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新訳 東方紅魔記  作者: グレ
仲間
4/29

フランと美鈴

〔紅魔館地下牢〕



地下牢で、レミリアの帰りを信じて1人待つフラン。彼女はいつもより帰って来るのが遅いレミリアを心配しながらも退屈していた。


『お姉様遅いなあ・・。』


トントンッ。扉をノックする音がした。


『お姉様?』

『誰かいますかあ?』


聞いたことのない女の声だった。フランは少し警戒した。


『えっ?誰?』

『あ、いるんだぁ?お邪魔しまーす!』


ガチャ。女は扉を開け、入って来た。


フランの目の前には背の高い赤髪のロングストレートヘアー、緑色のチャイナドレスの様な服、龍と書かれた帽子。人間で言えば17歳くらいの女性がいた。


『お姉ちゃん誰?』

『あ、すいません。私は、紅・美鈴と申します。美鈴とお呼び下さい。お嬢ちゃんは?』

『美鈴?・・私?私フランドール・スカーレットっていうの、宜しくねー』

『実は私、迷子になってしまい。えーと、フランドールちゃん?食堂はどこか知り・・・・え?・・ス、スカーレット?ま、まさか?主様の娘?』

『そだよー?食堂はねー・・』

『いやいやいや!!食堂はもういいです!』


美鈴は青ざめた顔をし、慌ててその場にひれ伏した


『こ、これはし、失礼を!フランドール様!どうかお許しを!』

『あはは!いいよ、別にー。それよりフランのことはフランて呼んでー?』


フランは美鈴とは対称的に笑いながら応えた。


『そ、そんな畏れ多い!無理です!』

『むっ。・・・んじゃー、許さない!』


フランが、不貞腐れた表情になる。美鈴は慌てて


『わ、わかりました!フ、フラン様!』

『さま?・・・うーん・・・ま、いっか』


笑顔に戻ったフランを見て、美鈴はホッと胸を撫で下ろした

(・・なんとも笑顔の可愛い子だ。)


『フランね?フラン。て呼ばれるの好きなんだぁーあ!お姉様が呼んでくれてる名前だから!』

『フラン様はお姉様が大好きなのですね?』

『うん!美鈴も好きだよー?面白いし、フランて呼んでくれるし!でも2番目!お姉様が1番だから!・・ごめんね?』

『ハハハ・・ありがとうございます!』


申し訳なさそうにするフランに美鈴は礼をした。そして、フランと話していると自分の心が安らいでゆくのを感じた。今まで数重なる戦いに明け暮れて、徐々に荒んでいった心を純粋なフランの笑顔と一言一言により癒されていく。

(お姉様が羨ましいですね。こんな妹が・・・ん?お姉様?)


『フラン様。お姉様というのは・・レミリア・様のことですか?』

『そだよー?美鈴、なんでも知ってるねー!?』


(・・確か、主様が・・・レミリア様は・・もう・・)


美鈴は、紅魔館の近衛兵長である。日が浅い為、全体の事はわからなくても最近起きたそれくらいの情報は、もう既に入っていた。


『ーりん?めーりん?美鈴!?』

ハッ!

『な、なんですか?フラン様?』

(・・これは、時が来る迄伏せておいた方が良いのか?)

『美鈴?どうしたの?ぼーっとして?お腹空いたの?』

『そ、そうなんですよー!お腹と背中がくっつきそうです。』

『あはは!・・仕方ないなあ?フランの御飯あげるよー?』

『あ、いやいや!そんな豪勢な物・・』

『はい!』


ドン。・・・ッ!?


フランが笑顔で出して来た物・・それは古くなってカチカチになったパンとシチュー・・・いや、このシチューの様な物は、自分達が食べた後の残飯だった。


『フラン様?これは?』

『ん?今日の晩御飯だよー?半分っこ、しよー?・・・あれ?どうしたの?これ嫌い?それとも美鈴大きいから足りない?今日はいつもより沢山なんだけどなー。同じのもう一個ずつあるけど、あっちはお姉様のだから・・ごめんね?・・これ、全部食べていいから。』


美鈴は自分に対し怒りを覚えた。


(クソッ!・・私は馬鹿だ!主様の娘というだけで色眼鏡で見てた。そもそもこんな場所に閉じ込められて、良い境遇なわけない!しかも、この様子からそれを不遇ということすら分かってない。恐らくなにも知らないうちから幽閉され、毎日このようなことを・・・。・・・姉、レミリア様はこの屈辱の中、命を・・・。そして、この子もこのまま一生を?・・私は・・この子になにが出来る?・・せめて・・・一瞬でも自由を!)


『フラン様!』


美鈴は真剣な顔をし、フランと向き合う。


『ん?・・こっちのは駄目だよー?』

『フラン様!ここから出ましょう!』

『・・・?出る?』


フランは理解出来ていなかった。今まで一度も考えたこともないような事だった。


『はい!出るのです!』

『・・・でも、お姉様がまだ・・』

『レミリア様は死んだのです!!』


・・・ッ!?

(し、しまった・・)


『美鈴?・・今・・なん・・て?』

(・・もう全てを話そう・・フラン様の為に・・自由の為に)


美鈴は、目に涙を溜めているフランの両肩に手を乗せ、諭すように言った


『フラン様、落ち着いて聞いて下さい。・・レミリア様は、もう・・』『嘘だ!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だーー!!!・・嘘つき美鈴なんか嫌いだー!』


美鈴が言い終わる前に察したフランは、その大事な言葉だけは聞かない様に美鈴を遮り、大声で泣き喚いた。美鈴はそれでも大事な事実を伝える為、諦めなかった。


『くっ、フラン様。落ち着いて下さい!確かに主様が。そして次は妹のほう・・・だ・・と・・?』


(・・妹?・・ということはフラン様の事!?・・こんな年端もいかない子を?・・・なぜ?・・いや、理由がどうのではない・・)

『美鈴なんか嫌いだあー!でてけー!うわぁーん!』


フランは泣きながら細い腕で、か弱い力で、それでも力一杯美鈴を殴り付けている。


(・・そうだ。理由どうのではない。こんな純粋で、幼いフラン様を殺す?私からすればそれだけで大罪だ。それにレミリア様の件も、この目で見たわけではない。・・・私は・・)


(フラン様にあの無邪気な笑顔でいてほしい!)

(フラン様に世界を教えたい!)

(フラン様に幸せになって欲しい!)

(フラン様をこの境遇から救いたい!)

(フラン様を悲しませたくない!)

(フラン様を死なせたくない!)


(・・・なら、やることは1つだ!紅・美鈴!!)


『フラン様!!』


美鈴が大声で呼ぶとフランはビクッとして、一瞬泣き止んだ。


『申し訳ありませんでした!レミリア様は生きてます!嘘をついてすいませんでした!お詫びにこれから私がフラン様をレミリア様の所へご案内します。そして、この先如何なる障害があろうともフラン様を守ると誓います!』


フランに落ち着きが見え始めた。


『グスッ。・・それは嘘じゃない?』

『この紅・美鈴!生涯、フラン様に嘘は言わぬと誓います!』

『・・・絶対だよ?』

『絶対です!・・・だから私のことを嫌いにならないでください。』


途中まで真剣だったのに、いきなり照れながら頼み込む美鈴を見て、フランは笑顔を取り戻した。


『仕方ないなあ。・・じゃあ、その代わりに早くお姉様に会わせて?』

『お安い御用です。』


美鈴は深々と頭を下げ。フランを背中に乗せ地下牢を出た。



〔図書館隠し部屋〕




外では、主とパチュリーが話している。レミリアは息を殺しながらも、この時間を退屈していた。


(・・にしても、暇ね。・・時間は余りないってのに・・。そうだ!折角これだけの吸血鬼に関しての本があるんだし、これを読んでみましょう。・・・なにかいいのが見つかるかもしれないわ)


すぐ分かる吸血鬼講座・・・

吸血鬼血液型占い・・・

私の彼は吸血鬼・・・・

おいしい血液型はB型・・・


・・・・・・・・・・。


(・・・ろくなのがない・・・・。ん?・・吸血鬼の弱点100選?・・・100もあるわけないじゃない。・・まあ、仕方ないか。嘘臭いけど見てみましょうか)


レミリアは本を取り、部屋の隅で寝転がり、蝋燭の炎でその本を読んだ。


《日光》灰になります。吸血鬼を殺すにはコレ!!

(・・・ならないわよ?私、昔遊んでたし・・・まあ、苦手は苦手だけど)


《水》泳げません。溺れます。沈めてしまいましょう。

(・・これは半分当たり。私、泳げない。・・でもお父様は泳げるわ。昔、川に溺れた私を助けてくれた・・・・・。お父様・・なぜ・・あの頃は厳しくも優しかった・・。)


《銀のナイフ》再生能力を低下させます。下位吸血鬼には特に有効。

(・・これは分からないわね。・・あ、ナイフ落ちてる!・・・試してみましょう。)

恐らくパチュリーが性質等、詳しく調べる為に使ったのだろう。レミリアは地面に落ちていた銀のナイフを拾い上げ、左腕を切り付けた。


・・シャッ!


(・・・普通に再生するんだけど?・・)

傷は痛みを感じる暇のないくらい、瞬時に元通りになった。・・・・


(あー!・・もう!!役に立たないわね!!デマばっかり!)


レミリアはナイフを布団の上に投げ、本を閉じて仰向けに寝転がり、パチュリーの帰りを待つ事にした。


(・・そう言えば、パチュリーって、小悪魔の事、こあって呼んでるわね・・・私はレミィ・・じゃあ・・・)

ガチャ。扉が開きパチュリーが入ってきた。問題なく、事は進んだというのがその表情から分かる。


『あ。パチェ。おかえり!』


レミリアは、ニヤニヤしながらパチュリーの様子を伺う。


『ただいま。・・・レミィ?仕返しのつもりかしら?でも・・・略すなら、《パチェ》じゃなくて《パチュ》よ?』


・・・ッ!?


徐々に顔が赤くなっていくレミリア


『わ、わ、わざとよ!?パチェ。の方が呼びやすいでしょ!?』

『・・はいはい。なんでもいいわ。さあ、続きをやるわよ?』

『ほ、ほんとよ!?間違いじゃないわよ?』


顔を真っ赤にし慌てふためくレミリアを見て、溜息を吐くパチュリー。


『もう。分かったって。・・・で、本題に移るわよ?主様が来た理由はレミィも分かってるだろうけど、次の儀式までの期間の話よ。』

『・・やっぱり。・・でも、その顔。時間は十分に取れたみたいね?』

『・・えぇ。なんせ吸血鬼を殺せるような大掛かりな儀式よ?時間は目一杯取ったわ』

『流石パチェ!頼れる参謀!私の友!で!?どれくらい?』

『・・今日入れて3日。』


・・ッ!?


『え?・・聞き間違いかしら?・・3日?それって明後日には、儀式が始まりフランが殺されるてこと?』

『・・・レミィ。大丈夫・・もし万が一、間に合わなくても私が儀式を行わなけれ・・』

『馬鹿!それじゃあ貴女が死ぬでしょ!?』


焦り、遮るレミリアに対しパチュリーは余裕の表情を見せ


『・・勿論、私も死ぬつもりはないわ。・・・それに私とレミィの2人なら、準備に3日なんて長すぎるくらいだと思わない?』

『・・そ、そうよね。1日余るくらいだわ。』


明らかに強がりだった。内心は2人共焦っている。

だが、何事も事を起こすのに焦ってしまっては良い結果はない。2人はそれを知っている。だからこそ強がり、お互いの心を落ち着かせた。


・・・ッ!?

・・・ッ!?


2人はなにか。憎悪の固まりの様な視線を感じた!そして2人は其方を振り返った。そこには・・。


泣きながら此方を睨んでる小悪魔がいた。


(・・忘れてたわ。)


『こあ?貴女、何を勘違いしてるの?』


パチュリーの問いに小悪魔は首を傾げる。


『こあ?貴女は私達がどうしても駄目だった時の・・最・終・兵・器。なのよ?切り札をアテにした策なんて、とんだ愚策よ?』


小悪魔が徐々に笑顔になっていく。パチュリーはそれを見て、レミリアにウィンクをした。


(・・流石パチェ。・・酷い。)


『レミィ?私達には最終兵器のこあがいる。安心して策を練るわよ?まず、美鈴については確実性もなく、最悪相手に情報漏洩する恐れがあるから漏れても問題なくなるまで後回しにするわ。』

『と言っても他の兵は皆、お父様に忠誠を誓っている。他に屋敷にいる人員は・・・メイド?くらいよ?』

『そう。メイドよ?』


・・ッ!?


『・・はああぁ??パチェ?頭打ったの?一回休憩する?メイドなんて戦えるわけないじゃない!スプーンとフォークで剣に挑むの!?馬鹿げてるわ!』

『レミィ、惜しい!・・ナイフよ。』

『は?』

『しかも、銀製のね。』

『・・・あー、あの本に書いてた?弱点てやつ?あれはデマよ?無駄よ?試してみたもん』

『そう、無駄よ。・・・貴女には・・ね?』

『え?』

『貴女は元々人間だった十六夜様と元から吸血鬼の主様の子供。十六夜様は眷属になったとはいえ、大元は人間。貴女はほぼハーフの吸血鬼。・・そうね、7対3て所かしら?だから、貴女には吸血鬼の弱点に対し、ある程度の耐性はあるの。その分、吸血鬼としての資質は純血より劣るけどね。・・それに、貴女が儀式前まで毎回乗っていた魔方陣、あれは本来物凄い激痛を伴うのよ?平気な貴女を見て、正直驚いていたわ。』


レミリアは、余り納得してないようだった。それを見てパチュリーがナイフに向かい詠唱を始めた。


『銀製のナイフ・・これだけでも十分だけど、これに少し魔法を帯びさせたらかなりの物よ?軽く切って試してみる?』


レミリアは、むっとしながらナイフを手に取る。


『こんなの効かないって。私達吸血鬼には魔法耐性もあるのよ?』


グサッ!!


レミリアは左腕を思い切り刺し、そのまま切り裂いた。


『・・ほら?なんとも・・・あれ?』


傷は塞がれず、血が物凄い勢いで出ていく。次第に出血と共に痛みも感じてきた。


(あ、あれ?)


『レミィ!!?』


パチュリーが慌てて解除魔法、治癒魔法を掛ける。


『もう!軽くって言ったでしょ!?加減しなさいよ!』

『ハ、ハハ。・・ご、ごめん。でも、本当凄いわね。』

『貴女で、これだけのダメージなんだから純血ならもっとよ!?』


(純血・・フランの周りには銀を置かない様にしなくちゃ・・)


『・・ツッ!』


『レミィ!?まだ痛むの?』

『ん?大丈夫。』


(なに?今の頭痛。一瞬だけ意識が・・・。疲れかな?・・それより)


『パチェ?でもこのナイフ。誰が使うの?戦えるメイドなんてここにはいないわよ?』

『レミィ?貴女、大事な人忘れてるわよ?』

『大事な人??』

『ヒント。メイド長』

『・・・?』

『ヒント。作法、先生』

『・・・え?・・ま、まさか・・あいつ?・・って、あいつってメイド長なの?』


青ざめた顔をしたレミリアにパチュリーは静かに頷く。


・・・・。


『えええぇぇぇ!!』


レミリアは思わず席を立つ。


『貴女は、作法や魔法の訓練ぐらいでしか面識ないから、知らないだろうけど、この屋敷全体の管理は彼女1人によるものよ?』

『えええぇぇぇ!!』


この広い館を1人で管理。土台無理な話だが、パチュリーが嘘を吐くとは思えない。レミリアは素直に信じ驚いて、足を滑らせ倒れた。それを見ても無表情のままパチュリーは続けた。


『それに、彼女の強さは貴女もよく知っているはずよ?』


レミリアは倒れて、天を仰いだまま、右手で自分の顔を隠しながら応えた。


『でもなー?・・あいつ、妙にベタベタしてくるから苦手なのよねー?』


あいつだけは勘弁してくれ。レミリアの心の声が聞こえるようだった。


『レミィ?・・・妹様の為でも?』


・・・・。レミリアは少し考え。


『うー。・・仕方ないか・・でもあいつ生きてたんだ・・。』


(ッ!まただ!またこの頭痛。なんなのよ、これは!?)


『レミィ?』

『あ、ごめん。寝てないせいか、ぼーっとしてたわ。』

『頼むわよ?大事な話なんだから』

『で、なんだったかしら?』

『メイド長の話よ。・・彼女は十六夜様の妹ということも、私以外には伏せてましたからまだ標的にされず、生きてるわ。』


・・・ッ!!!


『え!?お母様と姉妹ぃ!?』

『元々は十六夜様と同じく吸血鬼狩人でしたしね』

『はぁぁ??なんですってぇ!?』


・・・レミリアはリアクション芸を身に付けた。


とりあえず、ここで連投は終わります

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