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新訳 東方紅魔記  作者: グレ
仲間
3/29

レミリアとパチュリー

[紅魔館図書室]



辺りには何百年かけても読み切れないであろう数の本。その本棚は広さだけでなく高さもあり、レミリアの身長では見上げても本棚の頂上が見えない。そして、自分が今まで付けられていた拘束具があり、その周りは自分の血で一面真っ赤になっていた。


『レミリア様。こちらへ』


・・・・。


そう言うとパチュリーは奥へ進みだした。そして、一番奥の本棚から一冊の本を抜き取った。


ゴゴゴゴゴッ・・・・ッ・・!?


パチュリーが本を抜き取ると、本棚が地下へ下がりだす・・・・。下がり切った本棚の裏に扉が現れた。


『いつの間にこんな物を・・・こんな物、お父様にばれたら。』


驚きと心配をするレミリアをチラッと見たパチュリーはクスッと微笑をし、レミリアを見据え


『お陰様でこちらの管理は全て任されておりますので、少々いじらせてもらいました。それにご安心を。この事を知るのは、私と使い魔のこあだけです』(こあ・・・小悪魔のことね)


レミリアが小悪魔に目をやると、小悪魔は笑顔で軽く会釈してきた。紅魔館に仕える者というよりは、完全にパチュリーに仕える。という感じだった。


(先ほどのお父様の様に殺気、敵意は全く感じないわね。・・・はっ!!そうだった!お母様!お母様は!?)


『魔女!お母様は!?お母様になにかあったの!?』


慌てて問い掛けるレミリアに対し、パチュリーは神妙な面持ちで冷静に宥める様に言った。


『レミリア様、まずは此方へ。ここに居ては3人共に命が危うい。』


『・・え、えぇ・・』


レミリアは自分の命、と言うよりは3人共に。と言う言葉に引っ掛かり、パチュリーと小悪魔の2人の命を心配し、自身の逸る気持ちを抑えつけ、扉の中へ入っていった。


[図書館隠し部屋]




其処は、机と椅子、布団、後は所狭しと乱雑に散らかった大量の本だけの部屋だった。その本の全てが吸血鬼関係の本だった。中でも、弱点、退治等に関する本は破れるほど読み尽くされていた。


『貴女・・・まさか?・・いや、それより』


『さて、何処からお話しましょうか・・』


レミリアはパチュリーのその言葉を聞き、抑えていた感情を解放した。


『先ずはお母様よ!お母様に何かあったの!?』


何よりも、先ずはその事だった。あの主の言い方。なにかがあったことは間違いない。


『自分があんな目に合い、殺されかけたというのに貴女という人は・・相変わらずですね・・・。少し・・安心しました。』

『いいから!早く!』

『分かりました。十六夜様の事からお話しましょう。・・ただ、その前に貴女に知っておきたいことが、あります。それは・・』


『十六夜様は(元)人間です』


・・・ッ!?


レミリアは驚いた。自分の知る母は確かに吸血鬼だった。地下に幽閉される前は、親子3人よく遊んだりもしていた。


『元々人間だった十六夜様を主様は眷属にし、正室に迎えた。・・眷属にする。と言うことは当時の主様は余程十六夜様を愛していたのでしょう。吸血鬼にとって眷属にするということは、そういうことです。』

『じゃ、じゃあ。フ、フランはどうなの?妃様の子で腹違いなのは知っているわ。妃様も元人間なの?』


パチュリーの表情に少し曇りが見えた気がした


『・・あの方は生粋の吸血鬼。ですからフラン様は純血。貴女は・・・ハーフ・・と言うことになります。』


レミリアはそれを聞き、色々と合点がいく。フランが産まれてからの自分の扱い、父の言動。だが、ハーフとはいえ自分も産まれてからずっと吸血鬼。それにフランのことは大好きで仲も良い。人間に対しても格別大きい差別心もない。だから何に対しても憎しみ等、負の感情は湧かなかった。むしろ、父が母を愛していた。それを聞くだけでレミリアは安堵していた。


(パチュリーの話で父が私を蔑む理由は分かったけど、それじゃあお母様は??)


『・・・レミリア様、単刀直入にいいます。乱心なさらぬよう、落ち着いて聞いて下さい。』

・・・・・

『十六夜様は・・主様により』


・・・・・


『殺されました』


・・・ッ!?

『え?』


(あの仲の良かった2人が?眷属にするほど愛した父が?そんな馬鹿な・・)


レミリアは膝から崩れ落ち、考えたがパチュリーの様子からは、まず嘘じゃないことは容易に分かる。しかし、どうしても母の死は信じれない事だった。


『魔女?嘘でしょ?そんな訳ないじゃない?』


嘘じゃないと分かっていてもレミリアはパチュリーに縋る他なかった。ただ、生きている。その言葉だけが欲しかった。


・・・しかし


『残念ながら事実です。亡骸の埋葬も終わり、遺骨も確認しました。』

『嘘よ!それは偽物よ!』


バシン!・・・ッ!?


レミリアはパチュリーに右の頬を掌で叩かれた。


『・・ご無礼をお許し下さい。しかし、全て想い出したくもない事実。冷静に聞いてください。それに、レミリア様!?先刻の主様を忘れたのですか!?』


レミリアは落ち着きを取り戻し、考えた。


(・・・先刻・・。そう、確かにあれは父であったが昔の父ではなかった。畏れ、憤り、焦り、まるで憎悪の固まり。母の死・・・それが事実としたら。・・何故、父は変わり、何故、母を殺したのか・・それを聞くべき)


『魔女。取り乱してごめんなさい。まずはとりあえず落ち着いて全ての話を聞くわ?』

『此方こそ、大変なご無礼を。後で如何様な罰も受けます。申し訳ございませんでした。』


そう言われてレミリアは、頬がジンジンして来ていることに気付く。結構強めに叩かれた様だった。


『ま、まあ。今回のは不問でいいわ。では質問を続けるわ。何故、お母様はお父様に殺されたの?』


パチュリーの表情から苦悶と哀しみが伝わる


『単純な理由です。十六夜様はレミリア様への実験に反対し、主様に抗議。しかし、逆に怒りを買い。殺された。反対する身内を殺すことで、もう誰も異を唱えられない様に・・・』


・・ッ!?


(見せしめ?そんなことの為に?)


『主様は大戦後、幻想郷の全てを手に入れたと同時に、〈失う〉という恐怖も手に入れてしまいました。つまり〈死〉を恐れる様になりました。吸血鬼と言えど死ぬ事は勿論あります。その手に入れてしまった、不要な恐怖を取り除く為、〈不老不死〉を手に入れる事にした。・・それがあの実験。・・しかし、あの実験は十中八九失敗します。それに失敗=死。レミリア様が生きていたのは事前に魔力を弱めたというのもありますが、理由の八割はレミリアが純血ではなかったから。アレは、あくまで吸血鬼用の実験。不純物のあるレミリア様だからこそ助かった。ですが、次はフラン様・・ばれないように魔力弱めた程度では、純血のフラン様では苦しめる時間を伸ばすだけ。結局は・・・死にます。』


・・・ッ!!?


(フランが・・死ぬ?・・・それだけはさせない。私は、ずっとあの子と居て幸せだった。腹違い?そんなのは関係ない。私の幸せを奪わせない。それに・・・)


『・・でもフランの母親。スカーレット妃なら娘の窮地な』『駄目です!!』


・・・ッ!?


『えっ?』


ギリッ。パチュリーの口から血が滴り落ちていた。


『あの方が・・・妃様が、主様の不安を煽り。付け込み。唆せ。不老不死の儀式を伝え、実行に移る事になったのです。・・そしてその儀式の実験に貴女達2人の娘を使えば良いと・・・』


・・・ッ!?


『妃様は、全て計画していたのです。この儀式を決行しようとすれば、十六夜様が止めるということも。止めた十六夜様がどうなるか。この儀式が失敗することも。・・・全て!』

『ちょ、ちょっと待って?私やお母様が邪魔なのは解るわ?でも、どうして貴女やフランまで?』


『・・・妃様。あの方は嫉妬の固まりの様なお人。その対象は我が子フラン様も例外ではありません。・・あの方にとっては、主様と関わりある女性は全て敵。つまり、この儀式の決行により、止めた十六夜様を殺し、儀式で娘2人を殺し、失敗の責で私を殺す。そうすれば、この紅魔館に権力を持つ女性はいなくなる。後は力のない従者達をあらぬ罪で消して行くことは容易。十六夜様を見せしめで大勢の前で殺してもらい。他からの邪魔な忠言を無くす。これを進言したのも、妃様・・・』


・・・・。


『貴女も、このままでは殺される。だから私を助けたと?』


・・・ッ!?


『我が身、可愛さではありません!私は!十六夜様の!!』


パチュリーが声を荒げる。


(我ながら、意地悪な質問をしたわね。パチュリー・ノーレッジ・・彼女はお母様に拾われた身。そして、お母様へのその忠誠心を認められて図書館の管理の全てを任された。・・そしてこの周りの本・・・恐らく・・・思惑は・・・・仇討ち。)


『ごめんなさい。もう言わなくていいわ。少なくとも、今の私は貴女と同じ気持ちよ。お母様を殺したのは許せない。それに・・・私からフランまで奪うのなんて黙って見てられないわ。』


『・・・一度殺しかけた私を信じてもらえるのですか?』


『・・信じるもなにも。貴女が私に嘘をつく理由がないわ。それなら、あんなボロボロになるまで治癒魔法なんて掛けず、見殺しにするでしょ?私を利用し、助かろうとする。それも考えたけど、そうではないという理由がある目の前にある・・』


『・・・貴女・・・泣いてるわ』


『え?』


パチュリーは偽りなく伝える、ということに必死でありのままを伝えていた。それにより、いつも無表情なはずの彼女が感情を露にしたせいで喜怒哀楽の全てが表情に出ていたのだ。そんな必死だった彼女は自分の涙にすら気付いてなく、レミリアに言われて頬をつたうソレに気付く。レミリアに対し冷静になれと言っていた自分が、内心一番取り乱していたのだ。それを見たレミリアは彼女を信じる事にした。


(さて、とは言ったものの。どうすれば・・・パチュリーが私を助けた理由。恐らくはお母様への忠義。罪滅ぼし。だが、賢い彼女がそれだけでこんな大それた事するかしら?)


『パチュリー?なんか良い策でもあるの?』


・・・ッ??


『え?パチュ?え?な??な?』


『えなな?じゃないわよ!此処迄するからには、なんか良い策でもあるの?って聞いてんの!?』『あ、ああ。そ、そうですね。いくらレミリア様でも主様と正面から挑むのは無謀です。まずは戦りょ』『待って!パチュリー?その敬語止めてくれない?今の私達は上下関係なんて必要ないわ。要るのは、腹を割って話せる対等な仲間。お互いが信用出来る関係。そうじゃないと、この大仕事はうまくいかないわ。だから貴女も私をレミリアと呼んでちょうだい?』


『し、しかし・・』

『い・い・か・ら!じゃないと、私は降りて一人でやるわよ?』

『・・わ、わかりま・・』

ギロッ・・・

『わ、わ、わかったわ。レ、レミリア』

『よし!じゃあ、続けて?』


パチュリーはホッとしていた。レミリアは、普段その様な事は気にしない。だが、今回は奇跡でも起こらない限り勝てる戦いではない。腹を括る為にもパチュリーが遠慮しないよう対等な立場で意見をぶつけて最良の選択をしたかったのだ。


『じゃあ、続けるわ。まず圧倒的な戦力差。此方はこあを入れても三人。彼方は館内だけでも数百の一般兵に加え、主様、妃様、五人の近衛兵。でも、恐らく妃様は参加しないはず・・・余程の事がない限り・・。それより厄介なのは、常に身辺にいる近衛兵達。一人一人が、こあに匹敵するわ。その中でも最近、近衛兵長になった、新参者の【ホン美鈴メイリン】。・・・こいつはヤバイわね・・私でも勝てるかどうか・・。』


『生まれついての魔法使いの貴女が、そこまで?そいつ、そんなに強いの?』

『まず、人間じゃないわ。・・・妖怪よ。その余りの強さに付いた呼び名が〔龍〕。紅魔館に仕えて初日に礼儀がなっていないと言って、前近衛兵長と勝負てことになったんだけど、結果は1分持たずに美鈴の勝ち。・・・こあ相手なら瞬殺ね(笑)』


『・・・その美鈴てやつ、どれくらい仕えてるの?仕官した理由は?』

『確か・・まだ1週間経ったか、経ってないかくらいだと思うわ。理由は・・確か・・・暇潰し?みたいなことを・・』


(日が浅い・・理由もない。・・・紅魔館に対して忠誠は薄そう)

『そいつ、こちら側に引き込めないかな?』

『うーん・・自由気儘で雲の様に、掴めないやつだから、余程の利益が此方にないと、好き好んで弱い方に付かないと思うわよ?』

(・・無理か。だけど、その力。欲しい。そうすれば、近衛兵に対する力は確保出来る。後は、小悪魔に一般兵の足止め。私とパチュリーでお父様を・・・)


・・・・・・。ダダダダダダダッ!ガチャ!


『パチュリー様!大変です!主様が図書館に向かって来てます!』


小悪魔が、息を切らしながら顔を真っ青にして飛び込んで来た。パチュリーは小悪魔に冷静に指示を与え


『レミィは、ここにいて!?』

・・ッ!?

『え!?れ?れ?』


レミリアのリアクションを見てニヤつきながらウィンクをして出ていった。


・・・・・・・・。


『レミィ・・・か。・・・悪くない・・』


レミリアは顔が真っ赤になっていた。初めて呼ばれた、あだ名。彼女は嬉しかった。

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