26歳男性の場合 Last part
勉さんが作った世界に自分たちは戻ってきた。
「この景色はいくら見ても慣れませんね。虚無という言葉が本当に似合う空間です。」
「何もかも消えてしまうからな。そういうもんだ。」
自分は勉さんの最後の品のキーフォルダーを手に取った。
「これって息子さんが買ったものですよね?」
「そうだな。彼にとっては奥さんと息子、自分を繋げる大切なものなのかもしれないな。」
「お子さんは大丈夫でしょうか?」
「心配ないよ。人間っていうのは辛い経験をした分、強くなれるものさ。なんかしらの方法で自分を奮い立たせて、辛い現実を受け止めて生きていく。その中で自分の大切なものを見つけてそれを守るために強くなろうとする。そうして少しずつ自分の過去と向き合えるようになる。支えがないと人は弱い。支えがなくなり、道を間違えた人間を裁くのが俺たちの仕事だ。」
「伯斗さんって若くして亡くなってるのに、なんか大人っぽいですね。」
「それはそうだろ。地上ではあまり長く生きてはなかったが、こっちにきてからは、もうだいぶ経っているかならな。この仕事上いろんな経験をした人間が来る。辛いことも楽しいことも見れる。その中で自分の中で思うことを言葉にしているだけだぞ。無駄話もそこまでにして、もう少しで時間だから帰るぞ。」
「はい。」
真っ白な世界に別れを告げて、彼を覚えている人間が2人だけの世界に戻った。




