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笑いの形‐WARAKATA‐  作者: らい
第一部『彼らの日常は日常とは程遠い』
16/16

第十五輪:『芽生え始めた感情』

今年は2月2日が節分でした。皆さんは豆まきしましたか?

笑形メンバーが豆まきをしたらきっとさっつんが鬼役でしょうね。でもきっと礼央はさっつん鬼に豆を投げられないでしょうね。みきりんは容赦なく投げますが……w

ということで毎度同じみ久々の投稿、お楽しみください。

 それはリレワンが始まる約十年前のこと。

「お前気持ち悪いんだよ!」

「お前に触るとビリビリする!」

真「で、でもあの子はすごいって言ってくれたよ」

(しん)くん、気持ち悪い」

真「な、なんで……」


 当時子供だった真は、自分がレイラーだということを隠さなければいけないことを知らなかった。

 知られれば普通の人間に蔑まされることも、仲良くしていた女の子に裏切られることも。


真「お母さん、僕のこのぱちぱちすごいよね!」

真母「そんな気持ち悪い力見せないでちょうだい! あんたのせいであたし達は──」



真「……レイラーはこの世に必要ない。レイラーは全て滅ぼさなければいけない。レイラーのいない世界、二度とレイラーが生まれない世界を創ることが僕達の、そして僕達のボスの目的です」

 真は全員を見据え言った。口は笑っているが、目は笑っていなかった。

礼「言ってることめちゃくちゃじゃん! お前達だってレイラーだろ?」

真「そうですよ、でもレイラーが憎いんです。特にあなた達みたいに楽観的なレイラーは不愉快ですね」

さこ「ーっく」

みき「う、あぁっ!?」

 真が指をぱちんと鳴らすと莎子(さこ)未來(みき)がまた苦しみ出す。

真「少し出力を強くさせていただきました。さて、どうしますか?」

矢鬼「お前達は俺達二人に勝つことは出来ない。それどころか、今から誰一人身動きも取れなくなる」

紅龍「なんだと──」

矢鬼「鎌冷(けんれい)

 紅龍(こうりゅう)が反撃をしようとしたがそれよりも早く矢鬼(しき)が呟くと、氷鎌から冷気が放たれ、庭が辺り一面氷の世界へと豹変した。そして礼央(れお)(れい)紅龍(こうりゅう)一夜(いちや)の足元は氷に覆われ足が動かせなくなる。

矢鬼「オレのリレパは氷。この氷の世界からは抜けられない」

 矢鬼は手に持っていた氷鎌の切っ先を一夜の顔の前に突き出した。

一夜「ーっ、うぜぇ」

 どうにか動こうとするものの、足はびくともせず一夜は舌打ちをした。

礼「つ、つーかさみぃ! このままじゃ凍えて死んじゃう!」

 春も終わり、夏も始まりそうな温かい陽気に全員薄着をしていた。そんな格好で氷の世界に放り込まれ、辺りは一気に気温を落とし、極寒の地となった。

真「矢鬼といると寒いんですよねぇ。なので僕はいつも暖かい格好をすることにしているんです」

 元々軍服の様な格好をしていた真だったが、どこからともなく取り出したファー付きの分厚いコートを着用する。

矢鬼「このくらい寒くもなんともねぇだろ」

 氷のリレパの使い手だからなのだろうか、矢鬼は寒くないようで、真のように上着を羽織ることなく赤いタンクトップのままだった。

 そう、極寒の地で赤いタンクトップ。

礼「いや、流石にそれは寒いだろ!!!」

 礼は突っ込まざるを得なかった。

 いくら氷のレイラーだからといっても、体質がそこまで変わるわけではない。雪の降りそうな寒い気温でタンクトップ一枚は流石に寒いだろう。

矢鬼「いや、寒くないぞ。オレは冬でもこれだ」

 その場にいた全員はそんな状況でないのは重々承知だが、矢鬼の発言にポカンとしてしまった。真のサディスティック具合に圧倒されていたが、ある意味本当のダークホースは矢鬼なのだろうと。

みき「-っああ!?」

 しかしそんな状況の中、未來の苦痛の声に皆我に返る。莎子も苦しそうだが、未來はそれよりも苦しそうにしており、膝立ちでは耐えられず縛られたままその場に倒れ込んでしまう。ポカンとした空気が一気に覚める。

一夜「おい! 女だけ苦しませるなんてダセぇことしてんなよ。そいつらだって氷で捕まえてやれば良いだろ」

 見るに堪えなくなった一夜は代替案を出すが真はにこりと笑った。

真「何言ってるんですか? 女の子の苦しむ姿、とっても魅力的だと思いますけど」

 もう一度真がぱちんと指を鳴らすと更に未來が苦しみ出した。声にならない声を上げ、肩で息をしている。

一夜「いい加減にしろ!!!」

 一夜は叫んだ。しかし自分にはどうすることも出来ず、どうにか抜け出そうとリレパを足元に放つが相性が悪く、水はすぐに氷へと変わってしまい更に自分の足が重くなってしまう。

一夜「くそっ! どうにかならねぇのか!」

紅龍「阿呆か、より纏わりつかせてどうする。先程までの氷の量なら少量の炎で燃やせたが、それだと貴様も火傷を覚悟するレベルのリレパを放たんといかんぞ」

礼「そうじゃん、なんで今まで黙ってたんだよ! 最初からそうしてれば良かったじゃん!」

 この状況を打開できる案があったのに、黙っていた紅龍に礼は疑問をぶつけ、一夜は静かに紅龍を睨んだ。

紅龍「本当に阿呆しかおらんのか。氷の奴だけならまだしも、雷の奴もいるし人質をとられている。下手なことをしないのが得策だろう。最も、分かっている奴は何も言わないがな」

 紅龍は礼央の方を見た。礼央も紅龍のリレパが頭に浮かんだが、紅龍と同じく人質に被害が及ぶ状況にはしたくなかったので何も言わないでいたのだ。

礼央「オレ達の素性を知っているみたいだし、紅龍の炎対策に人質だろうね」

真「頭悪い人いると苦労しますよねぇ。でも頭が良くても力が無ければ無意味ですけどね」

 真の視線の先の未來はとても苦しそうだが、そんな未來を横目に見て真は満足そうに無力な四人ににっこりと笑いかけた。

一夜「おい、やれ!」

 一夜は紅龍の方を睨み言う。

紅龍「……どうなっても知らんぞ」

 叫ぶ一夜の足元に紅龍はため息を一つ吐き、瞬間リレパを放った。絶対にないだろうと高を括っていた真と矢鬼は一瞬を見逃してしまった。見る見るうちに一夜の足を炎が覆い、氷が溶けていくが、同時にすぐにズボンに炎が燃え移る。

矢鬼「おい、正気か? 火傷じゃすまねぇぞ」

 一夜の意外な行動に矢鬼は驚くが、一夜はすぐさま足に水のリレパを放ち炎を消す。しかしズボンの裾は燃え尽き、足首に酷い火傷を負ってしまっていた。

一夜「んなこたどうでも良いんだよ!」

 炎が鎮火するや否や、走って未來の元に一夜は駆け寄って行く。意表を突かれた真と矢鬼は身体がすぐに反応出来ず、その瞬間に紅龍はリレパを自分と礼と礼央にも放ち、三人も氷の束縛から解放された。紅龍は矢鬼の前に立ちはだかり、礼が真の身体に鎖のリレパを放ち拘束する。礼央は莎子の傍へと走って行く。

真「あーあ、縛るのは僕の専売特許ですよ?」

矢鬼「冗談言ってる場合か」

みき「い、ちやっ、はぁっ、はぁっ」

一夜「喋んな」

 その間にみきりんの元へと辿り着いた一夜はなんとか雷の拘束を外そうと手を伸ばすが、かなり強い静電気がパチンッとなった時の様な音を発し、痛さに手を一度放してしまう。

一夜「くそっ、いってぇ」

真「無駄ですよ。僕の雷網捕(エレキ・ラヴィーチ)は外から力を加えようとすれば普通に感電します。足だけでなく、手もズタボロになってしまいますよ?」

 真はまだ余裕の表情を見せ話すが、そんなこと一夜には見えても聞こえてもいない。

みき「無理、だよ、一夜が、っはぁ、傷ついちゃう」

一夜「うるせぇ、黙ってろ! こんなもん──」

 もう一度一夜は雷の拘束具を掴む。バチバチと目で見える程に電気が一夜の腕を伝って身体に走っていく。

一夜「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 一夜は叫び、めいっぱい力を込め、雷の拘束具を引っ張った。目に見えて傷ついていき腕がじりじりと焼け焦げている。未來はやめてと叫ぶが一夜には聞こえない。というよりは聞かない。

 一夜はそのまま叫び、更に力一杯引っ張る。

─バチンッッッ─

一夜「ぐあっ!?」

 瞬間雷の拘束具が引き千切れ、未來が解放された。と、同時に一夜はその場に倒れこむ。

みき「い、ちやっ! 一夜!」

 解放され一瞬痺れが残りはしたものの、身体に全く痛みがなくなった未來は倒れた一夜に駆け寄った。俯せに倒れた一夜を仰向けにすると、どうやら気を失っているだけのようだ。

 その間に未來よりも少量の力の雷で縛られていた莎子の拘束具は礼央によって引き千切られていた。一夜ほどではないが、礼央も少し腕を怪我していた。

さこ「礼央ごめん、大丈夫?」

 自分の為に怪我をしてしまった礼央を心配して、莎子は礼央の腕を申し訳なさそうにさすった。

礼央「オレは大丈夫だよ。さっつんは立てる?」

さこ「うん、みきりんよりは弱い力で拘束されてたみたい。あいつら倒さないと気が済まない」

 莎子はスッと立ち上がり、気合の屈伸をした。元気そうな莎子を見て礼央は安堵する。

真「意外ですねぇ。データに寄れば一夜さんはそんな熱い人じゃないはずなんですけど」

矢鬼「いつまで余裕かましてんだ、結構やべぇぞ」

 真は変わらずにこにことしていたが、矢鬼は少し焦っており、額に冷や汗をかいていた。

紅龍「よくもやってくれたな。貴様はこの俺が相手になってやろう」

 人質が解放され、身軽になった紅龍は不敵な笑みを浮かべて矢鬼を見た。

矢鬼「いやいや、炎と氷とかずるいだろ」

紅龍「人質をとる奴らに言われたくないな」

さこ「あんたの相手はあたしがする」

 莎子は先程やられた恨みを晴らすべく、真の前に立った。

真「あはっ、臨むところですよ。どうせならリレパを使わず素手で勝負しますか?」

 真は楽しそうに鎖をいとも簡単に引き千切った。引き千切られた衝撃で礼は後ろでしりもちをついていた。

 紅龍と矢鬼のリレパを使った激しい戦いと、真と莎子の何故かリレパを使わず素手の戦いが始まった。しかし未來は一夜の心配で気が気ではなかった。ただ気を失っているだけとはいえ、身体はボロボロに傷ついている。

みき「一夜、どうして……」

 未來は何故一夜は自分をあんなに必死になって、ボロボロに傷ついてまで助けてくれたのか疑問だった。

礼央「みきりん、オレのリレパで一夜の傷を回復しよう」

 一夜から離れようとしない未來に礼央は声をかけた。礼央が“癒しの大地(ハッピーグリーン)”と唱えると、礼央の掌から緑色の淡い光が灯り、その光が一夜を包み込む。少しずつ一夜の傷が治っていく。

みき「ありがとう、礼央」

礼央「オレは何もしてないよ。一夜格好良かったね」

みき「うん……」

 傷が癒えていく一夜を見て安心したのか、未來は少し頬を染めて笑みをこぼした。

矢鬼「くっ、やっぱり相性が悪いとキツイな」

紅龍「ほら、どうした? 炎上(ファイヤー・バースト)!」

 紅龍の言葉と同時に炎の柱が矢鬼の周りに立ち並んだ。

矢鬼「ちっ」

真「ははっ、矢鬼大丈夫ですかー?」

 そんな矢鬼を楽しそうに見ていた真は莎子の拳を受けていた。

さこ「よそみっ、すんなっ!」

 その隙をついて真の左方向から一発、回し蹴りを食らわそうと莎子は蹴りあげたが、すんでの所で左手でしっかりと捕まえられる。真の細腕のどこにそんな力があるのか、そのまま持ち上げられ宙ぶらりんの状態になった莎子は、スパッツをはいているとはいえスカートをおさえた。

さこ「ーっ、最低!」

真「えぇー、スカートの下にスパッツはいてる方が最低ですよ」

さこ「うる、さいっ!」

 莎子は宙ぶらりんから上半身を起こし、掴まれていない方の足でもう一度一蹴り入れた。流石にそこから起き上がってくるとは思わず意表を突かれ、今度は真の肩にクリティカルヒットし、そのまましりもちをついてしまう。莎子はさっと降り立ち、そのまま少し距離を取った。

真「いててて、やりますね」

礼央「さっつん、オレも加勢するよ」

 とりあえず一夜の応急処置を終えた礼央は莎子を庇う様に前に立ち、キッと真を睨みつけた。ひとまず落ち着いた一夜は未來に膝枕をされ眠っていた。

礼「んじゃあオレは紅龍とだな」

紅龍「邪魔をするならそこで見ていろよ」

礼「んなこと言って、オレがいて嬉しいだろ?」

真「ちょっと優勢になったからといって、余裕ぶってると痛い目みますよ?」

 しりもちをついていた真はいつの間にか立ち上がり、矢鬼の周りを取り囲む炎の柱を剣で払いのけた。自分ではどうしようもなかったとはいえ、矢鬼は不服そうであった。

真「そろそろ遊びは終わりにしましょうか……。行きますよ、矢鬼」

矢鬼「あぁ」

 にっこりと笑った真が矢鬼に目配せをすると二人は飛び上がり、莎子達が住む家の屋根の上に飛び移った。そして矢鬼が氷鎌を上に掲げる。

矢鬼「氷の時計塔(アイラスロック)

 そう唱えると矢鬼の頭上に時計塔のような形と大きさの大きな氷が生成された。

真「雷網捕(エレキ・ラヴィーチ)

 そして次に真が言葉を口にすると、その氷の周りに電気の糸が絡みつく。二つが重なりばちばちと氷の時計台は音を発し、どういう原理か一回り大きくなっていく。

みき「何、あれ……」

 家を影で覆われる程の大きな物体に未來は呆気に取られていた。未來だけではない、その場にいた莎子達全員がかなりやばい雰囲気だということを察し、冷や汗を流した。

真「ふふふ、驚いてますね。これが僕たちの合体技“氷雷時計塔(グラスクロム)”です。この攻撃はどこにも逃げ場がないですよ? この塔に押しつぶされてあなたたちはばいばいです」

礼「皆急いで逃げろ!飛べるリレパを使える奴は飛んで逃げるんだ!」

 礼の言葉を聞き皆一斉に動き出そうとするが、

真「あはっ、無駄ですよ? この大きな塔からそんな簡単に逃げられると思うんですか?」

 段々と氷の時計塔が莎子達へと影を落としていく。もう逃げられない。このままでは皆死んでしまう。未來は未だ気を失った一夜を庇う様に抱きしめ、礼は諦めの表情を浮かべる。礼央は莎子だけでも助けたいと、莎子に手を伸ばした。

紅龍「待てっ!!!」

 紅龍はなんとか出来ないかと頭を巡らせ皆を庇う様にして手を広げ前に立つが、否が応にも“氷雷時計塔(グラスクロム)”は迫ってきていた。どうにも出来ない、皆が諦めかけたその時──。

─ピカッ─

真「な、なんですか!?」

 突然辺りが眩い光に包まれ、一瞬その場にいた全員が目をつぶってしまう。あまりの眩さに一瞬目くらましを食らった真と矢鬼だったが、目が慣れ視界がはっきりした時には、目の前の“氷雷時計塔(グラスクロム)”は何故か無くなっていた。そして残っていたのは同じく光に目をやられたのか、瞼を固く閉じた紅龍と、その場に倒れていた莎子、未來、礼央、礼、一夜であった。

真「……矢鬼、これは」

矢鬼「あぁ……」


─続く─


次回予告

紅「なんだか大変なことになったな。このままでは鍛える時間が減るな」

さこ「ほんと筋肉バカ」

紅龍「なんだと!? 貴様も一から鍛え直してやろうか!」

さこ「あーうるさいうるさい。次回笑形第十六輪」

紅龍「『皆の家』次回は俺様の筋肉講座を開いてやろう」

さこ「きも……」

紅龍「貴様! そこに正座しろ!!!」

さこ「はぁ……」


2021,02,02

2024/06/08(最終加筆)

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