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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
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第6Q Lunch

 学校に到着するとボクと湊は別のクラスなので、残念ながら、ここでお別れとなってしまう。

「同じクラスになれなくて残念です……」

「ワタシも残念だよ」

「お昼休みは一緒に食べましょうね!」

「わかった」

「絶対ですよ?」

「うん、絶対だ」

 こうして、そうして、ああして、どうして、湊と名残惜しくも別れ、ボクは自分のクラスの教室に入った。入室した。

 ボクは麻倉という名前の都合上、席は一番前となってしまった。

 現在時刻は午前7時50分、遅くもなく早くもないという時間帯。机の横に付いてるフックにカバンを掛け、席に座るわけなのだが、後ろの、背後の、圧力というのか、威圧というのか、存在感がとても強かった。

 身長180cmくらいはあるだろうか、男であるボクよりも遥かにデカいその人に羨ましさを感じた。

 きっとボクも彼女くらいデカくて、女装しても不自然な見た目をしていたとすれば、きっと今、こんなことにはなっていないだろう。

 しかし、だがしかし、彼女のデカさは身長だけではなかった。横にもしっかりとデカかった。縦横どちらにも大きい。

 そんな彼女なので、こんな彼女なので、あんな彼女なので、どんな彼女なので、プレッシャーが凄いのであった。




 それから、これから、あれから、どれから、時間が経ち、昼休みーーー

 授業終了を告げるチャイムが鳴り響くと、廊下では弁当を持った湊が待ち構えていた。どうしてこれほどまでに懐かれてしまったのだろうか?

「お昼休みですよ! 早く一緒に食べましょう!」

「うん。それでどこで食べるの?」

「私、見つけたんですよ。着いてきてください」

「あ、うん」

 湊に連れて来られたのは校内にある中庭であった。心地よい風が通り抜ける居心地の良さを感じる中庭。桜の木が優しい木陰を作り出している、そんな中庭。こんな中庭。あんな中庭。どんな中庭。

 ベンチに横並びで腰掛けると、フワッと湊の匂いがした。桜の木によく似合う香りだったと思う。

「さあ、食べましょう」

「そうだね」

 湊はお弁当を広げた。

「自分で作ったの?」

「はい、料理を習っていたので」

「へえ! 凄いな! めちゃくちゃ美味しそうだよ!」

「よろしければ、一口どうですか?」

「いいのか?」

「はい、あーん」

 彼女は箸で出汁巻玉子を一切れ摘むと、その箸でボクに食べさせてくれる。何という恋人プレイなのだろう。

「あ、あーん」

 照れを隠しながら、照れ隠ししながら、出汁巻玉子をいただく。出汁巻玉子は甘じょっぱくて、とても美味しかった。

「どうですか? 美味しいですか?」

「うん! めちゃくちゃ美味しいよ!」

「嬉しいです!」

 湊はその箸で気にすることなく、出汁巻玉子を食べた。

「あ、それはその!」

「どうかされましたか?」

 間接キスというやつなのでは? という言葉をそっと胸に仕舞い込んだ。彼女にとってボクは女の子、間接キスでも何でもない。逆にボクだけが焦っていても、それはそれで変というものだろう。

「いや、ごめん。何でもないよ……」

「なんだか、お顔が赤いですが、大丈夫ですか?」

「ああ! うん! 全然大丈夫だから!! 問題ないから!! うん! うんうん!!」

 こんなにも可愛い女の子と急接近して、アーンまでしてもらって、間接キスまでして、普通でいられる、平静でいられる、平常でいられる、男がこの世にいるだろうか?

 仮に平然としていられるのが普通なのだとしても、ボクは普通ではいられない。

「そうですか?」

「うん、大丈夫だから、ご飯を食べよう! 早くしないと昼休みが終わっちゃうから」

 と、ボクは昆布のおにぎりに齧り付いた。

 そんなことをしているうちに、こんなことをしているうちに、あんなことをしているうちに、どんなことをしているうちに、あっという間にすぐに沸きそうなほど、あっという間にお昼休みが終わってしまった。

「また麟ちゃんと離れ離れになるのは寂しいです……」

「また放課後会えるから」

「そうですね! 放課後を楽しみに午後の授業も頑張りますね!」

「うん」

 麟ちゃんは特に何もしていない。ただ、ただただ、自己紹介をして、一緒に帰っただけ、一緒に晩御飯を食べただけ、それだけ、これだけ、あれだけ、どれだけ、どうしてこんなにも彼女はボクのことを好いてくれているのだろうか。




 放課後ーーー

「麟ちゃん! 練習に行きましょう!」

「あ、うん。行こうか」

 湊に急かされるようにして、ボクたちは体育館へとやってきたまでは良かったのだがーーー

 体育館は既にバレー部が練習を開始していて、どう見ても使える状態ではない。

 状況が飲み込めずに立ち尽くしていると、神坂先生が後から現れた。姿を現した。

「よう! お前ら何やってんだ?」

「いや、練習をしに体育館に来たらバレー部が使ってて」と、ボクは先生に説明する。

 すると、

「はあ? そんなの当たり前だろ?」

「「え?」」

「創部したての同好会がいきなり体育館なんて使えるわけねえだろ? 体育館なめんな」

「なめてはないですけど………」

「今日の練習はグラウンドの外周ランニングと、筋トレだ。わかったら、とっとと着替えて来い」

 バスケができると思いきや、初日は何と基礎トレーニングなのであった。

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