表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新訳 東方紅魔記  作者: グレ
紅魔記・継 前章 命の価値
23/29

紅魔館の在り方

[図書館内部]


傷の手当てを受けていた美鈴がレミリアに気付いた。・・と、云うよりは待っていた。


満身創痍。


立つことすらままならない彼女は、ずっと心配していたのだ。

行きたくても行けない・・・、そんな悔しさを抱えながら我慢し、祈り、待っていた。

その待ち人がついに来た。


『レミリア様!?・・と、いうことは・・。』


レミリアを見て、美鈴は勝利を確信した。敗北は死。

つまり、ここに現れたのが主ではなくレミリアと云う時点でレミリア達は主に勝ったのだ。


『くぅ〜〜〜ぅ・・・・』


『・・やったあああぁぁ!!』


美鈴は大喜びした。

感無量。今までの不安、悔しさ、そういったものが全てなくなり、歓喜に変わった。

・・報われる。そう思った瞬間でもあった。


『流石お姉様!!』


妹フランも喜び、レミリアを称賛しつつ、美鈴とハイタッチしていた。


・・・・・!?


そして喜ぶ美鈴が、後ろのパチュリーにも気付いた。

パチュリーの表情は美鈴とは対称的に曇っていた。


『え?・・・』


パチュリーの姿を見て、美鈴の表情が変わった。

というよりはパチュリーの抱えた[ソレ]を見て、笑顔が消えた。


フランも美鈴の変化を見てパチュリーに気付き、パチュリーに目をやった。


『そ、それ?咲夜?』


怖くて聞けない美鈴の代わりの様に、フランが震えた声でパチュリーに尋ねた。


『・・・えぇ、そうよ・・十六夜咲夜よ・・・』


パチュリーは下をみたまま答えた。

美鈴はそれを聞いて困惑した。そして、疑問に思った事をそのまま伝えた。


『・・え?なんですか?それ?勝ったんですよね?なんで咲夜さん凍ってるんですか?』


・・いや、恐らく美鈴は咲夜の死を解っている。

・・けど、それを信じたくない気持ちが強く、自分の考えに対して否定が欲しくパチュリーに聞いてきたのだろう・・・その証拠に美鈴の目は涙目になっていた。


『・・咲夜は・・・死んだわ』


パチュリーは声を震わせながら言った。隠す気はさらさらない。共に戦った仲間に残酷な真実を告げた。


『嘘だあああぁ!!あの咲夜さんが!?そんなわけないじゃないすか!!』

『・・レミリア様!?嘘ですよね?私を騙して笑おうとしてるんですよね!?』

『レミリア様!?皆、大丈夫ていったじゃないですか!?』


美鈴が号泣しながら縋る様にレミリアに聞く。

レミリアの予知。

レミリアは戦い前に大丈夫と言っていた。それを信じ、皆戦って来たのだ。


『ねぇ?レミリア様!レミリア様!?』


・・・・・


美鈴は、立ち上がることも出来ない体を腕の力だけで這いずり咲夜に近寄っていく、そして咲夜の死顔を確認した。

・・眠っている様にも見える。

・・しかし、[ソレ]は明らかに死んでいた。


『うわああああぁぁぁ!・・なんで!?なんで?なんでなんですかー!!?』


力のない手で咲夜を抱えるパチュリーの足を殴りながら号泣している。

パチュリーはそんな美鈴をただ見つめることしか出来なかった。


『美鈴・・』


フランが美鈴を心配する・・。

フランは、咲夜の事嫌いではないが、さほど好感を持っていない。だが美鈴が悲しんでる。

・・・それが辛い。という感じだった。


『ちくしょう!ちくしょう!私が!私がいれば!!私が弱いから!?ここで休んでおくんじゃなかったんだ!!』


美鈴は自分を責めだした。自身の弱さを呪い。決断を後悔し。己の全てを否定した。


・・・・。


『ふざけないで!!』


静観していたレミリアが美鈴に対し怒鳴った。


『そんな体の貴女がいても結果は同じだったわ!慢らないで!?』


キッ・・。


美鈴はレミリアを睨んだ。自分はレミリアを信じ、そうした。

・・・結果は咲夜の死。

レミリアの言う事と違っていた。美鈴は自身への責めをレミリアへの責めへ変えた。


『レミリア様!貴女は私を騙したんですか!?』


(騙した・・・。そう、美鈴のせいじゃない。私のせい・・・私が、気を抜いて予知をやめていた。慢っていたのは私・・私なのよ。全ての責任は私にある。・・・だから私が)


『ごめんなさい、美鈴。美鈴のせいじゃないのよ?全ては私なの・・。私は読み誤った。咲夜は私を助ける為に・・』

『この間違いは許されるものじゃない。貴女達にも、咲夜にも。でも、私は咲夜に助けられた。・・・だから今度は私が咲夜を助ける番なの』


素直に詫びるレミリアに、美鈴は少し反省し、冷静になった。

そして、その最後の言葉を聞き直した。


『え?助ける?』


『そうよ。』


レミリアは美鈴に八雲・紫の話をした。その全てを。


・・・・・・。


『八雲紫・・。分かりました。じゃあ、まだ咲夜さんは生き返る可能性があるんですね?また・・話せるんですね?』


美鈴が涙目を拭いながらレミリアに尋ねた。


『そうよ。絶対に話せるわ。そして・・私が・・今度こそ・・・最高の運命に導くわ!』


美鈴は泣くのをやめ、強く頷いた。

咲夜と生きたい。彼女もそう強く想う者の一人だった。

人の価値と云うものは死んで解るものとよく言うが、咲夜という人間の価値というものはかなりのものだったということが伺える。


『レミィ?美鈴?・・それでなんだけど。』

『八雲紫探しを逸る気持ちは解るわ。でも、勝ったとはいえ、主を失ったばかりの紅魔館は内部がボロボロ。足場を固めず、塔を作ればその塔は倒れるわ。八雲紫探しの前に館の事を決めて地盤を固めておくのが得策と思うんだけど。レミィ?いいかしら?』


『・・えぇ、もうある程度は考えてるわ』


『流石ね。それじゃ、一つずつ、課題を出すから一問一答形式でお願いね?私も早く八雲紫探しをしたいから』


『分かったわ』


『まずは今までの兵士、メイド達の妖怪や人間はどうするの?』


『・・皆、クビよ。解放して自由にさせてあげなさい』


『え?』


『代わりに妖精メイドを雇うわ。誰がいつ裏切るか分からないのに、下手に力あるものを雇うのは危険』『これから大掛りな捜索になるかもしれない。もしかしたら屋敷内に、小悪魔しかいなくなるときが来るかもしれない。そうなった時に力のある兵が反旗を翻したら小悪魔一人では手に余るわ。その点、妖精メイドなら力もないから問題ないわ。』


『・・思い切った提案ね。レミィ?でも、そうなると外部からの守りが弱いわよ?この世界のトップの象徴である紅魔館は常に狙われている。私達がいればいいけど、留守中に館内がそれではいくらなんでも・・・。』


『頼れる門番がそこにいるでしょ?』


レミリアがパチュリーに治癒されてる美鈴のほうに目をやる


『わ、わ、わたしですか?』


美鈴がびっくりして聞いてきた。


『そうよ?貴女なら気配を読む事に長けている。誰よりも早くに敵の接近に気付く。しかもたかが門番に貴女の様な強者がいたら、内部はどうなってるだ?てなるでしょ?敵の戦意も削げる。それに貴女が門番なら侵入者なんて0でしょうしね?私達は外敵を気にする必要はなくなるわ』


『・・過大な評価を頂き、身に余る光栄なんですが。』


『どうしたの?やっぱり近衛兵から門番では不服?』


『いや、そうではなく・・』

『勝手ながら少し休暇をいただけないでしょうか?』


ッ・・・!?


美鈴の言葉にレミリアは驚きと怒りを覚えた。


咲夜を助ける為の大事なこの時期に休暇願い。これから一丸となり、紅魔館を守りつつソレに当たろうという時に。


『貴女・・なにいってるかわかってるの?』


レミリアが微かに殺気立っていたのを美鈴は気付きながらも臆さず弁解した。


『今回の戦いで、自分は全く役に立てませんでした!こんな非力な自分を評価していただくのは嬉しいです!』

『・・・だけど、このままじゃ、自分で自分を許せないんです!更に鍛え上げ、私も皆を守れるようになりたいんです!』


・・・・・・。美鈴は、未だに後悔をしていた。レミリアに言われたからではない。その最後の戦いまで立ち会えなかった自分を単純に恥じていた。

力不足。今まで感じた事のない無力感。それを二度と味わいたくない。

咲夜を救う為にも、レミリア達の力になる為にも、自身がまず力をつけることが必要と考えた。レミリアも美鈴のその気持ちは理解した。故になにも言えなかった。


『レミィ?・・いいんじゃないかしら?』

『八雲紫の件、図書館だけじゃ限界があるわ?美鈴には修行も兼ねて、外での情報収集をしてもらっては?』


パチュリーの提案にレミリアは少し考えた。これでは自分達は紅魔館から動けない。

だが、パチュリーの言う通り、外部からの情報も欲しい。レミリアは迷いながらも


『そうね・・わかったわ。じゃあ美鈴は今すぐに外での情報収集と自己強化に務めて!』


レミリアはその提案に乗る事にした。決め手はなによりも咲夜を優先したからだった。

最悪、自分達が出ていく事になり紅魔館が奪われてもそれで咲夜が生き返るならそれでいい。

レミリアは紅魔館と咲夜を天秤に架けたら圧倒的に咲夜に傾いていた。

世界のトップという地位。それよりもたった一人のメイドを選んだ。


『レミリア様!ありがとうございます!それでは今すぐ取り掛かります!』


『・・美鈴いっちゃうの?』


『大丈夫ですよ?フラン様?私、超パワーアップしてきますから!少しだけ待ってて下さい。直ぐに戻ってフラン様を守りますから!』


フランは美鈴の笑顔を見て不満そうな表情から笑顔になる。


『待って!』


パチュリーが急に呼び止め、美鈴は慌てて立ち止まった。


『レミィ?主になったからには威厳というものが必要になるわ。だから美鈴、貴女はレミィをお嬢様。フラン様を妹様と呼びなさい。主の名前を呼ぶというのはそれだけで恐れ多いものなのよ?・・勿論、私もそうするわ?』


『私は良いですけど。・・フランさ、じゃなくて妹様。いいですか?』


成り行きとはいえフランが呼んで欲しいと言った名前・・。美鈴はフランに申し訳ない気持ちになりつつ聞いてみた。


『・・お姉様の為だからね。嫌だけどいいよ!』


『ありがとうございます!』


美鈴は少し不貞腐れてるフランに深々と礼をし、頭を撫でて機嫌をとった。


『パチェ、待って!』

『パチェ。貴女は、今まで通りにしなさい。貴女は主である私の右腕であり参謀、貴女にも威厳は必要でしょ?』


・・・・。


パチュリーは少し考えたが、特に意を唱える必要はないと判断し頷いた。


『私が参謀・・。責任重大ね・・』


『では!いってきます!お嬢様!妹様!パチュリー様!』


美鈴は走って館を後にした。

・・早く強くなりたい。

・・早く生き返らせたい。今の彼女は一分一秒が惜しかった。


『・・レミィ、次で最後だけどフラン様の部屋は、貴女の部屋の隣でいいかしら?流石にいつまでも牢獄には入れてられないわ』


『そうね・・ッ・・・!?』


レミリアの頭に激痛が走る。

・・・予知だ。


(・・意志してなくてもくる予知て、大体重要なのよね・・今回はなにかしら?)

(フラン!?)

(これは、あの時の!)

(フランに部屋を与えるなってことなの!?)

(フランに自由を与えたら、必ず・・。結果は同じ、フランの死・・・。この予知をフランに伝えたとしても同じ・・・)

(このまま部屋を与えず、地下牢・・・?これしかないの?・・・・・・・ 。)


・・・。


・・・。


『パチェ、・・フランにはまだ地下牢に居てもらうわ』


・・・!?


『・・・予知を・・見たのね?』


パチュリーは一瞬驚いたが、レミリアが苦しそうに言ってるのを見て本心ではない事に感付いた。


『えぇ・・・そうよ。どうしても、それしか方法がないのよ・・』


『ええー!!なんでー?お姉様ー!?フラン、また一人になるのー?』


フランが文句を言っている。これからは自由と思っていたフランはレミリアに少し裏切られた様な感情を抱いた。

そんなフランにレミリアは近づき、頭を撫でた。


『ごめんなさい。フラン。咲夜が生き返るまでの間だけ・・その間だけ我慢してちょうだい?お願い・・』


辛そうに言うレミリアに対し、フランは自分が我儘だったのかと思い、少し反省しながらもは不満を押さえ切れず。


『ぶーー!わかったよ!咲夜、生き返るまでだからね!』


『いい子ね、フラン。ありがとう。』


フランはレミリアの辛そうな顔を見るのが嫌で渋々了承して、ぶつぶついいながらも見慣れた地下牢へ向かった。


・・・・。


『パチェ、あの子の牢に、封印魔法で鍵をしておいて。・・絶対、中からは出れない様に・・』


『・・・そこまでするの?』


流石にパチュリーも不満そうだった。


『・・お願い』


レミリアの目から涙が落ちた。

・・それを見たパチュリーはそれ以上なにも言えず、言われた通りに鍵をかけにフランを追い、地下牢へ向かった。

小悪魔もパチュリーを追った。


・・・・。


『・・なにが運命を操るよ・・運命に振り回されてるだけじゃない・・・こんな力・・・』


一人になったレミリアは、たった一人の妹すら自由に出来ない。幸せに出来ない。小さな願いすら叶えれない。そんな自分の無力さに涙した。

・・・昔はこういう辛い時、彼女には咲夜が居た。

・・しかし、今の彼女は一人だった。ただ一人で悔しくて泣いていた。



微笑んで死んでたはずの咲夜が悲しんでるように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ