「おはよ!今から俺たち仕事してくるから遊ぶのは後でね?」
「えー?つまんないぃ!」
バッツは不満そうな子供を抱き上げると肩車してあげる。子供は楽しそうに上ではしゃいでいる。
「途中まで一緒に行こう?ネオン!」
バッツはまたネオンに手を差し出した。
ネオンは眩しそうに目を細め、笑って彼に手を伸ばした。
その様子をずっとずっと高い所からアスターシェが微笑んで見守っている。
彼等は子供達に囲まれながら幸せそうに大輪の花へ向かって行く。今まで誰もが苦しみながら歩いたその道を。
そこには苦しみも悲しみもなく。
ただ、愛と喜びが溢れていた。
彼等はその愛でこの大地に恵みをもたらす。
そしていずれ来る終焉に備え彼等は固く手を繋ぎ合せた。
「俺、幸せだ」
ここはファレンガイヤ。
その世界にあるソルフィア国にこの世界を救う神の御子がいる。彼の愛する女性と共に彼等はこの世界を愛しそして見守っていく。
ー完ー




