決着
ダダダダダダッ!タッ。
・・・ッ!!
咲夜とパチュリーは屋上に着いた。
・・・二人が、そこで見た光景は、月明かりに照らされながら串刺しになっている、まったく動く気配のない、まるで人形の様な血塗れのレミリアだった。
『ほう。妃を倒したか?・・だが・・・遅かったな?』
・・・・・。
『お嬢様あああぁぁ!!』
咲夜が我を見失い、泣き叫びながら主に突進する。
主は意にも介さず、それをつまらないものを見る様な目付きで見つめる。
カチ
咲夜は時間を止め、妃を倒したナイフと同数・・・いや、それ以上のナイフを繰り出す。逃げ場はない。
・・・動き出す時間。
・・・!?
主は少し驚きはしたが、コウモリになり全てを躱した。しかし、それを見透した咲夜は更に時間を止めて、また繰り出す。
・・・・・だが、それも無意味だった。再度避けられた。そして、余りのスピードに咲夜は一瞬、主を見失う。
『なっ!?』
主は驚く咲夜の背後から現れ、爪で肩の辺りを刺した。
グサッ。
『ガハッ!』
『・・ふむ。これは私の妻だったやつの手品か?手品は種がわからぬから成功するのだ。種がわかる手品など、ただの子供騙しだ。・・・それが貴様の切り札か?実に下らん』
(・・・グッ)
咲夜は悔しがっている。
自分と姉との残された、たった一つの絆。
そして、自分が初めてレミリアに褒めてもらった宝。
自分にとって誇れるもの。
掛け替えのないもの。
命を賭けたもの。
それを手品、子供騙し、と言われ、軽くあしらわれた。
『・・・そうか、あの時。美鈴を逃がしたのも、おまえか?』
『うわあぁ!』
咲夜は、ただ、ひたすらに主を切り付けた。
・・・しかし、その都度、逆に切り付けられ、刺されていった。
グサッ!
・・ッ!?
・・・主がナイフを手の平で受け、刺さりながらも止めた。
咲夜の動きも停止した。
『魔力を帯びた銀のナイフか・・・。貴様の攻撃中に後ろで臆病者のハエがなにをゴゾゴゾしているかと思えば・・・下らん補助を』
バシン!
咲夜を平手打ちで吹き飛ばした。
『こんなもの100年前には克服しておるわ。私を誰だと思っている?やはり、貴様達では愉しめないようだな?』
そういうと主は吹き飛んだ咲夜に向かって行き、目の前で拳を振り上げた。
咲夜は玉砕覚悟の構えをした。相討ち狙いでナイフを急所に刺すつもりだった。
『咲夜!逃げなさい!レミィは生きているわ!?貴女がレミィを信じなくてどうするの!?』
・・ッ!?
カチ
・・・ガシャアアアン!!
床に穴が空いた。美鈴の両腕を粉砕した拳、美鈴より体力に劣る咲夜なら即死だっただろう。
咲夜はパチュリーの隣まで退いた。
『・・パチュリー様、申し訳ございません。』
(・・情けない、誰よりもお嬢様を尊敬し、愛し、忠誠を誓っているはずなのに。)
・・・咲夜は自分が情けなくて堪らなかった。
パチュリーに感謝しつつも物凄い自責の念が咲夜を襲った。その忠誠心故に。
『仕方ないわ。レミィの事がなによりの貴女だからこそ取り乱したのよ。・・私も熱くなって、補助とかしてたし。ごめんなさい』
『いえ、・・そんな事は。しかし、お嬢様は本当にあの様子で生きているのでしょうか?・・・・・いや、生きています。でも、あの様子じゃとても動けないでしょうが』
咲夜が辛そうな目でレミリアを見ている。今すぐにでも近くにいきたい。
そして、生存確認をしたい。癒したい。・・・そんな目をしている。
『そうね。とりあえず、あの化け物を二人でどうにかしないと・・近寄る事も出来ないわ?』
・・・・・。
主は黙って話を聞いていたが、溜まらず二人を諭す。
『レミリアが生きている?二人でどうにかする?・・・フハハハ。残念ながら、どちらも・・・無理だ。』
『1つ、蟻二匹で獅子に勝てる道理はない。その前にはキリギリスが一匹で獅子に挑んで、あのざまだがな?』
どうして吸血鬼というのは、こう傲慢なのか?歳を重ねるとレミィも、あーなるのか?と、違う不安がパチュリーに過った。
『1つ、あの槍、グングニルには吸血鬼の再生能力を無効にする力がある。そして、あの出血量。治癒なしではもう手遅れだ。なにより今まで奴以上に強者の吸血鬼達があの槍により数多く殺された。生きてた者はいない。』
『・・これでお分かりいただけたかなあ?懸命な大魔術師様?』
レミリアを弱者扱い。レミリアは死んでいる。その言動に咲夜の髪が逆立った。
『パチュリー様、私はレミリア様を信じていますし、分かっています、だけど、この前の男だけはどうしても許せそうにないです』
『同感ね。こうなったら、蟻の怖さを教えてあげましょうか。』
『はい!』
・・・。
・・・・。
(え?)
レミリアはある景色を見ていた。
走馬灯・・・。もしくは死後の世界・・・?。
玉座に座る自分
対峙する赤白の巫女
戦う二人
赤い空
こ、これは?・・・。
・・予知!?あいつは誰?・・そしてあの空は?・・私が玉座に?
・・・私。・・生きてるの?
レミリアの目が薄く開いた。おびただしい量の血が見える。
痛みに耐え、震えながら少し顔を上げた。
『・・・無駄だ。蟻の怖さとやらはどうしたのだ?』
咲夜とパチュリーが主と交戦していた。
咲夜は左腕がダランとしている。恐らく折れているのだろう。
パチュリーは頭からもの凄い血が流れていた。二人とも衣服は真っ赤だった。
レミリアは予知を使う。・・・このままじゃ二人が死ぬ。
(なんとかならないの?でも。動かない。・・いや、なんとかしなきゃいけない!)
(私が・・守る。)
(私が・・・運命を変える!!)
そう決心した時、パチェがレミリアに気づき、レミリアに目をやり、目が合った。
レミリアの目を見て、なにを感じたのか、パチェが小さく頷いた。
『咲夜!少し時間稼ぎをお願い!』
『はい!』
パチュリーは詠唱を始めた。
『やっと、切り札を出すか?こんなことをしなくても、待ってやるものを』
そういいながら、主は咲夜の攻撃をことごとく躱していた。
いつでも二人を殺せる。だが、わざと手を抜き、パチュリーの魔法を待った。
・・・・。
・・・。
『咲夜!離れて!』
素早く主から離れる咲夜。
『・・・これで、私を倒せれなければ、もう貴様達と遊ぶのは終わりにするぞ?』
主は余裕の笑みを浮かべ両手を広げ、待ち構えている。
『どうぞ、ご自由に?』
パチュリーはそういうと主を目掛け、物凄い大きさの魔力の塊を放った。
と同時にレミリアを見た。
・・・・。
・・・・。
(・・・・!!・・そういうことね?・・全く。人使いが荒いわね。)
レミリアは体に刺さったグングニルを引き抜こうとする。
手が焼き付く。・・・しかし、不思議と痛みは感じなかった。
なぜ生きているか?
予知が外れたのか?
あの予知はなんだったのか?
わからないことだらけだが今は主を倒す事だけを考えた。
左手で主のグングニルを抜いた。
そして・・
(咲夜・・・本当はもっと早く貴女に見せたかった。これが!魔法の訓練の成果よ!)
レミリアは右手に全魔力を集中させた。大気が震えだす。
(見よう見まね。・・・出来るかどうかわからない。・・・いや、出来なくちゃ駄目だ!父の技、娘の私に出来ないわけがない!)
(・・私は・・父を超える!)
魔法の渦が、徐々に槍の形になっていく。
・・・ッ!!
(出来た!!)
(私のグングニル!?)
主のソレと同じ形。違う点は一つ。
主のグングニルは禍禍しい闇の黒い魔力に包まれた槍。
それに対しレミリアのグングニルは綺麗な赤い槍だった。それは禍禍しくもあり神々しくもあった。
グングニルに生成に成功。それとほぼ同時に主の声が聞こえた。
『・・残念だったな?パチュリー。御覧のとおり無傷だ。・・さて、終わりにしよう』
魔力の渦を払い除けた主が姿を現す。
『残念だったわね?目的は倒すことじゃないの』
『なに?』
『目眩ましと時間稼ぎよ!』
『レミィ!!』
『ああぁぁぁ!!!』
主に二本のグングニルで突撃するレミリア
『勝利を約束するグングニル。一本と二本なら、どちらに勝利をくれるのかしら?』
グサッグサッ!
『うおぉぉぉ!そんな馬鹿な?貴様!?なぜ生きている!うおぉぉぉ!』
そのままの勢いで屋上から落ちる二人。
バシャァーン!!
二人は川へ落ちた。
『ぐおぉぉ、よりによって川だとー?まさかここまで計算を?』
(そういえば流水も弱点だったわね・・私も泳げないし、このままじゃ死ぬかもしれないけど、今は倒すことだけを!)
『そうよ!全て計算よ!』
(たまたまだけど、悔しがらせたいから、まあいっか。)
『こんな物ー!!』
主は自分のグングニルを触り、魔力を解放して分解させた。
そして、レミリアのグングニルに自分の全魔力を注ぎ、粉々に砕いた。
『え?そんな!?』
同じ物を創れた。
と云うだけでレミリアと主の所有魔力には、まだまだ差があった。
主はレミリアを振りほどき、直ぐ様川を出た。主は流水すらも克服していた。
『あ!』
泳ぐ事の出来ないレミリアは沈んでいく。
・・しかしレミリアは冷静だった。
(でも・・・こういう時は、きっと・・・)
『はあ、はあ、はあ。おのれー!魔力がもう余りない。傷も癒えない。ここは一度・・』
『逃がさないわ!』
待ち構えていたパチュリーが拘束魔法を唱えた。
『こんなものが私に通じ、・・ッ!』
『あなたの今の魔力じゃ、そう簡単には解けないわよ!?そして・・・空をみなさい!』
主が見上げると日が見えていた。
『ッ!あ、朝日だと?』
『グアアアア、ま、まずい、このまま、では・・。仕方ない、残りの全魔力を拘束魔法の解除に・・。』
『貴方は遊びすぎたみたいね!?咲夜!レミィを!』
バシャーン!
聞き終える前に咲夜は飛び込んでいた。
カチ
・・レミリアが気が付くと、陸地にいた。隣では咲夜が倒れてた。
『やっぱり来てくれたわね?咲夜?』
・・・・。
?
『咲夜?』
・・・。
『レミィ!早く!主様を!?』
パチュリーの拘束魔法に限界が来ていた。
レミリアのグングニル破壊に、魔力をほとんど使い果たしたとはいえ、その元々あった膨大な魔力は今のパチュリーさえも上回っていた。
パチュリーの魔力が底を尽きかけていた。
『待って!?咲夜が!』
『レミィ!今は、主様を倒すことがなにより最優先!それに咲夜の為よ!?』
・・・。
『わかったわ』
(魔力が回復している。・・いや、最初より増えてる?傷も癒えてる?何故か解らないけど、これなら!?)
(魔力を右手に、形をイメージ、まだ小さい、もっと、まだ、もっと、もっと!)
・・・最初に生成したグングニルの、倍の大きさのグングニルが出来上がる。
主のソレを遥かに凌駕していた。
『これで!・・・最後よ!』
『貫け!グングニル!』
主を目がけ、力一杯グングニルを投げつけた。
「なにーーー!!?」
グシャーン!!
『ゴフッ・・・そんな馬鹿な・・は・ずは・・』
館の壁に張り付けになる主。
最早、主にこれを破壊する魔力は残っていない。
更に追い討ちの様に昇りきった日光が当たる。
『グガガガガガガガ』
どんどん主が灰になってゆく




