32歳女性の場合 part1
32歳女性の場合
自殺をしてしまう人のほとんどが、頭がいい人である。頭の回転の速い人はどんなに忙しくてもある程度頭の中で余裕がある。考えることができると、今の自分の現状や未来に絶望してしまう可能性が出てくる。それに、頭に体がついて来れなくなり、体を壊してしまう人も多い。頭の中を埋めてくれる人や物事を人は探す必要がある。暇は死への第一歩である。
天界はしっかりと休息を取ることが許されている。どんなに業務が忙しくても申請すれば休みをもらえる。地上でいうところの有給みたいなもの。さらに土日休日はお休みなので、かなりホワイトな企業だと思う。今日は土曜日で自分も休み。基本的に自分は仕事場でゆっくり過ごすのが好きなのだが・・・。
「伯斗さん!!せっかくの休日なのに仕事場に篭っていたらもったいないです!!外行きましょう外!!」
「俺はこうしているのが好きなんだ。1人で行ってこいよ。」
「1人なんて寂しいじゃないですか。」
「友達でも連れて行けばいいだろ。学校の同級生とかいるだろ。今日はどの部署も休みなんだから誘えばくるだろ。」
「私は伯斗さんと行きたいんです!!仕方ないですね。」
しおりは自分の腕を強引に掴んで外まで引っ張った。しおりがここにきてからもう随分経つ。だんだん仕事に慣れてきたのはいいが、少しお節介というか、しおりはわかっていないだろうが最近、距離が近い。性格もわかってきたので、こうなったら諦めるしかない。
「わかった。行くから。着替えだけさせてくれ。」
「そう言って逃げる気ですよね。なら、目の前で着替えてください。」
「はぁ?」
流石にそれは恥ずかしい。
「私は気にしないので。」
「しおりがしなくても俺がする。逃げないから着替えくらい1人でさせてくれ。」
「仕方ないですね。間をとって後ろを向くというところで妥協します。」
どこが間なのかはわからないが、見られないならそれでいい。背中にしおりの気配を感じながら自分は外用の服に着替えた。




