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間違った好かれる努力


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遥希の間違った好かれる努力。その弊害が、俺には家の中でも影響してきた。


遥希が漫画を持って俺の部屋に来た。そして、神妙な顔をして俺に訊いて来た。


「聡太、この漫画が理解できる?」

「そんなに難しい漫画…………」

表紙を見て驚愕した。


これ、BLじゃねーか!


「わかるかよ!!男の俺にこれが理解できると思うのか?これを見せて来るお前がどうかしてるぞ!?」

「そうなの……?聡太なら頭がいいから理解できるかと思ったのに。」

「そうゆう問題じゃねーよ!できたらヤバいよ!」

「ここ、ここよく見て!」

そう言って無理やり見せて来た中身は…………男と男が抱き合っている所で…………止めろ~!!気持ちが悪い!!


「良く見て何か変わるか?変わるのか!?」


むしろ何か変わって欲しいのか?!


「聡太…………!?」


突然、早織さんが部屋に入って来た。そういえば、さっきからノックの音がしていた。


その時ちょうど、遥希が俺にBL漫画を開いて目の前につき出している所だった。


「……………………。」


それを見た早織さんは、無言でドアを閉めた。

「あ、ちょ、ちょっと待って!」


ドアが閉まると、ドアの向こうからすぐにこんな会話が聞こえて来た。


「どうしたんだい?」

「きっと…………聡太のそうゆう漫画を遥ちゃんが見つけちゃったのよ……。」

「まぁ、聡太君だって男なんだし、そうゆうのくらい……。」


ギャーーー!!


「違うから!見て!ここよく見て!!これ、男と男!!俺のそうゆうのじゃなくて、遥希のそうゆうの!!」

「そうゆうのってどうゆうの?こうゆうの、どこに気持ちを置けばいいかわからないんだよね。」


気持ちを置く?


「どこに感情移入するかって事か?」

「これには、どこにも私は出て来ない。自分がどこにいればいいかわからない。ここにも居場所がない……。」

「だったらそんなもの読まなきゃいいだろ?」

たかが漫画に何真面目になってんだよ!


「ダメだよ!!だって、胸キュン!とか、萌え!とか、わからんと仲間に入れてもらえないじゃん!」

一体どこの仲間に入ろうとしてるんだ?腐女子か!?腐女子になるつもりか!?それならもうなってる!お前は既に腐っている!!


「そりゃ、中には話の中に自分を置きたく無いって人もいるだろ。」

「自分を置きたくない?」

俺は遥希と何の話をしてるんだ?


「例えば、うさぎでも亀でもなくても、別に話は面白いだろ?」

「ほぉ…………BLは童話か…………」

「待て!!待て待て!!その飛躍はおかしい!」

遥希に極端な事を言うのは危険だ!バカに冗談は諸刃の剣。


おかげで、シンバルだけじゃなく、石膏像まで掘り返す事になった。


シンバルを返却した数日後、中庭に生き埋めになっている人がいると騒然となった。


それは、多分、俺の冗談が原因。

「土の中でシンバルに手足が培養されれば良かったな。そうしたら、自力で音楽室に帰ってたかもしれないのにな~」

だから、遥希は石膏像の体を土の中で培養していたとかワケのわからない事を言っていた。


「聡太がそんなにBLに詳しいとは思わなかったよ……」

「何だよその目は!!詳しくねーよ!!」

「じゃあ、読んで勉強すればいいよね!借りたやついっぱいあるから、はい!貸してあげる!!」


そう言って漫画を俺に渡して来た。


「読まないの?」

「読むかよ!ふざけんな!」

「じゃあ、私が音読してあげるね。じゃ、ここ読むね。俺、もう我慢できない…………お前の事…………」


ギャーーー!!


「止めろー!音読だけは止めてくれ!読むから!自分で読みます!読みますから!」


こうして何故か、BL漫画を読む事になった。


辛っ…………。


あまりに苦痛すぎて全然進まない。もういいや。その本を机の上に置き去りにして、寝た。


遥希の部屋で。


それはもう、寝られたもんじゃない!!ごちゃごちゃしてて全然落ち着かない!!何より、遥希の匂いで頭がおかしくなりそうだった。


こうなった原因は、当然俺が変態とかではなく、遥希が俺のベッドを占領したせいだ。


俺の部屋でBLを読んでいると、遥希がこんな事を言い出した。


「私も誰かの中にいられたらいいなぁ。」

遥希はどうやらBL漫画に感動したらしい。

「ミクロワールドみたいに、誰かの中に入れたらいいな。」

「それ意味違うだろ。」


相変わらずバカだ……。


「中に入ってどうすんだよ。」

「心の中を見る。」

いやいや、中に入ったとしても心の中は見られないだろ!?遥希はバカなのか?バカだったな!!


どうやら遥希は、人の心が脳ではなく心臓にあると思っている類いの人間だ。


「そしたら、絶対好かれるよね?これ、名案!!」

「どこが!!」


でも、BLも男と男だと思わなければ、普通に読める。ふと、気がつくと、俺のベッドで遥希が寝ていた。無防備な顔をして…………


おいおい、あり得ないだろ?警戒心の欠片もない……。ムカついたから、マジックペンで瞼に目を書いてやった。


それでも起きなかった。ベッドの中には、BLの漫画が散乱していた。その中の何冊かは救出して、机の上に置いた。


ここまでして、誰かに好かれたいのか?


遥希は多分…………ただ愛されたいだけなんだ。母親に愛されなかった分、誰かに愛されたがっているだけ。それは…………多分、誰でもいい。


当然、俺じゃなくても……。


ここで手を出したら、嫌われるか?こうゆう時の、好かれる努力って一体何なんだ?


おとなしく寝るが正解か……。


それから、自分のベッドに寝る事を諦めて、遥希の部屋で寝た。


次の日の朝、下駄箱で平沢と挨拶した。平沢杏は中学からの友達で、同じクラスの吹奏楽部だった。髪がサラサラで可愛い顔している割に、気が強い。


「遥希が悪かったな。」

俺が謝るのはおかしいかもしれないが、一応謝っておいた。

「え?」

「シンバル。」

「ああ、あれ……。ちょっとあり得ないよね。」


確かに、迷惑だ。

「でも、本人悪気はないんだよ。好かれる努力が間違ってるだけで…………」

「そうゆうのって危なくない?」


は?危ない?それは、シンバルや石膏像につまづいて転ぶとか?いや、そんな話じゃない。

「それは、あいつが精神的に病んでて自殺しそうとか?」

「違うよ、村山君が。」


俺が?…………どう危ないんだ?


「そうゆうの、一度受け入れたら一生つきまとわれるよ。」


あぁ、そうゆう意味か!

「おいおい、怖い事言うなよ!」

「家の中まで一緒なら、ストーカーし放題だな。」

それを聞いていた智輝がボソッと俺にだけ聞こえるように言った。


「何なら既にストーカーだ!!」

「聡太~!漫画返して~!」

「ほらな!」

噂をすればなんとやらだ。


俺は鞄の中からBL漫画を遥希に渡した。

「何の漫画?」


その表紙を見てみんながドン引いた。


「……これ…………BL?」


あ……………………


「聡太…………お前…………」


この後、俺は男子から避けられ、見知らぬ女子に友達扱いされた。


やってしまったぁあああああ!!


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